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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第十九話 イオリと鮮度抜群な魔道具

「ほれ、これが出来立てほやほやの魔道具じゃ。一般的にはこの後で調整が入るのじゃが、まあ儂は作っている最中に終えてしまうからの」


 儂は優秀じゃしの、と言いながら魔道具を無造作に俺へ渡してくる。


「へーこれが出来たばっかりの魔道具か……って、別に料理じゃないから暖かかったりはしないよな」


 となんだかよく分からないことを言いつつ、手渡された魔道具をこっそり『鑑定』で確認する。


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名称:冠水瓶型(ピッチャー)飲料水生成魔道具

通称:飲み水でるでる

状態:未起動

耐久度:100/100

希少性:コモン(一般)

魔力消費:起動時消費五〇、継続消費なし

概要:魔力を消費し自体に無害な水を一定量発生させる。

詳細:

持ち手の上部にある突起部分を押すことで、人系種族が口にしても問題ない品質の飲み水を瓶の中に生成する。

二〇回利用するごとに耐久度は一ずつ減り、耐久度の残りが少なくなるにつれ生成できる水の量も少なくなる。

耐久度が完全に無くなると水の生成ができなくなる。

魔道具の材質は木材に樹脂を混ぜたものを削り出したものである程度の衝撃に耐性があるため丈夫で、また、劣化もほとんどしないため長持ちする。

製作者ライア独自の工夫により魔力消費が半分になっているため希少性はコモンだが、その中でも最上位と言ってよいほどの性能がある。

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 なるほど、はたから見ると適当に作ったように見えるが、『鑑定』で調べるとコモンの、それも最上位の階級として記載がある物をさくっと作れるとは、さすがミンティアナさんが推薦する魔道具職人だけあるな。

 まあ、借金の形に店の売り物を全部持ってかれてるって話を聞いたときは、来る店を間違えたかと思ったのは、ライアさんには言えないな。

 どうやらこの世界の魔道具には、名称以外に誰が設定するのか通称で呼ばれる名前、『離脱くん』とか『中型荷物(はこ)べーる』などが設定されているけど、なんというか変わった名前をつけるのが流行っているのか?

 ちなみに、『鑑定』に書かれている、希少度と言うのは、ジャンク(がらくた)マスィヴリ(大量)コモン(一般)クラフト(工芸)レア(希少)レガシー(遺物)レジェンド(伝説)、の順で貴重なものを表している。

 ただ、別に世界に一つしかなくても、ジャンク(がらくた)ジャンク(がらくた)なので、その場合は、ただのジャンクと書かれているか、ユニーク・ジャンクと『鑑定』の結果に書かれる。


「へー。ほー。ふんふん、なるほど、なるほど」


 ライアさんから手渡された水差しの形をした魔道具を、ひっくり返してみたり中を覗いてみたりと、じっくりと観察してみる。

 『鑑定』の結果では、木材に樹脂を混ぜたもので作られていると書かれていたけど、表面は滑らかだけど光を反射せず、色も漆黒に近いぐらいの黒色なので、一見しただけでは木材が使われているとは気がつかないんじゃないだろうか。

 ただ、さすがに木材が使われているためか、手に持った感じは、黒色の外観から予想した重さを裏切り、予想以上に軽かったために、木材が使われていると言われれば、なるほどと納得してしまうのは間違いないと思う。

 魔道具の構造は、外側部分と内側部分を組み合わせて作られていて、魔道具の要の魔法陣は内側部分の外側、取っ手のついている外側部分に接触する表面の側に描かれていた。

 内側部分は、まあ特に珍しいところはない普通の瓶の形をしていた。

 ライアさんは魔法陣を瓶の表側、つまりは内側部分の表面に刻んでいたってことは、底から水が出てくる感じなのかな。

 逆に外側部分は取っ手の部分にスイッチがあったり、精製された水を注ぎやすいように口の一部が変形していたり蓋を取り付ける部分があったりと、装飾としてはほとんど何もないに等しいけど、機能的には十分すぎる形をしている。

