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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第十一話 イオリと食堂

 そもそも国がないと言うことに驚きつつ、今いる位置が大陸のほぼ中央にあることや、同じような規模の街が後四カ所ある事など、さらに詳しく調べてみようとしたところで邪魔が入った。

 

 グ、ググーッ。

 

 音のした方を見てみるとフィーネが恥ずかしそうに俯いていた。

 以前聞いたところ普段は気合で抑えているらしいが、こちらに来てから緊張のしっぱなしだったために流石に我慢の限界になったようだ。


「……大体一通りは調べたと思うから、お昼にしようか?」

「はい……」


 腹ぺこフィーネが出現したので調べ物を切り上げ、今後の予定については昼を食べながら話し合うことにする。

 端末(トリア)を受付に返し、資料室からの退出記録を組合カードに記録し資料室から出ようとするが、フィーネが名残惜しそうにトリア(端末)を見ていたので、宥めすかしながら資料室を後にする。

 ちなみに、組合カードに記録をしないで退出すると次回の利用時に怒られるらしいが、検索端末の持ち出し時には警報が鳴るため返し忘れてそのまま出るということは多分ないだろう。

 ともかく、資料室を出た俺たちは昼を食べるために案内板に書かれていた食堂を目指し階段を上がる。

 すると、二階についてすぐ食堂の入口が見えたため、そのまま食堂内に入ると入口付近の分かり易い位置に端末が置いてあった。

 おそらくは、その端末でメニューから料理などを選び注文するのだろうと思う。


「イオリ様、以外と、と言うと失礼かもしれませんが、雰囲気も明るいし、少しオシャレな感じですね」

「いったい何を想像していたんだ? まあ、たしかに想像していた食堂のイメージから良い意味で裏切られた感じだ」


 食堂兼酒場と案内板に書かれていたのを見て、俺は少し小汚い感じで薄暗い室内を想像していたけど、想像とは違い、食堂内は清潔で、また昼間から酒を飲み管を巻いているような探索者もいないし、どちらかと言うと少しオシャレな大衆食堂みたいな感じだ。

 食堂の中ではエプロンドレスを着たお姉さん達がテーブルを拭い、食器の片付けや椅子の整理などをしており、また、カウンターの中を覗くと筋肉もりもりのおっさんが料理を作っていた。

 さすがに上半身裸ではなかったが服の上からでもわかるぐらいのマッチョで、まだ探索者として紹介された方が納得できそうだな、と失礼なことを考えていた。

 しかし、なんか今日はマッチョとの遭遇率が半端ない気がするけど、探索者ともなるとそういう人たちが多いのだろうか?

 食堂内は長細いテーブルが何列も並んでおり背もたれがなく丸い椅子がテーブルの側に置かれており、そのテーブルを目指し、料理をカウンターで受け取り座る席を探している人や、すでに席に座りもりもりと料理を食べている人もいる。

 食べ終えた食器類はそのまま置いておけばいいらしく、お姉さんがテーブルに置かれた食器などを片付けているのが見えた。


「お客様、ここのご利用は初めてでしょうか? 食堂のご利用方法についてご説明は要りますでしょうか?」

「はい、初めてなのでお願いします」

「では、簡単にご説明をいたしますね。ご利用の際はあちらにある端末で食べたい物や飲み物を選び、組合カードを通すとカードから食事代が引かれます。そのときに注文番号が表示されますので、あちらの画面に同じ番号が表示されるまでお待ち下さい。番号が表示されましたら、カウンター横にある端末に注文時にご利用したカードを(かざ)すことで料理をカウンターで受け取ることができます。お食事が終わりました食器類は私たち店員が回収いたしますので、そのままテーブルに置いたままで結構でございます。他に何かわからないことがございますでしょうか?」


 入口付近ですこし立ち尽くしていると、すすすーっと、食堂内を移動していたエプロンドレス姿のお姉さんの一人がやってきてこの食堂の利用方法を簡単に説明してくれた。

 このお姉さんも組合の職員なのだろうか?


