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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第三十話 イオリとロブアグリードダンジョン二層目から十層目

 ポータルで次の階層へ飛んだのはいいけど、階層内は一層目と同じく迷路となっていて、壁や天井、そして通路に至るまで一層目と同じ作りだ。

 このため二層目に居るのか、それともポータルでの転移が失敗するなどした結果、一層目のどこか別の場所に迷い込んでしまったのか見た目では判断が難しいと思う。

 もっとも、俺は『広域空間把握』の魔法があるので、二層目に飛んだ瞬間に、今まで描かれていた地図が全て消え、現在付近のみが地図に現れたので、問題なく二層目へと移動できたことが確認できた。


「『広域(bamhi)空間(nzvimbo)把握(anzwisise)』で描かれた地図も着いた瞬間に更新されたから、まあ、間違いなく次の階層へ来れたみたいだ」

「なんだか、階層の壁などの作りが変わらないから、次の階層へ潜れたか心配でしたけど、安心しました」


 今、俺達が潜っている低層は、階層内が迷路構造となっているので、通った道が自動的に地図になるような魔法やスキルを持っていない探索者は、大いに迷ってしまい、ボス部屋にまでたどり着けないか、たどり着けても時間が余計にかかると思う。

 俺達は『広域空間把握』の魔法を俺が使っているので迷うことなく、中心付近にあるボス部屋に向かって進んで行くことが出来る。

 なお、その途中で出会う魔物という魔物はフィーネがバッサバッサと切り捨てていくので、その後ろを進む俺は、解体することなくそのまま『倉庫』へと、どんどん放り込む。

 そんな感じで階層内を休憩もなしに、ほとんど警戒という警戒もせず、すごい速さで移動しながら俺とフィーネは進んでいるので、傍から見るとかなり奇妙に見えるかもしれない。

 ちなみに、俺がどんどんと『倉庫』へと放り込んでいる魔物の死骸だけど、一般的な駆け出しの探索者は、物が大量に入る魔法や魔道具なんて便利なものは持っていないので、諦めるか、その場で解体してできるだけ荷物を小さくしたりするそうだ。

 解体した残りなど、ダンジョン内に放置された魔物の死体は探索者の場合と同じくしばらくするとダンジョンへと跡形もなく吸収されるらしい。

 出会う魔物は、二層目も一層目と大して変わらず、殆どゴブリンで、たまに出てきても同種族の中位種であるゴブリンメイジが、ゴブリンを従えながら出てくるぐらいで、その他には一度だけ一層目のボスだったゴブリンサモナーに出会うことがあったが、まあ、ゴブリンサモナーであっても、フィーネの敵ではなく出会い頭にバスターソードの一閃で例外なく倒されてこの世からさよならしていた。

 ダンジョンの階層内を、地図を作りつつどんどん進み、フィーネが出会い頭に一撫でで葬り去ってきた魔物の死骸の数が三桁になろうかというあたり、まあ俺たちとしては、やっと着いたという感じだけど二層目のボス部屋に辿り着いた。


「イオリ様! ちょうど、ボスの部屋に誰も入っていないようです。入りましょう!」

「休憩は要らない?」

「はい、大丈夫です!」


 一応、休憩を取るかどうかフィーネに聞いてみたけど、実のところは俺もフィーネも休憩が必要となるぐらい、体力的にも精神的にも疲れている訳ではないので、まあ、どちらかというと休憩を口実としてフィーネに落ち着いてもらおうかと思ったんだけど、そう、うまくはいかないようだ。

 しかし、フィーネはボス部屋の扉が開いていても、中に必ずしもボスが居るとは限らない事に気がついているのだろうか。

 そんな事を思いながら、入り口前で立ち止まっていたら、スキップでもしそうなぐらい上機嫌となっているフィーネに半ば強引に引っ張られ、そのままボス部屋へと連行されてしまった。

