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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第二十一話 イオリと夜の食堂での邂逅

「イオリ様、夜の組合の食堂はどんな料理があるのでしょうか?」

「ああ、えっと、たしか昼は食堂で、夜は酒場だっけ。組合の食堂兼酒場は。まあ、お酒は出るよね、確実に」

「お酒は飲まれますか?」

「いや、うーん。とりあえず今日はやめておこうかな」

「そう、ですか」


 フィーネの世界、と言うかフィーネの生まれた国では、お酒は成人してからが基本で、その成人する年齢は十六歳からなので俺達二人は国の基準てとしては成人していたりする。

 そして、当然のことながら、お酒も解禁されるので大っぴらに飲んでいたけど、そもそも罰則自体は特になかったので、実は俺もフィーネも成人前から飲んでいたりする。

 まあ、それはともかく、フィーネのお酒を飲む量が尋常じゃなかった。

 本人的には嗜み程度のつもりで飲んでいたらしいけど、俺も含めた周囲から見たらかなりの量を飲んでいた。

 フィーネの酒癖は特に悪い訳ではないけど、飲む量がすごいので、ちょっと今の借金状態でお酒を飲むのはためらわれるかな。

 きっと、俺が飲むと、フィーネもご一緒しますと言って、どんどん飲みそうなので、飲むとしたらお金に余裕が出来てからかなと思っている、フィーネには悪いけどね。


「……お酒はともかく、他のお店へも行ってみたいですね」

「たしかに組合の食堂だけってのもあれだから、他のお店も探してみたいね。あと、料理もお酒も、じゃない? フィーネ」

「もうっ! イオリ様は酷いです」


 実際、昼食を組合二階の食堂で食べたけど料理の味は不味くはないし、どちらかというと美味しい部類に入ると思う。

 値段もそこそこで、もうずっと組合の食堂で良いのではないかと思わなくもないが、それはそれで、ちょっと勿体無い気がするので、懐に余裕ができたら食べ歩きをするのも悪くはないと思う。

 どちらかというと後衛よりな俺よりも、前衛より、いや、完全に前衛なフィーネはカロリーの消費が多いらしく、戦いの後などは俺より多く食べるので最初の頃は驚いていたけど、まあ旅をする中で慣れてしまった。

 しかし、あんなに食べてその栄養はどこに言っているのだろうかと思うけど、やはり体のある一部分に集中しているとしか考えられない。

 まあ、どこ、とは言わないけど、どことは。


「と、ともかく、夕飯は何があるのでしょうか? 楽しみですね、イオリ様」

「まあ、オークの肉も美味しかったけど、それ以外の肉があれば、それを食べてみるのもいいな」


 なんだかんだ言って、俺もフィーネと同じように組合の食堂で食べる夕食が楽しみだったりする。

 せっかく異世界に来たんだから、オークの肉以外のこの世界独自の肉などがあれば、やはり食べてみたいものだ。

 もうすっかりと日が暮れていて、辺りを見回すと酒場だろう店からも、明かりが漏れ人の歓声も聞こえている。


「なんか皆、楽しそうですね」

「だな。きっと依頼がうまく行ったとか、そんな感じなんじゃないか?」


 組合もその例に漏れず、すでに出来上がっているであろう人の声が二階の食堂から聞こえている。

 二階へと登るための階段前には、俺たちが食事をした昼頃に、硬い感じのメニューが書かれていた看板に代わり、メニューにある品がイラストで描かれ、メニューの文字も手書きで書かれた看板に変わっていた。

