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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
31/107

第三十一話 イオリとロブアグリードダンジョン十層目のボス

「ほらほら、フィーネ。十層目のボス部屋だぞ。こんどこそ、きっと、そう、きっとボスが居るはずだ」

「う~。本当ですか、イオリ様。私、もう騙されませんよ? さっきからずっとボスが居るボスが居るって言って、居なかったじゃないですか!」


 歯ごたえのある魔物と戦えないために、機嫌が悪いフィーネ。

 はぁ、ダンジョンに祈ってもしょうがないのかもしれないけど、ボスをちゃんと出してくれんかな。

 と、願いが通じたのか、十階層のボス部屋にはボスがちゃんといたようで、ダンジョンの入り口からもそれが見えた。


「ほらほら、ここからでもボスが見えるだろ?」

「あっ! 居ます! ボスの部屋の中にボスが居ます! イオリ様、早速倒しましょう! 早く、早く!」

「まあまあ、落ち着けフィーネ。ここまでほとんど休憩無しで来たんだから、ボス部屋の前で休憩しよう」

「う〜、早くボスと戦いたいのに。はぁ〜、しょうがないです。休憩します」


 とりあえず、暴走気味のフィーネを落ち着かして休憩を獲ることにしたが、俺はその間に『複写』魔法

を使用し、俺だけに見えていた、一層からここまでのダンジョン内の地図を、組合の売店で買った紙に書き込んでいく。

 まあ、どちらかというと、手を動かして紙へと書き写すというよりは、紙をハケを使い撫でると、ダンジョン内の地図が浮き上がってくる、といった感じのほうが近いと思う。

 一呼吸の間に一層分の地図が出来上がり、それからしばらくすると、二層目から十層目のボス部屋前までの地図が、あっという間に完成する。


「はい。これが今分かっている情報を書き込んだ、ダンジョンの一層から十層のここまでの地図だ」

「ありがとうございます。うーん、階層内の結構な部分が空白ですね。まあ、ほとんどボス部屋へ迷うことなく進み辿り着いていたのでしょうがないのでしょうけど」

「まあ、ほぼ迷わずに、最短距離に近い感じで進んだから空白部分が多いのは諦めるしか無いな。まあ、埋めようと思えば何回か同じ階層に潜っていればそのうち埋まるだろうし」


 俺達は『広域空間把握』を利用し、ほぼボス部屋までの最短距離に近いルートを通っているために、各階層の地図の埋まり具合は、良くて三割を超えれば多いぐらいだ。

 まあ、こればっかりは、スキルを利用し最短距離で進んでいるのでしょうがない事だと思う。

 その代わり階層内を探索する時間は限りなく少なくなるので、結局のところ、どちらを取るか、の問題となんじゃないかな?


「よし! じゃあ、そろそろボス部屋に入るか」

「やっとです! やっと、ボスと戦えます!」


 なんかすごい期待しているようだけど、まだ低層部分だし、階層内で出会う魔物も出会い頭に一閃で倒せるぐらいの強さしかないからなぁ。

 後でいろいろ言ってきそうで怖いなぁ。


「では、この階層のボスは私が戦いますね、イオリ様」

「ああ、任せたフィーネ」

「はい! 任されました!」


 ボス部屋に入り、後ろから扉が閉まる音がしているのを聞きながら正面を見ていると、奥からノシノシと魔物が歩いてくるのが見えた。

 部屋の広さは、他の階層のボス部屋と大きく変わることもなく、また、とくに障害物があるということもなく、平坦な地面となっていて、壁も表面は地面と同じような感じで平坦となっている。

 部屋の中央付近まで魔物が出てきたために、外から見た時には暗がりのために一塊にまとまって見え、一匹の大きな魔物がいるように見えたけど、どうやらこの階層のボスは六匹のようだ。

 ゴブリンに、ゴブリンメイジ、そして、ゴブリンサモナーが、その六匹の中に含まれているのは分かったけど、えっとその他の魔物の種類は何だろうか、と『鑑定』してみる。


----------------------------------------------------------------------

名称:ゴブリンウォーリア

固有名:なし

種別:魔物

状態:良好

関係性:敵対

全長:4フィト前後

体重:30ルトエ

脅威:パーティー討伐C級、ソロ討伐B級

概要:主にダンジョン内部では低層に分布する亜人種の魔物。

詳細:

体長は4フィト前後で、ゴブリン種の上位種となる。

ダンジョンで生まれた種族は、『狂化』を持っている個体は、戦闘中に不利を悟ると、高い確率で利用するため、『狂化』が使用された場合、一定期間思考力の低下と引き換えにその他すべてのステータスを倍以上に引き上げるため注意が必要。

接近戦に特化しており、剣や、個体によっては槍を使い戦闘を行う。

ダンジョン外部では雌のゴブリンがごく稀にしか発生しないために、人種の女性を攫い苗床とすることがあるが、ダンジョン内で発生したゴブリンは生殖機能がないためにそのようなことは行わない。

加護:『ロブアグリードダンジョンの庇護』

スキル:『剣術補正』

魔法:『豪腕』『狂化』

----------------------------------------------------------------------


 ゴブリンウォーリアか。

 一番後ろの他に比べ一回り大きい魔物は、ゴブリンジェネラルのようだ。


----------------------------------------------------------------------

名称:ゴブリンジェネラル

固有名:なし

種別:魔物

状態:良好

関係性:敵対

全長:4.5フィト前後

体重:35ルトエ

脅威:パーティー討伐C級、ソロ討伐B級

概要:主にダンジョン内部では低層に分布する亜人種の魔物。

詳細:

