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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第十七話 イオリと借金まみれの魔道具店

 基本はほとんどの店が表通りにあるらしいが、これから向かう先の魔道具店は少し路地に入った所にあるらしい。

 これはミンティアナさんに地図を書いてもらわなければ見つけられなかったな、絶対に。

 向かった魔道具店は、一見しただけでは民家にしか見えないが、ドアの部分に申し訳程度に店名が書いてあった。


「なになに? 『ライア魔道具店』? 一見さんお断り!? 商売する気なさそうだな」

「ま、まあ、なにか理由があるのかもしれませんし」


 なぜか、フィーネがフォローに回ってるが……。

 うん、まあとりあえずは入ってみることにしよう。


「ごめんくださーい」

「けーんな! 借金取りなら一昨日(おととい)来やがれ!」


 返事と同時に何か大きな物が飛んできたので、とっさに障壁を展開する。

 もはや前の世界のあれこれで、悲しいことに突然のことにも反射的に対処ができる状態になってしまっているが、まあ、対処できずにひき肉になるよりはいいけど。

 ちなみに、この障壁は物理も魔法もどちらにも対応できてとっても便利!


「うわっ! あぶない」

「イオリ様!」


 飛んできた物が障壁に当たり、そのまま弾かれたタイミングで澄んだ音が、そしてその後すぐに鈍い音が鳴り、大きな物が地面に落ちる。

 その落ちたものを、よくよく見るとでかいハンマーだったようで、少し地面にめり込んでいる。

 いやいや、こんなものを投げるなよとか、よくこんな重そうなもの投げれたなとか、当たりどころが悪ければ怪我どころでは済まなかったんじゃないのかこれとか、思っていると投げた本人から反応があった。


「ちっ! 仕留め損ねたか!」

「いやいや、仕留め損ねたか、じゃないと思うんだけど。はい、これ紹介状なので、ちゃんと中身を見てくれ」

「ふむ、なんじゃ。借金取りかと思ったわい」


 入り口からはちょうど隠れていたためこの店の店主の容姿がわからなかったが、紹介状を確認するために入り口まで出てきたその人は、話し方に似合わず幼い姿をしていた。

 まあ、乱暴な言葉遣いをしているにしてはやけに高い声だなぁとは思っていたけど、見た目が幼女とは、うーん、あのハンマーは本当にこの店主兼幼女が投げたのだろうか?

