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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第三十五話 イオリとストーカー疑惑

 とりあえず、フィーネといろいろ話した結果、信頼してもらうためにも、こちらの事情をある程度伝える必要があるのではないかという結論になった。

 まぁ、俺自身は何故か知らないけど、そこそこ信頼できると思っていたりする。


「あー、すまん、待たせてはないけど、待たせた」

「話の腰を折ってしまい、申し訳ありません」

「いえ、そこまで待った、というほどではありません」

「そうだよー。バーガーもまだ残ってるし、時間がかかるようでも、うちらはそれを食べながら待っていればいいだけだしな」


 とりあえず、結果的にはそんなに時間はかからなかったのもあって、特に気にしてはいないようだ。

 あいつの言葉で思い出したけど、たしかに、バーガーも飲み物も口を付けてなかったな。


「でだ。さっきの異世界転移の話なんだが、実は……俺たちも別の世界、異世界から、つい昨日転移してきた所なんだ」

「「はっ!?」」


 どうやら、今度はあいつとソータが固まる番のようなので、その隙に、バーガーや飲み物をもぐもぐと口へと運ぶ。

 昨日食べた組合のバーガーと比べると、どちらかと言うとこの今食べているバーガーのほうが美味しい気がする。

 と、どうやらしばらく固まっていたようだけど、復帰したようだ。


「……えーっと、その異世界転移というのはどこかの世界からこの世界にということですか?」

「そうだ」

「てことは、うちらと同じってこと?」


 あちらさんにとっても、異世界転移した人同士がばったり出会う、というのは予想外だったようで、半信半疑で聞いてくる。

 俺だって驚いてるわ!


「まあ、異世界への転移という意味では同じだと思う。こんなところで同類と合うとはは思わなかったけど」

「たしかに、うちも驚いたぞ?」


 異世界移転の是非は、とりあえず置いておくとして、問題は『日本』だな。

 俺の知っている『日本』なんだろうか、それとも、物語であるような似て非なる世界なのだろうか?


「で、結局のところ、その『日本』と言うのはなんなんだ?」

「えっとな、『日本』って言うのは、うちが居た元の世界にあった国の名前なんだ」

「ちょっと僕達は事情が複雑でして。簡単に言うとイオリさんは生まれた世界から僕の住んでいた世界へ召喚魔法で召喚されたんです。そして、さらに故あって、この世界に転移してきたんですよ」


 おや、なんか俺達と同じような経緯を辿っているような気がする。

 フィーネも状況が似通っていることに疑問を覚え、首を傾げながら不思議そうに俺の方を見ている。


「異世界、召喚……ですか……」

「うーん、『日本』ね……」

「はい。それをすぐに証明できる方法があればいいですが、今のところ何もないので、とりあえずは、僕達の空想上の話と思っておいていただいても構いません」


 話の真偽はともかく『日本』という発音は、何かで翻訳された感じではなく俺の知っている日本語の発音がそのまま聞こえているような感じだ。

 むしろ、そのままの発音と言っても問題ないと思う。

 ここは、もうすこし踏み込んでみようか。


「あ、いや、信じていないとかではないんだけど……。そうだな、その『日本』ってのには『東京』はあるのか?」

「うん、あるよ? でもなんで分かるんだ?」

「そうか……あるのか。うーん、じゃあどこに住んでたんだ?」

「えっ? 住んでた所? えっと、たしか『サハクモハ藤沢』ってマンションだけど?」

「ん? 『サハクモハ藤沢』だって? 三階じゃないよな?」


 少し前の話で記憶が薄れかかっているけど、俺は叔父に引き取られ三〇七号に住んでいたはずだ、たしか。

 ただの一度もマンションでこいつのこと見かけたことないんだけどなぁ。


「ん? 三階の三〇七号だよ?」

「えっ?」

「えっ? だから、三階の三〇七号だってば、聞こえなかった?」


 ……まてまて、落ち着け俺、これはどういう事だ?

