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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第三話 イオリと探索者組合内での出来事

 フィーネと話しながら建物の中に入っていく。

 建物の外観は、当然と言っていいのかわからないが、他と同じように西部劇風だったが、中に入ると雰囲気が一変する。


「ほー、中は外観とガラッと変わるんだな、近未来風というか冷たい雰囲気というか」

「そうですね、初めてみる建築様式です」


 フィーネも同じように感じているのか珍しいものを見るような目をしている。

 建物の中に入ると、外とは雰囲気が変わり、どこの宇宙船だよ、という感じの内装になっているが、ただそれだけではなく、余計な装飾はいらないとばかりに、只々必要な機器が整然と並んでいる。

 俺達がこの世界で見た最初の建物も、近未来風だったが、この探索者組合の中はもはや別の世界に迷い込んだのかと思うぐらいの変わり用だった。


「おいおい、珍しい物見てボケッとしてるのは分かるが、ここは入り口だぜ? ボケッとするなら隅でやってくれねーかな、坊っちゃん嬢ちゃんよ」

「すいません、中と外との変わりようが激しくてビックリしてしまいました」


 おう、気を付けるんだぜ、と言いながら、隅によった俺たちの横を通り中に入っていくムキムキマッチョな男。

 しかし、何故にムキムキマッチョな人たちは上半身が裸なのだろう、そんなに筋肉を見せたい、いや見せつけたいのだろうか?


「とりあえず、いつまでも端に寄っていてもしょうがないから、さっさと登録を済ませて、仕事を探そう!」

「そうですね、少し注目を浴びているようですし」


 と、先ほど注意されたのが恥ずかしかったのか、フィーネは少し頬を染めながらそう言った。

 実際、ローブ姿の人物が2人なので、それほど目立つ格好ではないとは思うけど傍から見るとお上りさんに見えたのかもしれない。

 まあ、俺達の服装については、こちらで着替えを買うつもりではあるんだが。

 それはさておき、まずは登録だな。

 カウンターらしき場所を見ると、休憩時間なのか、一人しか座っておらず他の席は空席となっており、その代わりなのか札が一人座っている受付に誘導するように出ていた。

 そういえば、転送ゲートっぽい建物を出た後に空を見たら、二つの太陽ほぼ真上に登っていたので、まあそれを持ってして、少なくともフィーネの世界でも現代日本いや現代世界ではないことは確実だったりする。

 太陽が真上ぐらいにあるってことは時間帯的には昼時だろうから、もしかしたら交代で昼の休憩をしているのかもしれないな。

 それはさておき、その、カウンターに一人しか座っていない人の前には、先ほどのムキムキマッチョを含め数人が並んで待っているようだった。


「うーん、これは登録に少し時間がかかりそうだな。まあ、どうしようもないから諦めて並ぶしか無いかな、やっぱり」

「まあ、並んでいる人数は、数えてみるとそれほど多くは無いですから、しばらく待てば――」


 フィーネと話している途中、ゾクッとした気配がしたため、素早く辺りを見回したところ、カウンターのある辺りで一瞬にして魔力の気配が爆発的に立ち上ったことに気がついた。

 そのことに気がついた瞬間、いやもっと正確に言うとそれの少し前から、俺の思考が『危険察知』の加護と『体感速度加速』スキルの組み合わせにより自身の思考が高速化され、逆に周りが擬似的にゆっくりとした時間の流れへと穏やかに、しかし確実に変わる。


「くっ! これは、間に合ってください!」


 フィーネも気づいたようで驚く声と共に今まさに動き出そうとしているのが視界の端に見えた。

 とりあえず、思考の高速化が完了し、擬似的な時間停止、実際には少しずつ進んではいるが、周りの動きがなくなったことで余裕ができた俺はカウンターの辺りをじっくりと観察してみる。

 すると、カウンターの上には、それぞれ辺の頂点に装飾が施され色は赤黒く、そして六面は半透明で手のひらに乗るような大きさのキューブが置いてあることに気がつく。

 どうやらそれは受付のお姉さんと話している男が持ち込んだもの、のようだ。

 カウンターで対応をしているお姉さんは、金髪で胸辺りまでの髪を一房に縛り左側から前面に自然に流しており、そして、これは重要なことだが、胸が大きい、そう、胸が、っとつい、時間がほとんど止まっているからと思考が脇道に逸れてしまった。

 気を取り直し、カウンターで話している男について観察してみると、手をローブの中に仕舞い何かをしようとしているか、した後かのようだったので、ほかに変わったところはないかと思い、ふと男の足元をよく見ると、うっすらと光る幾何学模様がまさに描かれている途中だった。

 つまるところ魔道具か、それに近しい何かを起動した直後のようだ。

 幾何学模様、もうこの際、魔法陣と呼ぼう、きっと間違ってはいないだろう。

 その魔法陣は、描かれている一部から全体を想像すると、フィーネと俺がこの世界に来た直後に見た魔法陣と似ているので恐らくは同じような系統の転移魔法なのだろう。

 そして、今この瞬間にその転移魔法を起動しようとしているわけだな。

 爆発的な魔力の発生、そして、転移魔法とくれば、そこから導き出される可能性としては、男自身がその場にいると困ったことになるので逃げ出そうとしている、という事だろう。

 そうであれば、やることは簡単で危ないものを物体Xと仮に名付け、まずはその物体Xを、頑丈な結界、それも念のため自身の直感に従い時間を止めるような性質を持った強力な結界で固めてしまおう。

 そして、たぶん間に合うと思うが、ついでに男の転移も止めてみよう。

 ということで、まずは無属性魔法の『結界』に空間属性の上位の次元属性として停止を付与し起動する、まあ、この辺りは以前に散々やった、というかやらされたというか、なのでお茶の子さいさいなのである、えへん。

 そして、もうほとんど起動直前の転移魔法に対して、無属性魔法の『魔素還元』を起動し魔法を壊してみる。

 この、『魔素還元』は、要するにアンチマジックまたは魔法使い殺し、というやつで、制限はあるが、魔王軍討伐時の道中幾度となく助けられた俺の十八番(おはこ)だ。

 とどめ、とばかりに、これも無属性魔法の『思考ノイズ』を起動しようと思ったが、これからきっと取り調べ(おはなし)、もしくは詰問や拷問(おはなし)が待っているだろうから、そうであるなら受け答えができた方が良いと考えを改め、魔法使い殺し其の三の無属性魔法『魔素拡散』を起動する。

 とりあえず、これで対処できた、と思いつつ体感速度をゆっくりと下げる。

 まあ、何が起こってもいいように、保険は別にかけてあるんだけど、多分大丈夫だろう。


「は!?」


 最初に声を上げたのは、一向に目の前の景色が変わらないことに気がついた様子の騒動を起こそうとした本人だが、現状の理解が及ぶに連れて顔の表情がだんだんと悪くなっている。

 列に並んでいた人や、受付のお姉さんは何が起きたかわからずキョロキョロしている。

 フィーネは、俺のやったことをなんとなく察しているのか、こちらをチラッと見て頷く。


「はい! はい! とりあえず、その男を捕まえた方がいいんじゃないですか?」


 手を叩きつつ声をかけ皆が動き出すように流れを作る。


「なっ! 馬鹿な!? 転移しない? 魔道具が壊れているのか? あの、クソジジィ、欠陥ひ――は、離せ! お、俺は何もしていないぞ!」

「うるせー! お前、明らかに何かしていただろう!」

「そうだそうだ、オレのケーネちゃんに何してんだ!」

「「いや、お前のとか無いから」」


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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