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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第十六話 イオリと弁当屋さん

「ほれ、お前さんのソードはピカピカになったぞ。まあ、なかなか武器を取っ替え引っ替えは無理かもしれんが、たまに使ってやりゃーこのソードも喜ぶってもんよ」

「ありがとうございます。まあ、予備の武器として使えるようにはしておきます」

「それで、解体用のナイフはこれにしようかと思います」


 フィーネがおずおずとカウンターの上に載せたのは、先ほどちょっとはしゃぎすぎた中でいろいろ試したその結果で選んだ、まあ普通のナイフが二本だ。

 ほぼ同じ形だけど、フィーネ用に選んだものは、俺用のに比べて気持ち小さめの、一番握りやすいものにした。

 俺用のナイフも同じような基準で選んだ、まあ、柄の色はつや消しブラックだけどな。

 フィーネのは少し明るめの茶色だ。


「ふむ、この二本なら合わせて180セタだな」

「はい、じゃあこれで」


 ここでも大活躍の組合カードを箱に(かざ)すと、景気の良い音がなる。

 今日だけで一体いくら使ってしまったのだろうか、確認するのが少し怖い。


「おう、毎度あり、だ。次来るなら、今の時間なら人が少ないからゆっくりと店の中の物を見れると思うぜ。それで、何か買ってくれや」


 わはは、と豪快に笑うウルゴさんを背にして、店を出た。

 えっと、あとは食料と魔道具屋、かな、魔道具屋がすごく気になるといえば気になるけど、まあ、最後の楽しみに取っておこう。

 空間魔法を使えない探索者や、食料を少なくしてもそこまで変わると思えないけど、使えたとしても収納できる量が少ないためにすこしでも節約したい探索者は、乾燥させたパンや塩辛いベーコンなど、日持ちがして量も減る乾物を、主にダンジョン内へ食料として持ち込んでいるが、どうしてもマシなものを食べたいという涙ぐましい努力と言う名の最後の抵抗で最初の一日分だけは弁当を持って行く人も少なくないらしい。

 逆に、俺たちのように『収納』や『倉庫』など、物をしまっておける魔道具を持っていたりする探索者は、比較的日持ちのしやすいものを入れてダンジョンに潜っているために随分と他の探索者から羨ましがられているらしい。

 ちなみに、俺の使っている魔法は、倉庫と名前が付いているが俺自身の魔力が桁違いなために収納容量はすくなくとも惑星一つ分は入るだろうと予想され、収納したものに関して時間経過の設定が可能、しかも収納物の一覧を表示する管理画面も存在するが、ここまで便利なのはフィーネ曰く他に聞いたことがないらしい。

 一応は意思のある生き物も時間の進みが等倍の状態で相手の明確な同意の意思がある場合に限り収納が可能だけど、中に入った人、まあフィーネなんだけど、そのフィーネ曰く真っ暗でしかも何も聞こえず心細く怖かったらしい。

 この、意思がある相手の明確な同意、が曲者で口では同意していても忌避感があるとだめらしく、フィーネも二回目以降は、口では大丈夫と言いつつ恐怖心が勝るのか結局は収納ができなかった。

 そして、ちょっと裏技的な使い方になるが、単なる岩などの物か擬態をしている意思のある生き物、要するに魔物かを識別するために、『倉庫』で収納し、即時に取り出すことで判断することができたので、『鑑定』がまだ『初級鑑定』だったために、対象によっては抵抗(レジスト)されていた時期に活用していたことがあったが面倒くさいので二度とやりたくない。

 とまあ、そんなことを雑談する傍らで考えていると、どうやら運良く弁当屋らしき店が見えてきた。

 俺たちは明日の朝に弁当を調達してからダンジョンに潜るつもりだったけど、ついでなので弁当を買っていくことにした。

 俺たちに関しては別にダンジョンに潜る直前に弁当を購入しないで桃内なかったりするけど、それもこれも『倉庫』に入れておけば時間経過無しで保存できるのでいつでも出来たての状態が食べれるからだ。