 テーブルの上にはこの水差しに取り付けるのか蓋がいつの魔にか用意してあった。


「えっと、これ使ってみてもいいですか?」

「ん? ええぞ、取っ手部分の出っ張りをポチッと押せば……お主、せっかちじゃの」


 ライアさんが使い方を言い終わる前に、待ちきれずに思わず取っ手にあったスイッチを押してしまったが……後悔はしていない、していないったらしていない。

 俺の手の中にある水差しの形をした魔道具の取っ手の上側に付いていたスイッチを押すと、湧き水が湧くようにこんこんと瓶の底から水が湧き出てきて、あっという間に八分目まで水が溜まった。

 この魔道具はそんなに大きくないし持ち運びに便利だし、なるほどね、これは便利だ。


「あっという間に、便利な魔道具が出来たしまいましたね、イオリ様」

「そうだな。まあ、普通はこんなに簡単には魔道具は出来上がらないんじゃないかな。ライアさんの魔道具職人としての腕がいいんだよ、きっと」


 手に取った魔道具を返そうとライアさんの方へ目を向けると、嬉しそうに何回も頷いているのが見えた。

 これは、褒められたのがよほど嬉しかったのだろうか。

 俺はほっこりと生温かい視線を向けつつ、手に持っていた魔道具をライアさんへと手渡すと、見られていたことに気が付いたのかすこし恥ずかしそうにしながら魔道具を受け取った。


「ゴホン。えっとじゃな、普通は、魔法陣を刻み多少の調整をした後は、装飾をしてから店に置くのじゃが……、おっと、蓋を取り付けていなかったな。まあ、装飾とかはええじゃろう。ほれ、この状態で、そうじゃな、10セタでどうじゃ?」

「え? えっと、10セタですか? ちょっと安すぎないですか?」

「ふむ。なぜ安すぎる(・・・)と思ったかぜひ聞きたいものじゃのぅ」


 ニヤニヤと意地の悪い顔をしながら、言葉尻を捉えて、そう聞き返すライアさん。

 そういえば、なんの魔道具かライアさんは言っていなかったな。

 『鑑定』か何か、魔道具について調べる手段を持っているのか、カマをかけたってことだろうか?

 まったく、面倒な人だと内心は苦虫を噛み潰したようになっているけど、それを顔に出さないぐらいのことは出来るつもりだ。

 さてと、なんと答えたらいいものかな。


「えっと、この店に来る前に、ミンティアナさんの雑貨屋さんで魔道具付きのテントを購入したんですよ。で、その値段から判断したんですが、間違ってましたか?」

「ほうかほうか。ミンティアナの店の値段からとはのう。まあ、確かに間違っておらんよ、この値段は間違いなく安すぎる。まあ、ミンティアナからの紹介があったんじゃし、今は借金で首が回らんでの、完成品を置いとくと持ってかれるのじゃ。そんなわけで購入してくれると生活の足しにできるので嬉しいんだがのう」

「まあ、購入するのは問題ないですが、支払いはカウンターの上の箱でいいですか?」

「おっと、待つのじゃ。カウンターの『料金受け取りくん』で払うと借金取りに持ってかれるのじゃ」


 へー、組合カードを使って支払ったときに使った箱にも名前がついてるのか……ってまあ、通称はともかく、名前がついているのが普通なんだよな。

 どれどれ、と『料金受け取りくん』を『鑑定』で調べてみる。


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名称:全業種組合カード対応卓上料金決済端末魔道具

通称:料金受け取りくん

状態:起動済

耐久度:79/100

希少性:コモン(一般)

魔力消費:起動時消費三〇、継続消費なし

概要:全ての業種の組合カードを利用し物品の料金を支払うことが出来る。

詳細:

全ての業種の決済機能がある組合カードに対応した卓上型の料金決済端末。

端末に販売者の組合カードを挿入した状態で、購入者のが持つ決済機能のあるカードを(かざ)すと販売者が予め指定した料金を購入者のカードから引き落とす。

耐久度が無くなると決済が出来なくなる。

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「ん? じゃ、どうやって支払いをするんだ?」

「そこでじゃ。カードをこのカードの上に載せてくれないかのう」


 そう言うと、なにやら黒いケースに入ったカードをテーブルの上にのせ、ニンマリと悪い顔で笑うライアさんがこちらを見上げていた。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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