第二十二話 イオリと夜の食堂での食事
フィーネも端末へと向かってメニューを選んでいるので、俺もさっさと選ぶとしよう。
ふむふむ、端末を見ると、本日のおすすめのオーク肉バーガーが、これを選ぶべし、とでも言うようにトップにでかでかと表示されている。
オーク肉バーガの値段は11セタから14セタのようで、これは昼に食べたオークカレーやフィーネが食べたオークかつ定食などに比べ少し高いようだけど、まあ、昼間のは日替わりのランチメニューだったし、このオーク肉バーガーは値段の分だけ、豪華になっている、とそう思いたい。
まあ、ちょっと値段に躊躇しそうになったけど、食欲には勝てず、結局選んでしまったのは、濃厚チーズをサンドしてあるオークミートチーズバーガーだ。
これは、バンズの上に、薄い赤紫色をしているレタスっぽい野菜を載せ、その上に分厚いオーク肉のパティ、そして濃厚チーズのスライスを載せてあり、黒に近い灰色をしたタマネギのスライス、さらに濃い青紫色のトマトのような野菜の輪切り、そしてバンズの前に再度の薄い赤紫色をした野菜、最後にバンズという重なりになっている。
正直、野菜の色を見ていると常識がグラグラと揺さぶられてしまうけど、それお無視すれば、メニューのイラストを見ているだけで生唾を思わず飲み込んでしまうぐらい美味しそうだ。
メインのバーガーを選び、小計の欄にバーガーが追加されたのを確認し、さてサイドメニューのドリンクを選ぼうかと画面を見ると、どうやらバーガーに関しては、パティを追加したり、野菜を追加したり、逆に野菜などを抜いたりと細かなトッピングや指示が出来るみたいだ。
ここは少し迷ったけど、パティを二枚に増量だな。
あとは、ドリンクとのセットにすればセットにしたドリンクが割り引かれるようなので飲み物を一覧から選ぶ。
エールっぽい飲み物にも惹かれはするが、フィーネに言った手前それはまたの機会として、ここはなんか青みがかったキレイな紫色をしているジンジャエールっぽい飲み物にしておく。
一応はジンジャエールと名前が出ているけど、これは俺の知っているジンジャエールなのだろうか疑問だ、色がちょっとね。
メニューが決まったので、組合カードで会計処理をしてフィーネの方を見ると同じく会計が終わったようで丁度、目があった。
「イオリ様は何を選びましたか? 私は『ロブアグリード特製全部のせバーガー』にしました。端末でトッピングをメニューから選ぶことができるようなので野菜とオーク肉をさらに追加しました」
「俺は『オークミートチーズバーガー』にパティを二枚追加だな。飲み物はジンジャエールにしたけど、フィーネは何にしたんだ?」
「私はザクロジュースです。メニューの絵では青色してたのですが、何やら珍しい色だったので挑戦してみました」
しかし、フィーネもチャレンジャーだよな、たしか青色って食欲をなくす色じゃなかったっけ?
むふーと鼻息も荒いフィーネに、早く早くと背中を押され、カウンターに向かう。
しばらく待っていると、昼間と同じように注文したメニューの番号がカウンター近くの画面に表示され、料理の準備が出来たことを知らせてくれる。
カウンター脇にある端末に組合のカードを翳すと、トレイを固定していた爪が外れ料理が受け取れるようになる。
ここは昼間と同じようだ。
ちなみに、トレイの上の料理も、魔法か何かでガッチリと固定されて、料理が乗っているお皿だけ持っていかれると言ったことは無いようだ。
昼とは反対に、フィーネが注文した料理は、まだ準備できていないようなので、一言断った後、開いている席を探し待っていることにした。
席に座りしばらくするとフィーネもトレイを持ってキョロキョロしながらやってきたので軽く手を上げて場所を教えると少し小走りにこちらに駆けて来た。
犬みたいって言うとフィーネは拗ねるけど、尻尾をぶんぶんと振っている幻が見えそうだ。
「じゃあ、食べようか」
「はい」
俺の注文したバーガーは、パティを二枚増量しているためか、さすがにそのまま積むと倒れてしまうと見えて、少し崩された感じでお皿の上に乗っていた。
さてさてどうやって食べようかと少し考えるけど、ここはやはり一つにまとめてかぶりつく、でいこう。
ちょっと行儀が悪いと思うけど、まあナイフとフォークを使い切り分けて食べるのも何か違う気がする。
とりあえず、まとめてみたけど、オーク肉のパティを追加したせいなのか、これはちょっと分厚くて口に入らないかもしれない。
しょうがないので両手でバンズを包み込み、ギュッと圧縮するように少し潰すと、じわっーとパティから肉汁が溢れてきた。
こ、これは、辛抱たまらん!