 入り口までトテトテと歩き姿を見せた店主兼幼女は、こちらを見上げて首を傾けている。

 うん、もう幼女店主と密かに呼ぶことにしよう。


「なんじゃ? ほれほれ、はやく紹介状を渡さんかい」

「あ、はい。どうぞ」


 封筒の裏側、丁度封蝋で封をしてある辺りをしげしげと見た後、封を解き中の紹介状をふむふむと頷きながら紹介状を確認する幼女店主。

 ふと隣を見ると、おいおい、フィーネがまたキラキラした目をしているぞ。

 あっ、フィーネが堪え切れずに少し屈み、幼女店主の頭をなでなでし始めた、と思ったらその手を鬱陶しげに振り払い威嚇をしだす。

 なお、フィーネは悲しそうな顔をして頭を撫でていた手を見ている。


「ふん! まったく、失礼な奴らだな。こう見えても成人していると言うに」

「それは……失礼しました。えっと、あなたはライア魔道具店の店主さん、でよろしいでしょうか?」

「おう、そうじゃ、ライアとは儂の事じゃ」


 どうやら、この幼女にしか見えない人物がここの店主であり、ミンティアナさんから紹介のあったライアさんであるらしい。


「あっ、私はフィーネと言います。こちらは」

「イオリです」

「そうかそうか。はー。どいつもこいつも、儂を子供扱いしよってからに、とうに成人してるおるんじゃがのー。それもこれもドワーフの……ぶつぶつ」


 どうやらトラウマを抉ってしまったようで、小声で何か言いながら地面に文字を書きいじけている。

 そんな子供っぽい反応をするから、皆から子供子供と言われているんじゃないだろうか。


「えっーと。成人云々……は置いておいて、魔道具を見せてもらえますか? ぱっと見た限りほとんど置いていないようにも見ますが」


 そう、いろんな意味で衝撃的だったけど、そもそも店の中に本来あるべき商品が店の隅々を見てみても全く無いのだ。

 これは話に聞いたことがある、店主に気に入られないと見せてもらえないってやつなのだろうか、と思っていると……。


「あー、少し前に借金の(かた)にほとんど持って持ってかれたのじゃ。まったくタイミング悪いのー。あんたらも」

「うーん、そうですか。ミンティアナさんから腕がいいと聞いていたんだけど残念。魔道具がないのなら帰ろうか?」

「そうですねー。まだ少し早いですが帰りましょうか」


 腕が良い、と口にした瞬間にピクリと眉が動いた気がしたんだけど、気のせいか?

 あー、魔道具見たかったなー。前の世界だとほとんど魔道具なんて見れなかったし、見かけても居ない気がするし、楽しみだったが、物がないならしょうがないか。

 と、気分が少し沈んだ状態で店から出ようとしたところで、ライアさんから声がかかる。


「まあ、待つのじゃ! せっかく紹介状を持ってきたのに、このまま返しちまったらミンティアナに泥を塗ることになるの。なーに、幸い素材だけは揃ってるから魔道具を作るところを見ていくのじゃ」

「それはぜひ! 魔道具を作るところを見学できるんですね! 本当ですね!」

「わかった、わかったから、そう興奮するでない。準備するからとりあえず中で待っててくれ」

「良かったですね、イオリ様」


 とりあえず、魔道具は見れなかったが、なんと、魔道具を作るところを見学できるらしい、これはワクワクが止まらないな。

 幼女店主改めライアさんが、先程まで居たらしい休憩室っぽい部屋で長椅子に座って待っていると、準備ができたのか休憩室の奥の部屋からひょっこり顔を出し、こちらへ来るように伝え奥へ消えていった。

 準備の最中に着替えたのか前掛けを付けたライアさんに呼ばれたので、俺とフィーネは連れ立って奥に行くとそこは、何というか研究室っぽい部屋だった。

 部屋の壁際には棚があり、その中には瓶に入れられた試料か何かや、好物っぽいものが入っている。

 窓がると思われる壁側はカーテンが閉まっているために、多少薄暗く感じるが、天井には明かりが灯っているので、暗いと言っても手元が見ないほどでもない。

 部屋の中央には作業台らしきテーブルがあり、その上は壁際の棚とは違いごちゃごちゃとしていて、とても整理がされているとは思えない状態だ。


「さて、実際に魔道具を作って見せる前に、魔道具についてどのぐらい知ってるかの? まあ、見ているだけでも面白いと思うのじゃが、前提知識があるともっと面白いと思うのじゃ」


 そう言うと、どっしりと胡座をかいて座る姿は、幼女店主ではなく堅物の職人といった感じで貫禄がある。

 まあ、成人しているので幼女ではないのだけど。


「ほとんど知らない、と言ってもいいかもしれない。知っているのは魔道具に魔力を与えると物を運んだりいろいろできる、ぐらいかな」

「そうですね、この街にきてから、私もイオリ様もまだほとんど魔道具を見ていません」

「ふむ、まあ、一般的にはそのぐらいを知っていれば十分じゃが……。おぬしは魔道具に興味があるんじゃろう? それなら仕組みについても簡単に教えておくのじゃ」


 ふむふむ、一般的には『鑑定』で見た内容が分かればいい感じなのか。

 まあ、スマホとかパソコンとか中身の仕組みは知らないし、そこまで興味もないから、まあそれらと同じ事なんだろう、きっと。

 しかし、魔道具について興味があることがわかった途端、対応も先程に比べてフレンドリーになった気がする。

 これはもしかしなくても、魔道具馬鹿というたぐいの人種なのだろうか、と勝手に想像してみる。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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