第四話 イオリと爆弾
カウンターに並んでいた人達や室内の待機スペースに居た人たちがコントみたいなことを始めたために、室内の張り詰めた雰囲気はなくなったみたいだ。
たぶん、ここはこんな感じに騒がしいのがいつも通りなのだろう。
その雰囲気を横目に見ながら、どさくさに紛れてカウンター前まで進む。
なお、フィーネは存在感を希薄にして俺のすぐ後ろを付いてくるようで他の人には気がつかれていないようだ。
「あの、すいません。それ……見せてもらってもいいですか?」
「は、はひ! えっと、どうぞ」
受付のお姉さんはどうやらケーネさんと言うみたいだけど、そのケーネさんに確認し物体Xを手に取る。
とりあえずはこれが何なのか『鑑定』で確認でもしてみるか。
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名称:魔力核分裂方式爆弾試作
通称:(不明)
状態:起動シーケンス実行中(時間停止結界により凍結)
耐久度:100/100
希少性:レア
魔力消費:起動時消費35、継続消費なし
概要:中心より約3kmに渡り甚大な被害を与える。
詳細:
本体に対し一定以上の圧力をかけた状態で魔力を流し込むことで待機状態から起動中に状態が変化し起動シーケンスの実行が行われる。
起動シーケンス開始から10秒で起動完了し、60秒間で動作が完了し自壊する。
起動シーケンス完了後約10秒で効果範囲が最大となり、その範囲は中心より約3kmの真球形となる。
その被害は、周囲の魔力核を連鎖的に分解することで引き起こされ、その結果として熱や光により周囲に甚大な被害を及ぼす。
また、熱や光が収まった後も、周辺の魔力が分解消費された状態となるため、約1ヶ月程度は魔法や魔道具の発動が非常に困難となる。
各シーケンスは、待機状態、起動中、動作中、動作完了、の4状態をとり、それぞれの状態は一方向への遷移のみ可能で、また、起動シーケンス完了後に動作を停止させる方法は確認されていない。
結社『暁の解放者』により設計試作された、魔力核の分裂による比較的新しい原理による爆弾。
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これは……ちょっと危険すぎる気がするな。
今の結界を解除したり、万が一にも結界が壊れると大変なことになるってこと、かな?
ま、まぁ、たぶん結界が壊れるなんてことは起きないと思うから大丈夫だと思うけど……大丈夫だよな?
「うーん、こんな危険な爆弾がなんでこんな所に……」
カウンターに物体Xを戻しつつ、うっかりこの物体Xがなんなのかをつぶやいてしまうが、独り言のつもりで喋った内容は、なんともタイミングが悪い事にケーネさんに聞こえてしまったようだ。
「はわわわわー、爆弾ですか? ど、どうしましょう?」
俺がしゃべった内容がケーネさんに伝わるまでは、良くはないが許容範囲だけど、受付をやっているだけあるのか以外と声が通り、そのまま拡声器のように今俺が手に持っているものが何であるかが周囲に伝わってしまったみたいだ。
……これは、しくじったな。
ケーネさんはオロオロ、他の人も事態が飲み込めてい無いようで周囲をキョロキョロしている。
しばらくすると、受付奥の階段からドタドタと騒ぎを聞きつけたのか厳つい顔のおっさんが出て来る。
「なんだー? この組合内で騒ぎとはいい度胸してるなぁー? 俺の目が黒いうちは成敗してやらー」
受付内の奥から出てきたということは、おそらくはここのお偉いさんだと思うけど、何故か周囲を威嚇している。
てか、目は黒ではなく、どちらかというと茶色だぞ?
って、結局このおっさんは誰なんだだろうか?
