第二話 イオリと状況把握
予約投稿に失敗していましたorz
建物の外に出てみると……うん、まさに西部劇みたいだ。
とりあえず、すすすーと、出口付近の壁際に移動し作戦会議、もとい現状把握だ。
「えーと、ここはイオリ様の居た世界の“日本”ではないようですし……。このような様式ははじめて見ましたので、これは私の居た世界……でもなさそうですね。一体どこなんでしょうか?」
「うーん、そのことなんだけど、さっきぶつかってきた男の人いたよね」
「はい、突然横に現れたのでびっくりしました」
「そう。で、その人たちが話してた言葉が日本語に、えっと、俺が生まれた国の言葉に似ていたんだけど『言語習得補助』の加護に頼らないと全く理解できなかったんだ。あと、突然人が現れたことにフィーネも驚いたと思うけど、俺が生まれた国では、そんな技術は物語の中にしかなかったはず。それこそフィーネの住んでいた世界のように魔法を使わないと実現できないかったはずなんだ」
「なるほど。では、そもそも、なぜこのような事が起こったのでしょうか?」
「そうだね。これは予想でしかないのだけれど……」
「情報がない状態なので、どうぞ遠慮せずに仰ってください」
「うーん、じゃあ言うね。あっ、その前に今から話すことで気を落としたり謝ったりする必要はないからね?」
「? はい」
フィーネは突然の話の方向に首を少し傾けながらも続きを促される。
俺としては、一応は予防線を張ったつもりなんだけど……。
この感じからするとこれから話す内容について気がついていないし、話したら謝ってくるのだろうなぁ。
まあ、そこがフィーネのいいところなんだけど。
「うん。それじゃあ話すね。世界から世界への転移は召喚または送還の儀式で世界から集められた魔力を元に送還魔法を起動すると思うけど」
「はい」
「ところで、少し話はそれるけど、一般的には魔法に必要な魔力が足りない場合どうなる?」
「はい? え、えーと、確か起動しない……ではなかったでしょうか?」
「そうだね、ただ、単に起動する、起動しない、だけではなく、その中間の状態、つまり、魔法が起動はするけどその効果が不安定な状態。例えば『雷槍』なら、痺れ難かったり、逆に黒焦げになったり、あとは槍の形を保てなかったりって状態になったりする。これは魔法の起動に必要な魔力と実際に魔法に使われた魔力の量によって三つのうちのどれかになるんだ」
「あっ! そんなことを前に習った覚え、が……」
と、ここまで話したところで話の結論に思い至ったのか顔色が最初に以前に習ったことを忘れていたことで赤になり、そして原因に思い当たり青へと変わる。
「うん、なので今回は少し魔力が足りなかったんじゃないかなぁ、と思う」
「ご、ごめんなさい。私が送還魔法に飛び込んだからですよね。すいません」
おろおろと顔を青くし、頭を下げつつもこちらをチラチラと伺うという器用なことをするフィーネはとても可愛かった。
それはさておいて、頭に手を乗せるとビクッとして完全に体を固くしてしまうが、気にせずわしゃわしゃと頭を撫でる。
つい撫でてしまうほどの位置に頭があるわけでもないけど、撫でると髪の毛はサラサラで柔らかく撫で心地はそれはもう最高なために、落ち込んでいる所、悪いと思いつつ、ついつい撫でてしまうのはしょうがないと思う。
「っ! ひゃわわわ! なっ、何するんですか!」
「いやいや、俺は謝る必要はないって言ったよ?」
「でも……」
「でもも、しかしもなし! とりあえず送還魔法は失敗したみたいだけど、極寒の地とか灼熱の大地にとか、石の中とかじゃなかっただけマシだろ。それにフィーネも居るから寂しくないし」
と話すと顔色が青から血色が良くなり、わずかに赤く変わるフィーネ。
かわいいのでまた頭をわしゃわしゃと撫でる。
「んんっ! もう! で、では、謝罪はイオリ様の言う通り、この際置いておきます!」
まだ、若干の罪悪感があるようだけれど元の調子に戻ったようだ。
まったく、先に予防線を張っても結局は謝るのがフィーネらしいといえばフィーネらしい。
「落ち着いた? じゃあ、落ち着いたところで今後の予定を決めようか」
「……はい。とりあえず、この世界に関する情報収集、生活するための資金とその方法、私達が就けるような仕事があれば理想的ですね。それと、あとは住む所でしょうか、泊まれるような宿があればいいのですが……。どうしようもなくなったら、野宿するしか無いのでしょうね。私は野宿があまり好きではありませんが……」
最終手段として野宿を考慮に入れるという、なかなかワイルドなことを言うフィーネ。
まあ、魔王を倒すための旅の中で安宿に泊まったり、野宿をしてたからだろうか?
