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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第四十二話 イオリと十一層目

「……ふぅ。まったく、何だよもう!」

「いやいや、何だよじゃなくて。どう考えてもお前の格好が原因だ!」

「えっ?」

「えっ? じゃない! その返り血や肉片が付いた状態で飛び込んでこようとするなよって、さっきから何度も言ってたはずだけど?」

「おお! たしかに!」


 手を、ぽんと叩いて、納得いったというジェスチャーをしている。

 まったく、しょうがないやつだ。

 ソータは、俺達が話している間に、あいつの近くまで寄って行き、手慣れた感じで、これまたお馴染みなっている『クリーン』の魔法を使い、返り血や魔物の肉などを綺麗にしていた。


「さて。なあ、ちょっと俺とお話し(お説教)をしようか? なあ、ソータ。別に問題ないよな?」

「うーん、しょうがないですね。お手柔らかにお願いしますね?」

「な、なあ。なんで、お話するだけなのにそんなに、は、迫力があるんだ? あ、あと、その右手の動きは何なんだ?」


 とりあえず、ソータの許可もとったし、街の悪ガキやゴロツキ共も感動の涙を上げて更生を誓ったという俺の有り難いお話し(お説教)を久しぶりにするとしようか。


「ん? これか、これはだな…… こうするんだ!」

「ひっ! ひゃ! いたたたたー! ちょっ、な、何で、ほとんどダメージを受けないはずなのに、こんなに痛いんだ!?」

「ああ、『防御貫通』とか『痛覚増大』とか色々使っているからな」

「そ、そんひゃー」


 ……と、次から血肉まみれで飛び込んでこないように、ちょっとお話し(お説教)をした。

 あいつも涙を流して喜んでいたので、次からは大丈夫だろう。

 なぜか、ソータがドン引いていたし、フィーネも苦笑していたけど何故だろうな?


「ふぅー。まったく、ひどい目にあった。ソータも助けてくれないなんて酷いな?」

「えっと、あははは」

「何か言ったか?」

「ウチ、ナニモイッテナイゼ」

「そうか」


 さて、ちょっとボスの部屋で時間を食ってしまったけど、まだまだ時間はありそうだから次の階層に行くとしようか。


「とりあえず、予想以上に早く十層に着けたので、次の目標として二十層へまで潜ろうかと思います!」

「わー、パチパチパチパチ」

「パチパチパチパチ」

「……パチパチパチパチ」


 一人、ノリが悪いのが居るようだけど、まあ置いておこう。


「ゴホン。ちなみに、出てくる魔物の分布とかは調べてあるか?」

「もちろん調べてあるぜ。えっと、う~んと…… なんだったっけ、ソータ?」

「もうしょうがないですね、イオリさんは。えっと、これまで出てきた魔物に加えて、それらの上位種、あとは、スライム種でしたっけ?」

「だそうだ、忘れんなよ?」

「うぅ〜。うちだって、もう少しで思い出せたと思うんだ」

「はいはい。わかったわかった」


 うちの扱いが雑だ、もっと丁寧に扱え、とか言っているけど無視だ無視。

 対応はソータに任せて、先に進もう。


「ほら、さっさと次の階層へ行くぞ」

「あっ! 待ってください、イオリ様」

「むぅ。うちも女の子なんだから、もう少し優しく扱って……」

「僕が優しくしますから、拗ねてないで次の階層へ行きましょう」


 奥の部屋へと集まり、全員が石碑へ手を置いたのを確認し、次の階層へと繋がる呪文を唱える。

 石碑に手を置くのと、階層内の何処かに飛ぶ、の組み合わせは、一度に全員が飛ばないと離れ離れになってしまう危険がありそうだけど、潜るときの説明には特になかったな。

 と、そんなようなことに気が付いたけど、そういえば『離脱くん』があるから、駄目だと思ったら、ケチらずに使ってダンジョンから出れば良いのか。

 ……まあ、俺達については迷う危険はあっても、魔物に関しては無視できるので、別の場所に飛ばされてもいいし、俺とあいつに関しては『思考共有』があるからもっと問題ないな。


