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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第四十三話 イオリと二十層目

「えっと、ボスがいない場合にはどうするかって決めてなかったよな。どうしようか?」

「そうですね、僕は階層内の探索とボスとの戦闘行為を別々に分けるのが良いと思います」


 なるほど、今日潜っている感じだと、結構な割合でボスがいないことが多いから、たしかに対応としては、ありだな。

 ただ、問題は、フィーネや、あいつが納得するかだけど、まあ、順番ってことなので大丈夫かな?


「うーん? うん。うちはそれでいいぞ?」

「私も、そのやり方に賛成します」

「よし、じゃあ、それで行こう」

「イオリ様は、それで良いのですか?」

「ああ、特に反対する理由はないしな」


 さてと、この調子でどんどん行こうか。

 奥の部屋で次の階層へと潜った俺達は、この後も順調にダンジョンを進んでいく。


「えっと、今って十九層目だったっけ?」

「違いますよ。二十層目ですよ、イオリさん」

「あれ? そうだっけ?」


 どうやら、あいつは、どんどんと階層内の魔物を蹴散らしながら、進んでいたために今居る階層が分からなくなってしまったようで、ソータに突っ込まれている。

 ここまで潜った結果、出て来る魔物の分布は、組合の資料室で調べた内容と同じだった。

 一応は、調べた以外の魔物が出てきても問題ないようには、心積もりをしていたけど、ちょっと拍子抜けだ。

 まあ、想定外の事柄に対応できるように準備をするのは良いけど、実際には、そうそう起こることでもないし、起こってもらっても困る。

 階層内については、そんな感じで特に問題となるようなことは無かった。

 そして、肝心の階層ボスについてはと言うと、十二層、十三層と、十八層のみに、ボスが居たが、まあそれもmあっという間にフィーネやアイツに蹴散らされた。

 俺とソータは、そんな二人をまあ、暖かく見守っていたさ。

 それはともかく、何故か半分以上の階層でボスが何らかの原因で居なかったようだけど、一層から十層までと比べて居ないことが多い気がするけど、どうなんだろう?

 普通は、階層が深くなるほど、潜る人も少なくなって、ボスも倒されることなく、残っていると思ってたけど違うのだろうか?

 まあ、とりあえずはこの階層にはボスがいるようなので、少しでもストレスが解消されると良いな。


「えっと、次は二人の番だっけ?」

「うーん、次はうちらだけど、ソータに任せる」

「ん? どうした? 熱でもあるのか?」


 いつもは自分たちの番が来たら、止める間もなく飛び出していき、さっさと倒してしまうアイツが殊勝なことを言うもんだから、熱でも出たかとおデコに手を当てようとしたところで、パシッと手を弾かれてしまった。