体長は4.5フィト前後で、ゴブリン種の上位種となる。

すべての個体は、『同族指揮下級』か『同族指揮中級』を持っているため、下位種族もしくは同位種族がいた場合には、それらに対して指示を行い、統率の取れた動きで戦闘を行うために注意が必要。

ダンジョンで生まれた種族は、『狂化』を持っている個体は、戦闘中に不利を悟ると、高い確率で利用するため、『狂化』が使用された場合、一定期間思考力の低下と引き換えにその他すべてのステータスを倍以上に引き上げるため注意が必要。

接近戦を得意としており、ゴブリンウォーリアにも負けない程度の能力はある。

ダンジョン外部では雌のゴブリンがごく稀にしか発生しないために、人種の女性を攫い苗床とすることがあるが、ダンジョン内で発生したゴブリンは生殖機能がないためにそのようなことは行わない。

加護:『ロブアグリードダンジョンの庇護』

スキル:『同族指揮下級』『剣術補正』

魔法:『咆哮』『俊敏』『狂化』

----------------------------------------------------------------------



「フィーネ。ゴブリンが二匹に、ゴブリンメイジ、ゴブリンサモナー、ゴブリンウォーリア、そして一番奥はゴブリンジェネラルみたいだ」

「了解です。イオリ様」


 おぉー、これまでの階層で出てきたゴブリン種やゴブリン種はゴブリン種でも新しい種のオンパレードだなぁ。

 ただ、これから実際に始まるのは、ゴブリンジェネラル次第だけど、フィーネによる蹂躙劇でしかないのだけれど。


「では、行ってきますね、イオリ様!」

「気をつけてな……まあ、心配はしていないけど」


 小声でつぶやいたのが聞こえたかどうかわからないタイミングで、フィーネは待ちきれないとばかりに駆け出し、ゆっくりとした歩みで進む魔物たちの前に飛び出していった。


「ふっ!」


 フィーネが突然目の前に飛び出してきたために驚き一瞬動きを止めたゴブリンたちだったが、当然の事ながら、その隙をフィーネが見逃す訳もなく、バスターソードを右から左へとほぼ水平に一閃する。

 その結果、先頭に陣取っていたゴブリンウォーリアとその左側に居たゴブリンのうちの一体がバスターソードの軌跡に遅れること少し、血飛沫が同じ軌跡を辿り飛び散る。

 そして、先程よりさらに大きく驚き、動きを止めているゴブリンたちの目の前で、先ほどまで動いていた仲間たちの頭部が転げ落ち、そして胴体部分もゆっくりと地面へと倒れていく。

 それを確認することもなく、すぐに動き出したフィーネは、驚き固まっているゴブリンたちの右側面から、後ろへと回り込むように移動をしている最中だ。

 目の前からフィーネが消えたことにゴブリンたちがようやく気が付き、フィーネを探そうと周囲へと意識を移した瞬間に、今度は後ろから襲いかかるフィーネ。


「はっ!」


 集団の先頭に居たゴブリンたちに続いて、同じように横へ一閃したバスターソードにより、ゴブリンメイジとゴブリンサモナー、そしてフィーネに恐れ慄いたのか少し後ろへと下がっていたゴブリンの合わせて三匹がまとめて断ち切られ、血飛沫とともに頭部が先ほどと同じように転げ落ち、胴体もゆっくりと倒れていった。

 瞬く間に、一匹となってしまったゴブリンジェネラルは、地面に倒れこんだゴブリンたちとフィーネの気配に後方へと振り返り、そして地面に倒れている先ほどまでゴブリンたちだった物を、その次にフィーネを認識すると、すぐさま硬直狙いでフィーネへと『咆哮』の魔法を使用してくる。

 結果手には、まあ圧倒的にフィーネとゴブリンジェネラルとの力量差が開いているために目論見がはずれ、魔法を利用している最中にもかかわらず、フィーネのバスターソードが頭から股へと垂直に一閃し、そのままの勢いで地面と少し接触したために地面が抉れ礫が舞った。


「う〜。全然歯ごたえがありませんでした。消化不良です、イオリ様〜」


 あっという間にボスを倒した、いや蹂躙した、フィーネは、と言えば、まだ暴れたり無いのか拗ねている。


「さすがフィーネだな。あっという間に倒し、いや蹂躙してしまうとはねぇ」

「イオリ様、まだ倒し足りません! このまま二十層まで行ってしまいましょう!」

「まぁ、まてまて。とりあえず今日は一旦ここまでにしよう。一定階層ごとに利用できるポータルを使ってみる良い機会だろ?」

「う〜。はい、分かりました。ただですね、その、暴れ足りないので、この体の火照りは……イオリ様の体で収めてくださいね?」


 上目遣いでドキッとするようなことを言ってくるフィーネ。

 まあ、実際は想像するようなあれこれではなく、たぶん、組合の地下の訓練場で組手をして欲しいってことだろうな。


「と、とりあえずは、ポータルで地上へ戻ろうか」

「分かりました」


 いくら残念なフィーネが相手だとしても、ちょっと(ども)ってしまったのは仕方がない。

 フィーネが美少女なのは間違いないのだから。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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もうそろそろストックが切れそうなので、間に合わない場合には更新頻度を少なくします。

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