 それを見ると


・おすすめは、オーク肉を分厚いパティにした肉汁が滴るオーク肉を使用したバーガー三種類

・スパイシーでお酒も進む、スパイシーオークミートバーガー

・濃厚チーズのスライスを挟んだオークミートチーズバーガー

・あなたは食べきれるか? ロブアグリード特製オークミートやチーズなど全部のせバーガー


 とそんな感じのことがデカデカと書いてあるけど、ちょとオーク肉を押し過ぎだろうと思う。

 値段的にはまあ、昼に比べ少し高めの値段が付いていたけど、イラストで描かれたハンバーガーは美味しそうで思わずよだれが出てきてしまう。

 三種類あるうちのどれにしようか迷ってしまうけど、これはもうハンバーガーを選んで食べるしか無いな。


「イオリ様、早く行きましょう! オーク肉バーガーが待っています!」

「いやいや、そんな急がなくても、逃げないよきっと。ほんとフィーネは食いしん坊だなぁ」


 と、そんなことを言うと、顔が真っ赤になって恥ずかしがる、フィーネ。

 そんなに恥ずかしがらないでも、食いしん坊なのは前から知ってるので今更じゃないかな、フィーネ。

 食堂への階段を登ると、昼とは打って変わって室内は西部劇で出てくるような感じのお洒落な酒場へと完全に変わっていた。

 テーブルや椅子はともかく、壁や天井、はなんとなく面影が残っている。

 えっと、たしか17時から酒場に変わるって書かれてたけど、やっぱり、普通に人手をかけてささっと模様替えするのだろうか?

 なぜか、配膳カウンター以外にバーのマスターのような格好をした、おそらくは昼時にカウンターの奥でひたすら料理を作っていた男達が待機している。

 それ以外の椅子やテーブルなどは、昼間に食堂で使われていた物から別のデザインの物が使われていた。

 ちょっとこれには驚いたけど、注文するための端末があるのを見ると昼間と注文や受け取りの仕組みは変わらないようだ。

 しばらく驚いて突っ立っていたけど、そういえば入口付近だったな、と思い出した。


「フィーネ、ここにいると邪魔だから、さっさと注文して夕食を……」


 とフィーネに言おうと振り返った瞬間に、またもや衝撃が、今度は背中ではなく右脇にあった。

 危うくフィーネを巻き込んで転びそうになったけど、それに気が付いたフィーネがしっかりと受け止めてくれたので転げたりはしなかった。

 一見か弱そうに見えるフィーネだけど、実は魔法で強化すると、大の大人、それも大柄な戦士も打ち負かす力が出せるので、フィーネとを巻き込んで転がる未来は回避されたみたいだ、正直今回はフィーネに助けられた形だ。

 まあ、フィーネ本人にパワーファイターって言ったりすると落ち込んでしまうので、思っても口を噤んでおこう。

 ちなみに、フィーネに正面から受け止められたからか、むにゅっと良い感触があって、ってたしか胸の部分はプレートアーマーを装備してたはずだからこんなに柔らかいはずが、って、そ、それは置いておこう。

 ともかく、ぶつかられたとはいえ、フィーネが受け止めてくれたので結果的に無傷だし、むにゅ、が良かったので、向こうが謝れば、水に流そうかなとは思っていたところ。


「すいません。すいません」

「ソータが謝ることないじゃん。ぶつかったのは悪かったけど、入り口で突っ立ってるのが、そもそも悪いとうちは思うな」


 連れのほうが謝っているが、どうやら、俺にぶつかった方はあまり悪いと思っていないようだ。

 ちょっと言い方がぶっきら棒で、若干喧嘩腰のようだけど、言っているとは間違っていない気がするので俺も謝ろう。


「たしかに、入り口で突っ立ってたのは悪かった。それは謝る、すまん」

「ご迷惑おかけしました。すいません」

「ああ、うん。うちもすまんかった」

「こちらこそ、ご迷惑おかけしました」


 とくにゴネることなく、あっさりと俺達に謝ると、じゃあ、と連れを伴いさっさと食堂を出ていく。

 フードを深くかぶっていたので顔は見えなかったが、たぶん子供(・・)じゃないだろうか?

 俺らには関係ない話だけど、子供(・・)でも酒場となっている夜の組合食堂を利用したり出来るみたいだ。

 って、さっきの人たちは、この世界に来た直後にぶつかってきた人たちに似てた様な気もするけど、どうだろう?

 おっと、それはさておき、夕飯だ、夕飯。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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