 フィーネも、それとソータもだ、首を傾げて可哀想な人を見るような目で俺たちを見ているんじゃない。

 と、とりあえずは状況を整理しよう。


「えっと『サハクモハ藤沢』って『神奈川県藤沢市』にあるんだよな」

「そうそう『神奈川県藤沢市小庭4−5』だったと思うよ。もしかして、同じマンションだったのか?」

「待てよ、待てよ、えっと。そ、そうだ! 異世界へ召喚されたのはいつなんだ?」

「いきなり変なことを聞くんだな。えっと、うちが召喚されたのは二〇一二年の夏、たしか八月の中頃だったと思うけど」

「中頃か……。もしかして、一二日じゃなかったか?」

「そうそう、たしかそんぐらいだったはず……ってなんで分かるんだ?」


 なんか、不審者を見るような目をしてあいつが見てくるが、まあ立場が逆だとしたら同じように思うだろうから、これはしょうがないか。

 とりあえず、あいつの相手は後にさせてもらってだな……。

 これは、いったいどう言うことだろうか?

 俺が召喚されたのも二〇一二年の八月、たしか終戦の日が数日後に迫ってたから一二日ぐらいだったはずだ。

 しかし召喚された日はともかく、その時点で住んでいるところが同じって色々おかしいな。

 そんなことを考えていると、状況についていけないのかフィーネとソータが割り込んでくる。


「あのー。お話についていけないのですが……」

「そうですよ。イオリさんも突然話の中によくわからない単語が出てきたり……」

「ああ、フィーネも、えっとソータだったか、すまん。もう少しだけ、こいつと確認したいことがあるから、待ってて欲しい」

「そうそう」

「そう……ですか。分かりました、イオリ様」

「はぁー。またですか? ……しょうがないですね」


 すこし拗ねてるのか、フィーネ?

 まあ、フィーネには申し訳ないが、後回しにさせてもらおう。


「とりあえず、日付がわかったのは置いておいてだな」


 えっと、どこまで確認したかな……そうそう。


「えっと、同じマンションというか、同じ部屋だな。少なくとも二〇一二年八月一二日までは、俺はその部屋に住んでいたはずだ」

「え? またまた〜。そんな事ある訳ないじゃない」

「じゃあ、確認してみるか。そうだな、お隣さんは……」


 思いつく限りの身近な人を挙げていく。

 ついでに、俺自身の黒歴史も挙げていくと、あいつはテーブルの端を掴み顔を俯けながらワナワナと震えだす。

 ちなみに、話している俺自身にもダメージが……いや、この話は止そう。


「お、おま、おま。うち知ってるぞ。あ、アレだな、お前は、ス、『ストーカー』って奴だな」

「いや、違うから」

「えー? 絶対そうだぜ。うちのこと気持ち悪いぐらい知ってるし」


 なるほど、たしかに傍から見るとストーカーに間違われてもしょうがないか、と思わなくもない。

 信じる信じないは想定してたけど、ストーカーと間違われるというパターンはまったくもって想定外だった。


「うーん、『ストーカー』疑惑はちょっと置いておいて。じゃあ、あとは一般常識だな。そうだな、とりあえず代々の『徳川将軍』の名前をフルネームで言ってみようか」

「おまえ、うちを馬鹿にしてるな? そんなん簡単だぜ。『徳川家輪(かりん)』に……」

「ん?」

「『徳川秀菜(ひいな)』それに三代将軍は『徳川家憐(かれん)』だろ? 後は……」

「ち、ちょっと待った、待った。一体誰のことを言ってるんだ?」

「え? だから代々の『徳川将軍』の名前だろ?」

「いやいや、代々のって言ったら『徳川家康』とか『徳川秀忠』とか、八代目だと『徳川吉宗』だろ?」

「えっ?」

「ん?」


 ……あれ、俺が間違ってるのか?

 てっきり一般常識だと思ったんだけど、もしかして違うのか?

 ってそんな訳あるか!

 八代将軍なんてテレビの番組にもなってるし、間違いないはずだ。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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数日中にはストックが切れそうな感じです。

必死に書き貯めてます。

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