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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第十八話 イオリと魔道具の作り方

 どうやら魔道具の作成の前に、ライアさんが魔道具の仕組みについて説明をしてくれるようだ。

 あまり、一般的ではない感じの話みたいなので、ここは一字一句覚えるつもりで聞いておこう。


「まず、魔道具は大きく分けると、魔道具を起動するためにのみ魔力が必要な物と、起動時に加え魔道具を使用している限り魔力が必要となる物と、この二種類あるのじゃ。まあ、この分け方も人によっては継続的な魔力の消費が零と考えることで一種類だと分類している者もおるのじゃが」

「なるほど。起動時の消費が存在しない魔道具はない、ということかですか」

「そうじゃな。見かけ上は消費が無いように見えても、実際はごく微量に消費するか、そもそも魔道具はすでに起動済みのために消費しない、ということじゃな」


 そういえば、俺が結界で止めた『試作爆弾』は起動シーケンス実行中と『鑑定』で調べた時に書かれていたな。

 これがおそらく『鑑定』で魔道具を調べた時に、調べた結果結果として表示される状態の一つなのだろう。

 今の話からすると『試作爆弾』は、前者の起動時にのみ魔力を消費する魔道具なのだろうな。

 まあ、爆弾が起動後も継続的に魔力を必要とする、とかなったら何の冗談かと思う。

 ようするにそういう類の物は、誰かが爆弾に張り付いて魔力を与え続けないといけないって事だから、普通はそんな物を作ったりはしないだろうな。


「それでじゃ、結局の所、起動や継続的に消費される魔力は何に使われるかじゃが。これじゃな、この魔道具に刻まれている魔法陣に利用されるのじゃ」

「なるほど。……ってその辺りは私達に見せてもよろしいのですか?」

「構わないのじゃ。今の時代、魔道具の作成は作業が地味に見えるのか、なかなか職人となるどころか、魔道具の作成に興味を持ってくれる人すら少ないのでな。それにな、新たに入ってくる者が少ないのも一因で魔道具の業界自体が停滞しておるのでの。これを見て興味を持ち、新たに魔道具を作る職人が出て来るのなら、ぜひとも魔道具組合に引き抜きたいぐらいなのじゃ」


 うーん、魔道具の制作というのは一種の伝統技能みたいなものなのだろうか?

 たしか伝統技能も後継者不足で技術を引き継ぐものが居ないとかなんとか、技術そのものをどうやって後世に伝えるか、悩ましい自体になっていると聞いた覚えがある。

 まあ、それはともかく今は、目の前の魔道具に集中、集中。

 ふむふむ、なるほどなるほど。

 魔道具の中には魔法の発動時に使用する魔法陣みたいなものが刻まれていたんだな。

 ぱっと見た感じでは、魔道具の魔法陣も、俺の知っている魔法陣とそんなに違いがないように見えるけど……応用できるのだろうか?

 いかん、いかん、応用云々は魔道具の基礎が出来てからの話だな。


「一般的な魔道具は、この魔法陣を核にして、それを刻んだ魔道具本体、そして魔法陣と利用者を繋ぐための導線、これはミスリルの細糸、通称ミスリル線と言うのじゃが、これを使用しておる。これらを組み合わせて作られるのが魔道具と呼ばれておるものじゃ。まあ、何事にも例外はあるがの」

「その定義からすると剣の形をした魔道具もあるのでしょうか?」

「ふむ、そうじゃな。剣を魔道具として利用できるようにしたものは、正式には『剣型魔道具』と呼ばれておるが……。まあ、一般的には魔道具以外の仕組みで動作する剣と一緒くたにして単に『魔剣』と呼ばれておるようじゃの」

「なるほど、剣型の魔道具、それが『魔剣』ですか。えっと、一般的ではない魔道具というと、例えばどんなものがありますか?」

「そうじゃな、建物に組み込まれたもの。ほれ、ダンジョンに入るようになると利用するポータルがあるじゃろ。あれも、広い意味では魔道具の一種じゃな。あとは、人体に(・・・)魔法陣を刻んだもの(・・・・・・・・・)。まあ、狂った奴じゃったがあやつが言うには魔法陣との距離が零だから効率が良いに違いない、みたいなことを言っておったわい」