「それじゃあ、ここから、そうだな二十層まで、しばらくは階層ごとに前後を入れ替えるってことでいいか? たしか、『アイテムボックス』ってので物を入れられるんだろう?」

「えっ! ああ、イオリさんから聞いたのですか。そうですね、どちらかと言うと僕が主に、ということになりますが『アイテムボックス』に魔物の死体はどんどん入れられるので問題ないですよ」

「じゃあ、お願いするな。ということで、この階層は、まずは俺達が前でいいか?」

「んー。まあいいか。ボスもか?」

「ああ、どうしようかな。フィーネはどうしたい?」

「えっ? えーっと、出来ればボスも、しばらくは交代で倒したいのですが」

「うちも、同じかな」

「じゃあ、そういうことで、ソータも良かったか?」

「はい、問題ありませんよ」


 そんな感じで、進み始めた十一層、その作り自体は十層までと変わらず、床から天井まで隙間なく壁が存在していて、少し閉塞感が漂う迷路構造だった。

 出てくる魔物自体は、ゴブリンやコボルトなどの下位種に変わって、スライムの下位種や、ゴブリン、コボルトなどの中位種が襲ってくるので難易度は上がっていることは間違いない。

 まあ、ただ、実際のところ探索の難易度が上がっているのは確かといえばその通りなのだけど、俺達にとっては、全くと行ってよいほど歯ごたえがなく、ただひたすらに、ダンジョン内の地図を作る作業の邪魔となる魔物を次々と葬り去る作業が続くだけなので、フィーネなどは目に見えてストレスを抱えている様子だ。


「うーん、この感じだと中層でも、まだあの二人にとっては物足りないかもしれないな」

「そうですね。イオリさんで慣れていたつもりですが、フィーネさんも、負けず劣らずと行ったところでしょうか」

「まあ、そうだよな」

「ん? うちのこと呼んだ?」

「いえいえ、何でもないですよ。イオリさんは気にしないでください」

「そうそう、何でもないぞ」


 あまりにも暇なので、前はフィーネ一人に任せてしまい、俺はと言うと、少し後ろに下がってソータと雑談をするようになってしまっていた。

 もっとも、ソータ自身は話しながらも、フィーネが倒した魔物を、次々と『アイテムボックス』とやらに仕舞っている。

 俺と話しながらも、問題なく『アイテムボックス』が使えているのは流石と言っていいと思う。

 おっと、曲がり角でフィーネが待っているのが見えたけど、ちょっと話に夢中になって進みが遅くなっていたのかもしれない。


「イオリ様、どちらに曲がりましょうか?」

「えっと、そうだな。右に行こう」

「分かりました。では」


 先を行くフィーネは、直線部分は、結果的にはある程度先行することが多いが、T字路やY字路、十字路などが現れたら、そこでちゃんと待機しているぐらいには、まだ理性が残っているようだ。

 これが、ストレスが振り切れると、どんどんと先に進んでしまうので、追いつくのが大変になる。

 まあ、たとえ一人で先行していても、この階層では、あるかわからないけど魔物小屋(モンスターハウス)などでも問題なく切り抜けられるだろうから、心配はしていない。

 それからしばらく進んだところで、どうやら次の曲がり角の先がボスの部屋のようだ。


「フィーネ、一旦止まるんだ」

「えっ? あ、はい」

「その先の角を曲がると、ボスの部屋だから一旦、パーティーの隊列を整えよう」

「……たしかに、ちょっと、先に行き過ぎていましたね」


 ちょっとだろうか?

 結構先に行っていた気もするけど、まあ、見なかったことにしよう。


「えっと、ああ。どうやらこの階層のボスは、不在のようだ」

「そ、そんな…… 楽しみにしていたのに……」


 フィーネは、まるでこの世の終わりだと、言いそうなぐらい落ち込んでいるけど、まあ、こういうこともあるよね。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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次の投稿も一週間以内の予定です。

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