 まあ、案の定というか、ボス部屋に入ったフィーネは、しばらく待ってもボスが出てこず、そして入り口の扉も閉じないことに頭を傾げた後で、理由に思い立ったのか涙目でこちらを振り返ってきた。


「イオリ様〜。ボスが出てきません。もうしばらく、も〜しばらく、待ちませんか?」

「諦めような、フィーネ。次のボスも譲るから、さっさと次の階層へ行くぞ」

「う〜。わかりました」


 ボスが部屋に湧くまで待っていようと駄々をこね始める前に、フィーネを宥めて、さっさと次の階層へと進むことにする。

 まあ、ボスが湧くまでボス部屋に居座っていてもいいけど、他のパーティーと揉めそうなのでやめておくことにする。

 人がほとんどやって来ない深層ではボスを占有するようなことをしても、他に衝突するような人たちがいる訳でもないので、絡まれることはなさそうだけど、そもそもの話でボスが強い場合はそんなことをやっている余裕はなさそうだ。


「予想通りというか、驚きがないというか、三層目も一層目と二層目と同じような迷路だな」

「それはしょうがないと思いますよ? ともかく、次。次です。この階層で絶対にボスと戦います」


 なんというか、結果が想像できてしまうようなことを言っているが、大丈夫だろうか?

 バッサバッサと魔物を切り捨て先を進むフィーネを見ながらそんなことを思ってしまうぐらいに、ボス部屋までの道のりは余裕を持って進めている。

 やはり、俺たちの強さだと、中層の終わりぐらいまでは少なくとも問題なさそうだ。


「うーん、歯ごたえがありません。ボスは私の期待にこたてくれるでしょうか?」

「いやいや、低層の魔物に期待をしすぎじゃないか、フィーネ?」


 普段はそれほどまででもないと思うんだけど、フィーネの残念具合が酷い。

 ……まあ、ダンジョンの中だし、戦闘中は仕方ない事、としよう。

 それからしばらくは『広域空間把握』により、俺の目の前に浮かび上がった地図を見ている俺の案内で右に左にとボス部屋への道を順調に進み、結局は迷うことなくボス部屋まで辿り着いた。


「イオリ様! ボス部屋です! 早く、早く行きましょう!」

「いや、見て分かるようにボス部屋の扉はしまってるから、もうちょっと落ちつこうな?」


 残念な事に、ボス部屋へと通じる唯一の扉は、別のパーティーが既に入っているために、今は閉まっているようだ。

 そして、おれは、先ほどの階層にもまして待ちきれないのか今にも扉を壊して中に入ろうとするフィーネを宥め落ち着かせている。

 なんか、ダンジョンの探索より疲れる気がするぞ。


「おっ、開いたか?」

「はやくはやく! イオリ様、早くボスの部屋へ行きましょう!」


 ダンジョンの前に休憩がてら座り、しばらくすると地面と扉が擦れる音とともにボス部屋の扉が開く。

 ボス部屋の中を伺うと、探索者の遺体もボスも居ないようなので、どうやら中のボスについては俺たちの前にボス部屋に入っていた探索者に倒されてしまったようだ。


「う~。またボスが居ません。楽しみにしていたのに酷いです」

「まあまあ、落ち着け、フィーネ。次の階層行こうな。次はきっとボスと出会えるからな」

「きっとですよ、イオリ様」

「ま、まあ、俺に期待されてもしょうがないけど」

「それはそうですけど……」


 結局のところ、四層目、五層目、と次々とダンジョンに潜り階層を最短距離で探索していくが、九層目まで、一度もボスと出会うことなくここまで着てしまったために、フィーネのやる気が尽きそうで、やる気を出させるのが大変だった。

 後の方になると、もう俺が引っ張っていかないと道を進まない状態になっていたので、背中を押したり、腕を引いて歩いたりと、それはもう苦労した。

 まったく、このダンジョンは俺に何の恨みがあるのやら。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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