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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
44/107

第四十四話 イオリと二十層目のボスについて

「んー? とりあえず乾かしてみよう。とりあえず『乾燥(kuomesa)』っと」


 これ自体は、洗濯したものを手早く乾かす魔法だったりするんだけど、今の状態だと……。

 魔法を起動してから僅かな時間で、魔物の体から、どんどんと水分が抜けていって干からびていく。

 当然のことながら半分以上干からびた段階で魔物は死んでいる。


「ああ、やっぱり予想以上の威力があるな。ちょっと、普段は使いづらそうだな」

「うひゃー。水分を抜くとか凶悪だなぁ。さすがのうちもドン引きだぜ」

「えっと、イオリくん? この魔法? って普段は何に使うんですか?」

「えっ? ああ、洗濯物を乾かすのに使ってたんだけど? まあ、使う場合はもっと威力が弱くないと色々不都合が出るな」

「そうですね、便利な魔法でしたけど…… さすがに今の威力で使われると、生地が傷みそうです」


 まあ、流石に今の威力では日常では使えないよな。

 なかなか、制御が難しいな。

 そういえば、『温風』で髪を乾かすのは何気なく使ってたけど、問題なかったな。

 あれも、一歩間違えると大変なことになっていたかもしれないけど、何が違うんだろうか?


「と、とりあえずは、襲ってきたアシッドジェリーは倒したので、後は『威力(isimba)制限(muganhu)』と『吸引(kubvisa)』っと」


 アシッドジェリーをカラカラに乾かして倒したはいいけど、俺たちの周囲を半球状に囲っている結界の上の部分もそのまま干からびてしまったので、このまま結界を解除するとアシッドジェリーの残骸が俺たちに目掛け落ちてくる未来が容易に想像できた。

 そんなわけで、それらを魔法でお掃除しようというわけだ。

 本当に魔法は便利だな。


「ん? 何やってるんだ?」

「ああ、結界の上の部分にも干からびた残骸があるから、ちょっと掃除をな。今のままで結界を解除すると、解除した途端に頭の上に落ちてくるんだけど、よかった?」

「えっ? ああ、うちもそれはたしかに嫌だなぁ」


 とりあえず、干からびた状態の元アシッドジェリーだったものは、『吸引』で引き寄せある程度ひと塊にする。

 ただ、一塊にしたと言っても、水分が抜けてカラカラの状態で強引に一箇所に集めたので、ほぼ全てが粉々になって原型をとどめていない。

 そういえば、アシッドジェリーの魔石ってどこにあるんだろう?


「イオリ様、もしかしてこれが魔石でしょうか?」

「ん? うーん、どれどれ? 『鑑定』」


----------------------------------------------------------------------

名称:アシッドジェリーの魔石(1/9)

固有名:なし

種別:魔物の核

状態:良好

全長:0.1フィト

体重:0.2イト

脅威:なし

概要:アシッドジェリーの核

詳細:

アシッドジェリーの核。

一般的には魔石と呼ばれており、これが存在していることが魔物が魔物たる所以(ゆえん)

アシッドジェリーも含めジェリー種は、核が複数に分かれており、この個体は九個と一般的なアシッドジェリーに比べ異常に多いが亜種と呼べるほどの変化は起きていない。

この個体の変化は人為的に起こされたものである。

----------------------------------------------------------------------


「ああ、どうやらそれが魔石みたいだ。『鑑定』によると、合計で九個あるみたいだ。っと、これもそうかな?」

「こっちにもあったぞ、ほら!」

「こちらにも、ありますよ」


 結局、粉々になったアシッドジェリーの残骸から『鑑定』で調べた通り、合計で九個の魔石が見つかった。

 見つかった魔石の全てに当てはまることだけど、大きさはほぼ同じで手の平に九個全てが乗るぐらいの大きさ、そして透き通った紫色をしている。

 ソータ曰く、どうやら、ジェリー系の魔物は、複数個の小さな魔石を持っているのが普通らしい。

 もっとも、多くても四個から五個ぐらいが普通らしいので、このアシッドジェリーは特殊な個体のようだ。


「とりあえず、このまま先へ進むか、キリも良いし一旦探索を中断して組合に報告へ行くか、どうしよう? 俺は、一旦中断をお勧めするな」

「組合に報告することなんてあったっけ?」

「イオリさん、こんな浅い階層で、深い階層に居るはずの魔物が出てくるのは異常ですよ? まあ、報告は義務ではないですが、細かい積み重ねがポイントにも響いて来るみたいなので、僕としては報告しておいたほうが良いと思います。ということで、中断に一票です」