 なるほど、たしかに俺とフィーネがこの世界に来た時に見た建物内に魔法陣が描かれていたっけ。

 あれがきっとライアさんの言うポータルなんだろうけど、そのポータルも魔道具の一種と考えておけばいいのか。

 そうなると、この世界では色々なものが広い意味での魔道具として含まれているようだな。

 あと、話に出てきた魔道具ではない魔剣と言うのが、どんな仕組みで動いているのか、気になるといえば気になるけど、とりあえず今は記憶の片隅にでも置いておいて、後で調べてみようかな。


「まあ、仕組みの話はこれでいいじゃろう。ほれ、これが何も刻まれていない状態の魔道具じゃ。これ自体は他所から手に入れたものじゃがの。まあ、今の時点ではただの瓶じゃから世間一般では魔道具としては言わないじゃろうな。地味じゃがよく見とれよ。魔法陣が完成した瞬間が見ものじゃ」

「はい」


 そう言い、前掛けの上に、瓶の形をしたまだ魔法陣の刻まれていない魔道具を置いたライアさんは、無造作にテーブルの上に置いてあった道具箱からペンの先に針が付いたような細長い道具を手に取り、一瞬の迷いもなく魔法陣を一定のリズムで刻み始める。

 手に持っている道具がほんのり光っているが、これは魔力を込めながら刻んでいるのかな?

 しばらくすると、道具に加えて魔法陣自体も光り始めたんだけど……危なくないのだろうか?


「えっと、なんか魔法陣が起動しそうになっているんだけど……。慌てていないってことは多分大丈夫なんだろうけど、本当に大丈夫なのか?」

「ほう、おぬし、良い目をしているのう。儂の魔道具に使われる魔法陣は少しアレンジしてあっての、魔法陣を刻んでいる最中に魔力を通すと起動寸前の状態を維持するのじゃ。まあ、これは儂だけのオリジナルじゃから、これについての詳しい説明は省くのじゃ」


 魔道具技術のすべてが開放的かというと、どうやら基本的な部分は公開しているけど、その先の職人技などが秘中の秘、すまりは秘伝、というわけか。

 まあ、魔道具に興味があるとは言っても、今の時点では何処まで手を出すかはまだ分からないから、とりあえず頭の片隅にでも置いておこう。


「ほれ、注目じゃ。魔法陣を刻み終わると……、このように魔法陣自体が一部を残して魔道具に溶け込むのじゃ。どうじゃ面白いじゃろ?」

「これは……、たしかに面白いですね、イオリ様。しかし、なぜ一部が残るのでしょう? 全部が魔道具に溶け込んだほうが魔法陣自体が傷などに強くなりそうな気がするのですが」

「いや、これはたぶんだけど、残ってしまうのではなくて、残しているんじゃないかな。意図的に」


 正解を聞くように、口に出さずにライアさんの方を見ると、面白いものを見つけたように口元を綻ばせ、こちらを見ている瞳と目があった。


「ふむ。ふむふむふむ! なかなかの観察眼と言ったところじゃな! お主の言う通り、残した部分は魔法陣としての機能はなくての。要するに、だ。この魔法陣は儂が刻んだ、儂が確かに作成した、という印なのじゃ。魔道具職人としては最低限ここまで出来て、やっと一人前なのじゃな。これが出来ないと一人前とは認められんで、半前として扱わられるのじゃ」

「なるほど、しかし、なぜその印が『ハンマーと花びら』なんだ?」

「ああ、それはじゃな、儂がドワーフだからじゃな」

「なるほど。ドワーフ族の女性は一見した感じでは子供のようだけど、すごい力持ち、と聞きました。納得です!」

「納得って……」


 まあ、薄々気がついてはいたけどやはりドワーフ族だったんだな。

 たしかに、この姿では子供にしか見えないから、イケナイ趣味の人たちにとっては手に入れたいシロモノなんだろうな、たとえ危険だとわかっていても。


「なんじゃ、ジロジロ見おってからに。そんなに珍しいのか?」

「あー、すいません。ドワーフ族の女性を見るのは初めてで」

「ふん、まあよいわ。ジロジロ見られるのは馴れておるからの。ふむ、こんな感じかの。ミスリル線は予め魔道具に這わしておるので、これで完成じゃ」


 と、軽い感じで、魔道具の魔法陣を刻んでいた部分とその他の部分を、カポッと嵌めると魔道具が完成したようだ。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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