 さて、基本的にはこの弁当屋という職種は朝方が稼ぎ時で、それ以降の時間に売れ残った弁当などを売る傍らで翌日の仕込みをしているみたいだが、何にでも例外はある物で、この店は朝方以外の時間帯を稼ぎ時としている数少ないお店らしい。

 どうやら、店主の類まれな感というかスキルでその日の仕出しの量を決めてうまく利益を出しているようで、そんなに儲かるならと、手を出した他の店が相次いで撤退する中、競争相手も少なく、いまでは老舗と言われるまでになっている。

 まあ、老舗と言っても創業十数年ぐらいみたいだけど。


「こんにちは、どんなお弁当がありますか?」

「今日のおすすめはオーク肉のソテー弁当だよ! まあ、オークの肉が格安で大量に手に入ったから買ってくれると嬉しいね」

「って、ここでもオーク肉なんだ。あとなんかすごく安いな」

「そうですね。私もちょっとこれは安すぎる気がします」


 そう、いくらオーク肉が大量に卸されると言っても他の弁当と比べ、半分から更にその半分の値段で売られている、というのはちょっと異常ではないかと思うけど、普段を知らないので異常の度合いがよくわからないな。

 まあ、お金を稼がないといけない現状で、食料が安いのであればそれに越したことはない、と言えなくもないけど。


「鮮度はばっちりだし、安いからってなにも問題ないから安心しな。あまりにも大量に卸されるので処分にも困ってるところだよ。精肉組合の連中も、今なら十倍の量が付いてきます、とか何を考えているのやら」

「ま、まあ、節約したい現状で食料が安いのは私たちにとって有難いことですね」

「そうだな、オーク肉ソテー弁当にオーク肉しぐれ煮弁当にオーク肉ステーキ弁当、どれもこれもうまそうだな」


 これは、もう買うしかないだろう、ってところで問題はどのぐらい買うかだな。

 ちょっと、フィーネと小声で相談しようか。


「うーん? ダンジョンに潜る分だけでいいか、と思ってたけど、もっと買っておいても『倉庫(warehouse)』に保存して置けるよな」

「そうですね、あまり大量に買っても借金が増えるだけなのでできればある程度で抑えておきたいですが」

「が?」

「オーク肉ステーキ弁当美味しそうです、じゅるり。おっと、これは私としたことが」


 まあ、確かに美味しそうだし、次もこれらの弁当が買えるかわからないからまとめて買っておくのも手だな。


「じゃあ、三食十日分を二人分ぐらいでどうだろう?」

「そうですね、そのぐらいで十分だと思います。……全種類購入できそうですし」


 最後の方がちょっと聞き取れなかったけど、とりあえず、大量に弁当を買う方向で纏まる。


「そうそう、ここだけの話、これ以上値段が下がると儲けがないから、むしろ廃棄処分したほうが安上がりだね。なので、これ以上はほとんど値段が下がらないと思って問題ないよ」

「あー、結構安いと思ってましたが、そこまでですか」


 そうなんだよねー、と言いながらポーラさんは若干の苦笑を浮かべる。


「では、これとこれとこれをそれぞれ4つで……」


 と、弁当を選ぶのはフィーネに任せた結果こうなった。


・オーク肉そぼろ弁当が、四つ

・オーク肉ソテー弁当が、四つ

・オーク肉しぐれ煮弁当が、六つ

・オーク肉かつ弁当が、八つ

・オーク肉生姜焼き弁当が、六つ

・オーク肉角煮弁当が、六つ

・オーク肉巻き爆弾おにぎり弁当が、四つ

・オーク肉唐揚げ弁当が、八つ

・オーク肉コロッケ弁当が、六つ

・オーク肉ステーキ弁当が、八つ


 合計で六十食分、180セタだけど、これは少し買いすぎたかもしれない。

 しかし、肉ばっかりなので茶色いのは仕方がないとはいえ……これはひどい。


「ありがとうございます」

「はいよ、またご贔屓にね」


 大量に積まれた弁当を支払いが済み次第どんどんと『倉庫』へと収納し、弁当屋さんを後にする。

 さて、最後はお楽しみの魔道具店だ。


「どんな魔道具が売ってるんだろう?」

「楽しみですね、イオリ様」


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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