「もぐもぐもぐ」
もぐもぐと俺が今食べている、バーガーのパンに挟まっているのは、オーク肉のパティでこれは増量してあるので三枚、レタス、タマネギ、トマトにそして、チーズ、の四種類だ。
ちょっと色が記憶にあるハンバーガーに入っているものと違っている気がするが、別段におかしな味ってわけでもなく、むしろ主役のオーク肉のパティを引き立てて、どっしりと脇を固めているので、正に絶品、という感じなので気にしないでおこう。
これは飲み物にも言えるけど、ほんと、名前と味は一致しているのに、色使いは赤色っぽい、とかではなく、完全に赤色原色となっているので、もはやこれは慣れるしか無いと思う。
こうなる原因として考えるに『言語理解補助』の加護が理由かと思ったど、たしか、それ固有の名前は似ているものに変換されることはなくそのままの名前となる、という話だったので、もしかしたら、過去にこの世界に来た異世界人が広めたのかもしれない。
ちなみに、フィーネは上品にトレイに乗っていたナイフとフォークを使い、多少大きめに切り分けながらも、ニコニコと嬉しそうにしながら美味しそうにバーガーをもぐもぐ食べている。
嬉しそうで何よりだ。
「さてと、嬉しそうに食べている所申し訳ないけど、食べながらでいいので、明日からの予定を軽く決めよう」
「んんッ。そうですね。まずは、部屋で準備を整えた後、すぐにダンジョンに行きましょう」
フィーネはダンジョンに潜るのが、それはもう待ちきれない様子でほんと困ったものだ。
「あー。ダンジョンにすぐに潜りたいのはわかるけど、朝ごはんは食べよう」
「っ! たしかに、朝食のことが頭から抜けていました……。あと気になるのは、ダンジョンの魔物がどのぐらいの強さなのかでしょうか。手応えがあると良いのですが」
「まあ、それは実際に潜ってみないと分からないけど、低層の時点で手こずるようだったら、お金を稼ぐ手段を別に考えないといけないかなぁ」
調べた限りだと中層ぐらいまでは問題なさそう感じなんだけど、調べた中で、フィーネの生まれた世界に居た魔物と比べた感じだから、確信を持って大丈夫と言えないところが困るな。
「イオリ様は慎重すぎます。もっと大胆に行かないと勝てる勝負も負けてしまいます!」
「いやいや、フィーネはもう少し慎重になろうね。たしかに勢いに乗るのは大事だけどさ、それで足元をすくわれたら元も子もないよね」
それはそうですが、と言いつつ戦いに血が騒ぐのか、すぐにでもダンジョンへ飛び込んで行きそうな、フィーネ。
ほんと、前から変わらない、そんな困った所もあるフィーネが居るから安心できるな。
まあ、口には出せないけど。
雑談をはさみつつも、バーガーをもぐもぐしながら明日の予定を確認し食べ終わった所で、俺とフィーネは食堂を出ると、一階のカウンターで組合と提携している宿泊施設の場所を聞き、その足ですぐ隣に実はあった宿泊施設へとやってきた。
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