とてもお姫様の発想とは思えないが逞しいことで。
「そうだね。と、その前に、言語習得補助の加護は使ってる?」
「あっ、イオリ様とは話せていたので忘れていました。んー、はい。周りの言葉もわかるようになりました」
そう言ってすこし、はにかみながら話すフィーネ。
フィーネの世界でも『言語習得補助』の加護を持っている人は少なかったが、フィーネは国の特使として他国に行く可能性があったために教会で祈りを捧げる事で覚え、持っていたのだけど……。
まあ、実際はお転婆だったのと、姉が猫可愛がりして特使として他国へ行くようなことがなかった為、実際に加護を使う機会はほとんどなかったようだ。
「んー、じゃあ、まずは仕事探しの前に軽く現状把握をしようか」
話しながら体の中の血管を魔力が駆け巡るような感覚を、無意識にしつつ、だいたいLEDライトぐらいの光量を思い浮かべながら無詠唱で光魔法の『灯火』を起動させる。
「っと、よし! 問題なく魔法は使えるようだ。思ったよりも魔力の消費が少ない気がするけど、この世界は魔力がフィーネの住んでいた世界より濃いのかな?」
と、隣を見ると、飛び跳ねたり体を捻ったり、手を握ったり開いたり、と奇妙な動きをしていた。
フィーネが飛び跳ねているのを見て、自分でも同じように飛び跳ねてみるが、特に以前と変わった感じはしない。
「んーと、何となくですが身体強化に使う魔力が以前と比べ、少なくて済むようです」
「じゃあ、やっぱり魔力が濃いのかな。身体強化してみても、ちょっと俺には違いがわからないな。あと、重力も変わらないような気がするなぁ」
「えっと、重力とはなんでしょう?」
「んー、一言で言うと物体同士が引き合う力のことなんだけど、飛び跳ねても元の地面に戻ってくるよね」
「はい、それが当たり前なのではないですか?」
「うん、その当たり前のことが重力で説明できのだけれど、この重力がなくなった場合、飛び跳ねると元の地面に戻ってこれなくなるんだ」
「うーん? そうですか。よくわからないので、とりあえずは置いておきます」
うん、いろいろ突っ込まれてもそこまで詳しくないために答えに困るから助かった。
「ま、そうだね。俺もうまく説明できないや」
「とりあえず、油断は禁物ですが以前のように動けるのは確認できました」
「魔法も使えるようだし身を守るぐらいはなんとかなるかな。とりあえず、この建物から出た人達が向かっているところに行ってみようか」
「はい。でもどこに向かっているのでしょう?」
「さっき、フィーネにぶつかった人は酒盛りするって言っていたので、先に冒険者協会みたいなところで換金するんじゃないかな?」
「では、そこへ行きましょうか」
と、話がまとまったところで、冒険者協会(仮)に向かって歩き出す。
ここまで、フィーネと話しながらも、それとなく周りを見ていたけれど、俺たちに不審者を見るような目や、奇異な目を向ける人も居なかった。
格好もとくに周りと違い浮いていることもなさそうだ。
歩きながら、あまり、きょろきょろと見回して周りからお上りさんみたいに見えないように気を付けながら辺りを見回すと、たまに文字が目に入るが……どうやら、それらは問題なく読めそうだ。
「イオリ様、文字は問題なく読めるようですね」
「そうだな、この感じからすると、文字を書くことも問題なさそうだと思う。加護様々だな」
フィーネと、そうですねと話しながら歩き、しばらくするとツルハシと剣が交差した意匠の看板が掲げられている建物が目に入る。
目的地は思ったよりも近くにあったようで、おそらく、あれが冒険者協会(仮)なのだろうが、なぜ剣と盾とかではなくツルハシと剣なんだろうか?
「どうやら、ここが冒険者協会? みたいですね」
「そうみたいだな、んじゃあ、お金を稼ぐために、中に入ってさっさと登録しようか」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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2016/07/06 ルビが上手く振られていなかったのを修正