「ポイント? そういえば、少しだけ説明を受けた覚えがありますね。まあ、それはともかく、私も一旦中断するに賛成します」

「うちはどうしようかな」

「どうしようも何も、多数決だったら中断する、に決定しているところだな」

「えぇ〜。まあ、ここで中断するのは、うち、ちょっと残念なんだけどな…… まあ、ダンジョンは逃げないし。うん、いいぜ、一旦中断しよう」

「よし、じゃあ。全員一致で一旦中断しよう」


 そういえば、意見が分かれたときにどうするか、は決めていなかったな。

 多数決か、リーダーに一任するのか、あとは、じゃんけんかな?

 まあ、あとでこれも話し合ったほうがいいな。

 それと、ソータの方はもっと先まで確認しているようだけど、魔物についてももっと調べておかないとダメだな。

 予め浅い部分については調べたけど、その先については潜れるようになってからと思って、軽くしか調べていないから、先に進む速度が予想を超えている今の状態はちょっと不味いかもしれないな。


「おーい! 後はアンタだけだぞ!」

「ん? ああ、悪い悪い」


 ちょっと、考え事をしていて出遅れたようだ。

 考え込むと、周りが見えなくなるのは俺の悪い癖だな。

 実際慌てて駆け寄る必要はなかったんだけど、まあ、待たせるのも悪いかと思い、歩く速さを少し上げ奥の部屋に入る。

 相変わらず、奥の部屋は薄暗いな。

 転送用の魔法陣が常に起動しているので腰より下あたりまでは、むしろ明るい状態だけど、それより上ともなると若干薄暗くなってしまうのでちょっと困るな。

 まあ、ダンジョンを脱出するか、次の階層へと行くだけなので、実際はそこまで気にする必要もないかな。


「よし、全員準備できたな。では『(convert)(imini)』」


 そういうわけで、ダンジョンから地上へと戻ってきた。

 ちなみに、戻る前に全員がローブを羽織っていて、アイツ自身はさらにフードを目深く被っている。

 アイツはチンチクリンだし絡まれないように、だろうか?


「よし、組合へ行こう!」

「イオリさん、待ってください! ダンジョンからの帰還報告、忘れてますよ!」


 そうそう、ダンジョンから戻ってきたら、建物の出口で忘れずに組合のカードを(かざ)さないといけないんだよな。

 一応は出口に目を向けると『探索者へのお願い。組合カードを忘れずに(かざ)してください』と、案内も掲示してはあるけど、ついつい忘れそうになりそうなので、もうちょっとなんとかしてほしい気がする。

 そういえば、入り口の方は人が待機していたけど、出口のこちらは特に、組合の人が居たりはしないのは何故なんだろうな。


「あー。これはうっかりだぜ。しかし、これはうち、絶対やり忘れる自信があるぞ」

「たしかに案内はありますけど、つい、忘れそうになりますね」

「だよなー」

「まあ、とりあえず、組合カードの処理も出来たし、組合へ行くぞ」


 そう行って、俺達は今日何度目かの組合へと、歩いていく。

 残念ながらというか、当たり前というか、組合までの道のりで、出会い頭にぶつかってくるような子供が現れるといったことはなかった。

 そんな事を途中で考えていると、あいつが睨んできたけど気が付かないふりをしてやり過ごしたのはここだけの話。

 そうこうしているうちに、組合へ無事に到着だ。

 ダンジョンから出てすぐの建物には時計がなかったので組合へついてから確認した所、ダンジョンへ入ってからだいたい五時間ぐらいの時間が経っていた。

 さて、どの受付に並ぼうかと考え、先ほどロニさんが対応していた列を見ると、並んでいる人数が少ないようなので、丁度良いと思い、その列に並ぶことにした。

 顔見知りだと、いろいろスムーズに進みそうだしね。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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次の投稿も一週間以内の予定です。

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