第十三話 イオリと探索者組合の中
とりあえず購入するものは、このぐらいかな。
何か忘れているものがなければいいけど、まあ、その時はその時かな。
ちなみに、俺の正面に座っているフィーネはこのあと鍛冶屋に行くのが楽しみなようでニコニコしている。
可憐な見た目に反して、すこし戦闘狂気味なのためフィーネの世界では見た目詐欺と呼ばれていたとかいなかったとか。
まあ、王族で生粋のお嬢様なので礼儀作法は完璧だし普段は猫を被っているが、本来はそこそこお転婆な性格だったらしくずっと猫を被っているのはストレスがあったのではないだろうか。
「じゃあ、さっき数日潜るとは言ったけど、とりあえず明日は朝から日帰りで潜ってみて、ダンジョンの感触を見てみようと思う」
「私もそれがいいと思います。では、水は魔法でなんとかするとして食料は2日分を持っていくことにしましょうか」
「そうだな。まあ、あとでパンか何か売っていないか街で探してみるか」
まずは、どの程度ダンジョンに力が通じるか確認してみることにしよう。
「しかし、オーク肉はうまいな。オークってあのオークだよな、こんなに美味しいのなら狩り尽くされそうだな」
「うーん? 魔物のオークに違いはないと思いますが、たまたま沢山狩ることができたからメニューに載っているとか?」
「まあ、考えても仕方がないか。とりあえずは、オーク肉は美味い、ということだからダンジョンで俺たちで狩ってオーク肉を調達してみるのもいいかもしれないな」
「たしかに、私の食べたオークかつも美味しかったです」
「フィーネ、涎が出てるぞ」
瞬間に顔を赤くして、慌ててローブの袖で口元を擦り涎を拭く、フィーネ。
そんなフィーネをずっと見ているのも悪くはないけど、少し拗ねているフィーネを宥めながら、ランチを食べ終えた俺たちは食堂を出て階段を下る。
「ん? あれは掲示板かな?」
「掲示板というと、依頼などが貼り出されているのでしょうか?」
階段を降りた所で、ふと壁際へと目を向けると所謂掲示板と呼ばれるものがあったようだ、気が付かなかった。
俺たちがさっき登録した、探索者組合という集まりでは、基本的にはダンジョンの探索やダンジョン内での魔物などの素材の買取が主で、依頼によって薬草を採取したりなどはしていないらしい。
と言うのも、ダンジョン内では薬草などは根刮ぎ採取しても、その翌日には何事も無かったかのように生えてくるためで、もちろんそれは魔物にも当てはまる話だ。
そのため、街の中での探し物や掃除などの依頼は、街に居る何でも屋さんの領域らしいけど、その中でも達成が難しいものに関しては、最後の砦として探索者組合へと依頼が回ってくるようだ。
『探索者の手引き』を確認すると、そんなようなことが書かれていた。
「うーん。特に面白そうな依頼はありませんね」
「まあそうだな。ああ、やっぱりオーク肉は余っているらしいな。『求む! オーク肉の活用方法。料理以外でも可』だってさ」
掲示板によると、オーク肉は捨てようと思うほど余っているらしい。
余っているなら狩らなければ良いじゃないかと思いそうだけど、そうすると今度はオークの氾濫が起こってしまうので、現状はただ狩るしかないようだ。
いつまでも掲示板を見ていてもしょうがないので、まずは最初に組合内の売店に寄って足りないものを購入することにしよう。
売店は受付カウンターのすぐ横にあった。
「すいませーん。ここでは何が売っていますか?」
「あいよー。おや? この店の利用は初めてかい? えっとね、ダンジョン探索に必須の『離脱くん』や筆記具、マッピング用の道具とか採取用のスコップや解体用ナイフ……は在庫切れだった、まあ小物なら大体は揃ってるよ! その他の得物はすまねぇが、雑貨屋や鍛冶屋で買ってくれ。道具類の購入で初心者にオススメなのは、そうだな、ミンティアナさんの所がいいんじゃないかな?」
ふむふむ、この街の雑貨屋の中ではミンティアナさんの所がオススメ、と。
そうそう、この『離脱くん』ってのも変わった名前だよな、ちょっと名前のセンスを疑うけど。
「なるほど、ありがとうございます。ではその『離脱くん』と採取用スコップと筆記具はそれぞれ2セット、あとは、マッピング用の道具を1セットください」
「あいよ、合計で75セタだだな。お代は、そこの四角い箱に組合カードをかざせば支払いできるぞ。このダンジョン街のどこの店も同じ仕組みで支払いできるから覚えておきな」
「ありがとうございます。はい、ではお願いします」
カウンターにおいてある四角い箱に組合カードを翳すと、鈴みたいな澄んだ音色が聞こえたけど、今ので支払いが済んだということかな?
そういえば、食堂での料理の受け取りの時には別の音が鳴っていたきがするけど、今さっきの音は支払い時専用の音ってことか。
おじさんから購入したものをどんどん手渡されるので、俺はマッピング用の道具以外の離脱くんや採取用スコップなどの半分はフィーネに渡し、自分の分は『倉庫』に放り込んでおく。
フィーネも容量はそれほどでもないけど、それでも同じ系統の『収納』魔法が使えるので、フィーネに渡した側から物が消えていく。
購入したものをしまった俺たちは売店のおじさんにお礼を言い、街を回るために組合の出口へと向かう。
「ナイフは雑貨屋か鍛冶屋で買うしか無いかな」
「そうですね。あっ! そういえばミンティアナさんのお店の場所を聞いていませんでした。私、聞いてきますね」
そういえば、そのままの流れで組合を出て買い物に行こうとしてたけど、店の場所を聞か無いとダメだったな。
最終手段として『広域空間把握』魔法でなんとかするって手もあったけど、まあ店の場所が分かるならそれに越したことはないか。
パタパタと小走りで売店まで戻り、店の場所を聞き、これまたパタパタと小走りで戻ってくるフィーネ。
今日はいろんなフィーネを見れて飽きないなぁ。
「お店の場所聞いてきました」
「よし、じゃあ行こうか」
フィーネが聞いてきた話によると、どうやらこれから向かう店はハーフエルフの女性が切り盛りしているらしい。
組合から出た後、お店を目指し大通りを歩く。
二つの太陽は頂上から少し傾いた状態で、時間的には昼を少し過ぎたぐらいだと思う。
教えてもらった方向へと大通りを歩いて少しすると、お店の二階部分にデカデカと『ミンティアナの雑貨屋さん』と書いてある建物が見えてきた。
どうやら、ここが教えてもらったお店らしいけど、このぐらい分かりやすければ迷うことはないな。
まあ、進む向きさえ間違えなければ、だけど。
お店は、特に入り口のドアが閉まっていると言ったことはなく、むしろ限界まで開け放たれているので、まあ、俺たちはこれ幸いにと中に入っていく。
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