「えっと、何かここのおすすめはありますか?」

「そうですね、この時間ですと日替わりセットは如何でしょうか? 価格もお手頃で量もそこそこあるので人気ですよ」

「なるほど、日替わりランチセットですか? それにしようと思います。ありがとうございます」

「では、他にも何かございましたら、遠慮せずお声をおかけくださいませ」


 そう言って頭を軽く下げた後、去っていった。

 しかし、フィーネの世界にはなかったけど、この世界には日替わりランチがあるんだな。

 土日の昼ごろに喫茶店の前を通ると、看板に日替わりランチのメニューが書かれてるのを見たことがあるけど実際に食べるのは初めてだ。

 端末によると、今日の日替わりランチのメニューはどの料理も7セタで、オークカレーとオークかつ定食、そしてオーク肉のソテーの3種類らしい。

 オークって魔物のオークのことだよな。

 まあ、ランチとして出ているのだから、不味いということはないのだろうし、そもそも魔物が食べれるかどうかも、きっと問題ないのだろうけど……やはり異世界だな、ここは。

 端末に表示されているメニューはわかりやすいように絵が付いているけど、どれも美味しそうで迷う。

 じゅるり、はたしてオークの肉はどんな食感や味なのだろうか?

 さて、どれを食べようかな?


「よし、俺はオークカレーに決めた!」

「私はオークかつ定食にします」


 ということで、メニューを選び画面上の会計ボタンにタッチをしたあと、指示に従い組合カードを端末に(かざ)すと、メッセージが表示された。


「えっと、なになに……」


----------------------------------------------------------------------

お会計

Aランチ(オークカレー):7セタ

合計:7セタ

 

注意:現在、保護期間中のため組合が料金を負担しています。

   依頼報酬、素材買取額からの天引き額に追加されますがよろしいですか?

追加後の天引き額合計:17セタ

 

〔はい/いいえ〕

----------------------------------------------------------------------


 なるほど、これが、ケーネさんから説明があった保護期間ってやつか。


「なるほど、保護期間中はこのような表示が出るのですね」

「まあ、そうだな。要するに組合に対する借金みたいなものだから、返せるなら早く返して欲しいんだろうな」


 借金みたいとは言ってみたが、実質は間違いなく借金なのだろう。

 まあ俺はそんなでもないが借金と聞いてフィーネは少し元気がなさそうだ。

 借金自体の知識は、王族としての教育の中で学んだ知識の中にあったようだが、まさか自分自身がその借金をするとは夢にも思わなかったらしい。


「とりあえず、端末の前で立ち止まっていると後ろが詰まってしまうから、とりあえず注文をしてカウンターに行こう、フィーネ」

「そうですね、落ち込んでいてもしょうがないですし、注文をしてお昼を食べましょう」


 辺りを見回すと俺達が並んでいた端末だけ、少し列ができていたようなのでフィーネに注意をしつつ注文を確定することにする。

 さっきお姉さんからも説明があったが、端末での支払い後に表示される番号と同じものが、料理ができた時にもカウンター近くの画面に表示されると説明が出ていた。


「えっと、俺のは233番だ」

「私の番号は234番ですね」


 しばらく待つと、画面に234番が表示され、フィーネの注文したオークかつ定食が出てきたが、そのまま俺の料理が出てくるまで待っていそうだったので先に席を確保しておくようお願いする。

 フィーネが席を探して彷徨(さまよ)っているのを横目で見つつ、さらにしばらく待っていると233番の表示が画面に出てきた。

 どうやら俺が注文したオークカレーが受け取れるようになったみたいだ。

 カードを端末に(かざ)して料理を受け取り、さてフィーネはどこに席を取ったんだろうか、と見回すと、どうやら食堂の端あたりに席を取ったようだな。

 俺と目が合うと嬉しそうに手を振っていた。

 フィーネの待つ食堂の端を目指し、オークカレーの乗ったトレイを持ちながら席まで移動し、テーブルを挟みフィーネの正面に座る。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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