「子供扱いすんな! 熱なんてないし! えっと、いっつもうちが先に倒してしまうから、たまには、ソータに譲ってもいいかなって思ったけだから」

「イオリさん!」


 こと、戦いに関しては、猪突猛進気味なアイツが珍しい事を言ったものだから、ソータも感動して、頭を撫でている。

 どうやら、ソータに頭を撫でられるのは、子供扱いされたことを忘れるぐらい嬉しいらしく、にへらっとだらしない顔でしばらくそのまま撫でられていた。

 ちなみに、俺とフィーネの二人はそれをによによしながら見ていたが、しばらくすると、はっと気が付き、そして、俺達に気がつくと、顔を赤くし、誤魔化すように横を向いた。

 ソータは、キョトンとしていたが、俺が、ご馳走様というと、アイツと同じように顔を赤くし、誤魔化すように頬を掻いていた。


「さてと。で、結局は、ソータが先頭に立つってことでいいんだな?」

「はい。たぶん一人でも、問題ないと思います」

「じゃあ、行くぞ」

「おう」

「はい」


 まあ、この階層のボスなら、俺達は欠伸をしながらでも倒すことが出来るはずなので、心配はしていない。


「では、行ってきますね」

「おう、俺達は暖かく見守っているさ」


 俺の返事に苦笑いを一瞬浮かべるが、次の瞬間には真面目な顔になりつつ、ボスの部屋へと入っていく。

 俺達も、手は出さないけど、ここにいると締め出されてしまうので、少し遅れて部屋に入る。


「あれ? ボスが居ないですね?」

「いや、ちょっと見づらいけど居るみたいだ。床いっぱいに広がってこちらへズリズリと向かってきてる」

「えっ? ああ、たしかに。って、スライムってあんなに平べったくなりましたっけ? えっと『ディテクト』っと。!!! イオリくん!」

「ん? ……たしかにスライムとは違うみたいだな」


 どうやら、ここに来て想定外の魔物がお出ましになったみたいだ。

 まあ、それでも、俺達の敵ではないのだけど、適正な余裕を持って潜っている普通の探索者にとってはちょっと、いやかなり脅威だと思う。


----------------------------------------------------------------------

名称:アシッドジェリー

固有名:なし

種別:魔物

状態:良好

関係性:敵対

全長:不定形

体重:53イト

脅威:パーティー討伐B級、ソロ討伐A級

概要:主にダンジョン内部では中層に分布する、ジェリー種の魔物で酸により獲物を弱らせ捕食する。

詳細:

ジェリー種の中位種で無属性に対して耐性がある。

捕食を行う場合は、地面に薄く広がることで、獲物に自身を気が付かれないようにし、取り込み酸で弱らせ捕食を行う。

使用する魔法は、『酸矢』のみで、文字通り酸を矢のように飛ばす。

加護:『ロブアグリードダンジョンの庇護』

スキル:『酸耐性』

魔法:『酸矢』

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「アシッドジェリー、か。これは……」

「なあ、ソータもお前も、何を驚いてるんだ? あれって、ただのスライムじゃないのか?」

「えっと、先程、ソータさんも仰っていましたが、あんなにドロドロになって広がり、こちらを襲ってくるのはスライムじゃないですよ」


 ボスの部屋に居たのは、スライムではなく、アシッドジェリーと言う魔物だった。

 この魔物は『鑑定』でも書かれているけど、地面に薄く広がって獲物に近づいた後、獲物のすきを見て取り込み、捕食する。

 この時、取り込まれた獲物は、まず毒で弱らせてから吸収するため、たとえすぐに助け出されたとしても毒に侵された状態なので、それに対処できる方法が無いと、結局は助けられないのだ。


「ふーん。で、なにが問題なんだ?」

「はー。ちゃんと、一緒に資料室で調べたはずなんですけどね。えっとですね、スライムと違ってジェリー系の魔物が出てくる階層はここ、二十層ではなくて、もっと深い階層、少なくとも中層の中程からなんですよ。そして、そんな魔物が、この階層付近に出てくると、この辺りが適正レベルの探索者では太刀打ちが出来なくて、あっという間に魔物の餌ですよ」

「へー。それは大変だな。まあ、うちには関係ないけど」

「……相変わらず、危機感がないですねぇ。まあ、しょうがないといえばしょうがないですが」


 と、俺達が何故こんなにも落ち着いているかと言うと、そもそも、ジェリー系の魔物ぐらいでは何とも無いと考えているのと、まあ、俺が結界を張っているからなのだけど。


「で、これどうしよう?」

「ああ、ちょっと話し込みすぎちゃいましたね。『結界』でしたっけ。それを完全に取り込んでますね……」

「うーん、ちょっとベッチョリで気持ち悪いな。なあなあ、これ、まだ持つんだよな。効果が切れてベチョベチョとか、うち嫌だぞ?」

「えっと、イオリ様の結界は頑丈なので多分大丈夫だと思いますよ? しかし、頑丈なのはいいのですが、私達ではちょっと手が出し辛いといいますか……」


 想定外の魔物がズルズルと近づいている事に気がついた時点で、『結界』を張って安全をとりあえず確保したが、しばらく話していたら、いつの間にか『結界』をまるごと取り込まれていたわけだ。

 一応の安全は確保されているとは言え、これはちょっと、アイツの言葉じぁないけど気持ち悪いな。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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次の投稿も一週間以内の予定です。

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