第十五話 イオリとおかしな鍛冶屋
「おや〜? 確認は済みましたか〜?」
「はい、ミーナちゃんがしっかり説明もしてくれたのもありますが、気に入りました。特にこれと行った問題もなかったので買いたいと思います」
「本当に、ミーナちゃんはお利口さんな娘さんですね」
フィーネは、まだミーナちゃんにメロメロなようで、頭をなでなでしながらミーナちゃんを褒めている。
「ミーナ、お手伝いありがとね〜」
「あいっ!」
満面の笑顔をミンティアナさんに向けると、びしっと音がしそうな感じで手を伸ばし返事をするミーナちゃんは褒められて嬉しそうだ。
この街では、すべての店で組合カードでの支払いが可能らしい。
この店もその例に漏れず、値段の確認をして、組合カードを四角い箱に翳すと澄んだ鈴の音色がして支払いが済んだ。
ちなみに、テントと炊飯道具が合わせて325セタだったから、多分今日一番の買い物と成ると思う。
まあ、値段だけを見ると結構な値段だけど法外ってことはなく、まあ相応の値段ではないかと思う。
ミンティアナさんから地図と魔道具店への紹介状をもらった俺たちは、お礼を言って店を出て、次なる店つまりは鍛冶屋に行くのだった。
鍛冶屋に向かう途中に、防具屋をミンティアナさんのお店から数件先に見つけたので入ってみることにする。
「ふーん、まあ店構えは普通だな。基本的に大体のお店は大通りに面したこのあたり一帯にあるみたいだ」
「そのようですね。この街も、それほど大きいというほどではないので次来る時も迷ったりせずに着けそうですね、イオリ様」
とりあえず、防具屋に入り簡単に中を確認した俺達だけど特に気になるようなものは置いていなかった。
店の雰囲気もまあ普通に防具屋さんだった。
「先程のお店。特にこれと言った目ぼしい物はありませんでしたね、イオリ様」
「そうだな。まあ、売っているもの自体は値段相応だったけど、掘り出し物があるって感じではなかったかな」
早々に防具屋を出て、次なるお店。
そう、鍛冶屋に向かうのだ。
と思ってたけど途中に古着屋があったので、こちらも確認しておこう。
「へー。やっぱりそれほど違いはなさそうだな」
「そうですね。ただ、生地は古着ってところを差し引いても、それほどでもない気もします。中に入っている上等なやつだと目立つかもしれませんね」
「うーん。やっぱり、少し買っておくか?」
「まあ、数着買えば十分だと思います」
と、まあ結局は予定外に古着を数着買ってしまったのだった。
古着屋を出てさらに数件先、ミンティアナさんに教えて貰った鍛冶屋さんにようやく着いた。
店構え自体は周囲の店とそう大して変わりがなく、特に防具屋と大きく変わっているようなことはなさそうだ。
ミンティアナさんは、何故このお店を面白いと言って勧めてきたのだろうか、と思いながら店に入る。
「これは、なんかすごいですね。イオリ様」
「そうだな、何というか、すごいな」
何がすごいって店内に武器が生えていた。
そう、まさに生えている、と言った方がいいぐらいに壁などに武器が刺さっている。
これは、驚かないほうが無理だろう。
普通の店は武器やナイフをケースに入れて展示したり、壁に掛けて展示していたり、まあ、箱に無造作に入れてある場合もあるかもしれない。
この店では、それらのお店とは違い、天井や壁、テーブル、果ては床にと、ありとあらゆる物に武器が生えている、いや刺さっている。
剣などが傷んだりしないのだろうか逆に心配になるほどだ。
「らっしゃい! って見ねー顔だな」
「俺はイオリと言います」
「はじめまして、フィーネと申します。よろしくお願いします」
「おうっ! ウルゴの武器屋へようこそ、だ! ソードやナイフのたぐいの整備も承ってるぜ!」
そう言った店主のウルゴさんはドワーフ族らしい。
身長はミーナちゃんより少し高いぐらいだが、ドワーフ族の男性はがっしりとした体格で髭もじゃが特徴のようだ。
ちなみに、このドワーフという種族は成人男性も成人女性も身長が一般的な人系種族の半分程度しかなく、例外はまあ居るらしいけど大体が男性は筋肉もりもりマッチョの髭もじゃで、女性は幼女のような幼い容姿だけどその見た目に反してドワーフの男より力持ちということらしい。
どうやら、ドワーフ族の男性は、もとから筋肉もりもりではなく女性に負けないために筋肉をつけているらしい、幼女のような見た目で筋肉もりもりな男性と変わらないぐらい力が強いって反則なんですけど。