「お前と……お前か? うちで騒ぎを起こしたのは? あぁーん?」
「ち、違いますよー、支部長! 騒ぎを起こしたのはカウンターの前に倒れている人です。この人は騒ぎを止めてくれた人です……たぶん」
おっさんはどうやらここの支部長らしいが、支部ってことは他にも同じようなところがあるってことだよな。
これも調べてみるか……。
ともかく、おっさん改め支部長はボコボコにされてカウンター前に倒れている男を見たあと、こちらをギロリと睨んできた。
俺は関係ない……事はないけど、まったく、なんでこっち睨むんだよ。
ケーネさんが庇ってくれたので更に絡まれることはなかったけど、まずは話を聞いてほしいと思うが……。
たしかに傍から見ると俺が悪者に見えなくもないか……。
どこかで聞いた話によると、こういう組合だかギルドだかに登録しようとすると、いかにも荒事やってますって雰囲気の男に絡まれて逆にボコボコにしたところでお偉いさんが登場でって流れになる事があるらしいけど、お偉いさんと知り合えたのは確かだけど、それとは違い別のトラブルに巻き込まれてしまったようだな。
「おう、そうか、そうか。それは悪かったな。んで、これは何なんだ?」
「あー、えっと。爆弾なんじゃないかなーと思います」
どうやら、カウンターの上にあった物体Xが気になったようで無造作に掴み周囲に確認をしてくる支部長。
まあ、万が一にも爆発しないから掴もうが何しようが乱雑に扱っても大丈夫って言えば大丈夫なので、掴んでるそれ爆弾なんだけどなーとか、この辺り一面が焼け野原になるヤバイもんなんだけどなーとか、思ったけどとりあえず口には出さない事にする。
「ぬ? ば、爆弾……だと?」
「「ひっ! ぎゃー」」
掴んだあと俺の答えに呆気にとられたのか、支部長はポロッと物体Xを取りこぼしてしまう。
支部長の手の平から爆弾がこぼれ落ちた事に気が付くと、ケーネさん含め周囲の人がズサっといった音が鳴りそうな感じで、おっさんから離れようとする。
まあ、結界で固定してあるから落としたぐらいではどうにもならないと思うけど、逆に万が一にでも爆発したら周辺は一瞬で焼け野原になるから逃げ場なんてないんじゃないかな。
ともかく、こぼれ落ちた爆弾はカウンターに当たりコーンと澄んだ音を周囲に響かせ一旦跳ねると、カウンター前の床にそのままポトリと落ちる。
床に当たった後はコロコロと転がり、ボロボロの状態で床に倒れている男の前で丁度良く止まる。
目の前に落ちた物が何かを男が認識した瞬間にヒッという声を上げたあと白目をむいて気絶した。
「あー、うん。皆さんとりあえず、固定してあるので爆発したりはしないはず……ですよ」
「固定してある、だ? そーいやー、おめー何もんだ? 見ねー顔だな」
なんかまた、こちらをギロッと見て睨まれけど、一々睨むなよ。
ギロッと睨むごとに魔力が動いている事が分かるので、おそらく無意識なのか意識的なのかはわからないが、スキルか何かが起動しているようだ。
少なくとも、平均的な、これはフィーネの居た世界のという意味だけど、その平均的な一般人やそれに毛が生えたぐらいの兵士や冒険者の場合には軽く失神するぐらいの影響がありそうなものを俺たちに当ててくるのは如何なものか。
「あっ、はい。俺は、俺たちはこの街で金を稼ぐため、ここに登録しようと思っているイオリといいます。こっちは俺のパーティーメンバーの」
「フィーネと申します」
「おう、なんだ、そうか。それは済まなかったな。うん。とりあえず、そこの男はふん縛って牢屋に突っ込んでおけ」
テキパキと床に倒れている男を牢屋に入れておくように指示する、おっさん。
「で、だ。これは大丈夫なのか?」
「はい、さっきも言いましたが、安全のためにその状態で固定したので、よほどのことがなければその状態のままだと思います」
おっさんは床に転がっている物体Xを躊躇せずに鷲掴み聞いてくる。
象が百匹、いや千匹乗っても大丈夫、な感じとなっているはずだし、魔法かスキルかを使い相当な力を込めるとかしないと壊れないだろうな、それ。
「そうか。まあ、とりあえず事情を聞きたいのと、組合へ登録はまだって事だよな? だったら登録もついでにすませるから、すまねーが、俺に付いて来て応接室の方で話を聞かせてもらってもいいか? なに、時間は取らせねーぜ。とりあえず、お前たちからだな。他のも後で呼ぶから、しばらく待っておいてくれや」
「「わかりました」」
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2016/07/17 希少性の種類を修正しました(レジェンド<レガシー<レア<クラフト<コモン<マスィヴリ<ジャンク、の順に価値が下がります)