ドワーフ族の女性は成人しても幼い容姿なのでその筋の人たちによく攫われたりしたらしいけど、まあ、幼い容姿でも力は強いので普通に返り討ちにして自力で逃げ出したり、果ては組織ごと壊滅とかをしたらしい、うん、逞しいね。
フィーネも似たようなものといえばそうかもしれない、見た目詐欺だし。
そんなような雑談をしつつ、店内を見て回る。
「こちらの店にはいろんな種類のナイフがあるってミンティアナさんから聞いたのですが解体用のナイフはどんなのがありますか?」
「なんだ、ミンティアナの紹介か。ふむ、解体用のナイフか。だとするとこの辺だな。基本的な形のナイフが大きさ違い数種類、特定の魔物に特化したナイフが数種類。あとは、試作で作ったいろんな形のナイフ、だな」
なるほど、さすが武器屋といったところか。
先が尖り両方に刃が付いた基本的な形のナイフ、それが刃の部分の長さや全体の大きさが違うものが数種類、うん、壁から生えてる。
「そうだ、お二人さんはこの店は初めてだったな。ミンティアナからの紹介かつ初回に限り武器の整備を無料でやってるんだがどうだ? まあ無理にとは言わないし、新しい武器を買ってからでもいいけどな」
「うーん、フィーネはどうする? おれのは、アレだしなぁ、まあ別のを見てもらおうかな」
「では、私は見ていただくことにします」
俺達は自分の武器、俺はサブで使用しているロングソードを、そしてフィーネはメイン武器のバスターソードを『収納』から取り出しテーブルに置く。
さすがにバスターソードは置くとテーブルが壊れそうなので立て掛けるだけにする。
流石にバスターソードをフィーネが取り出したのは予想外だったのか目を見開くがすぐに気を取り直し確認をしだす。
「ふむ、とりあえず、ん! なかなか重たいな。このバスターソードはなんも問題ないな。しかし、よくここんなでかい物を持てるな。ああドワーフの女みたいなもんか」
実は俺も同じことを思ってました、とは言えないが、見た目詐欺と似たような感じのことを言われたフィーネはしょんぼりしていたので頭をなでておく。
まあ、そうするとすぐに、はにかんだ笑顔でニコニコしだし、これで尻尾があるのならば振り切れんばかりに振られているだろう幻を見た。
「そんでだ。このロングソードは少し刃に欠けがあるな。しかし、それほど使っていないような感じだが何に対して使ったらこんな欠けるもんかね」
「あー、実はそれ、今メインとして使っているものが手に入る前まで使っていた武器なんです。で、ちょっとばかし、いや、かなりかな、硬いやつとやりあったりしたもので」
「ん? そのメイン武器とやらは見なくていいのか?」
「はい。普通の武器ではなく魔道具のような感じで、刃の部分も毎回新しく作られている感じなので、まあ大丈夫です」
「そうか、まあ、問題ないというならいいか。じゃあ、これの整備だけでいいんだな。うし、分かった。じゃあ、その間は解体用のナイフ以外にも店内にある武器はどれでも見ておいていいぞ」
「はい、お願いします」
そう言い、ロングソードを整備するために奥に引っ込むウルゴさん。
フィーネはウルゴさんからそのままバスターソードを受け取ると『収納』に入れる。
しばらくは、武器の整備で時間が空くので、その間にお言葉に甘えてナイフや店内にある武器を見ることにしよう。
ところで、この店では刃物類は壁などから生えているので一旦引き抜いてみないとわからないが、これはまず握りの部分から見て欲しいていうことなのだろうか?
まあ、単に店主の趣味、という可能性もある、と言うよりそちらの可能性のほうが高そうだ。
あと、引き抜いたナイフなどなどは、何かに繋がれているように引き抜いてから一定以上離れるとそれ以上は壁から離れなくなったので、盗難を防ぐ魔道具か何かがあるということなんだろう。
「基本的な形のナイフ以外に、刃の部分にギザギザがついていたり、刃が弧になってたりと、いろんな種類がありますね、イオリ様」
「こっちは、内側に刃が付いてるのもあるな。これは、うーん、もはやナイフには見えない気もするなぁー」
「あっ、こっちは、もっと不思議な形をしてますよ、イオリ様――」
俺たちは結局、ウルゴさんが戻ってくるまで、大いにはしゃいでしまったのだった。
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