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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第百六話 イオリとダンジョンマスターとイオリ死す?

間に合いませんでした。

「ん? ここは……」


 完全に不覚だったな。

 気を抜いていた訳でもないけど、この世界に来てから感が鈍っていたのかもしれない。

  直感さん、お仕事ですよーっと。

 まあともかく、今俺が居る場所は、薄暗く、そして手元が僅かに見える程度の明るさしかない部屋だ。

 大きさは…… 『自動地図』で描き出した感じだとそれほど大きくはないようだな。


「ん…… イオリ様…… こ、ここは?」

「はっ! な、何が起こったんだ? ソータ、ソータはいるか? うちはここだぜ!」

「完全に不意を突かれましたね。あ、イオリさん、ここです、ここ!」

「驚いたのじゃ。ところでここはどこなのじゃ?」

「ん、同意」


 パーティーのメンバーは全員がこの部屋にいるらしい…… けど、暗くてよくわからないし、俺からの距離もバラバラのようだ。

 それぞれ声のする方向と『自動地図』に描かれた点を比較すると、どうやら一番距離が遠い点は、アイツらしい。

 俺からは結構離れているらしく、アイツの話す声もいつもの三割程度しかなさそうだ。

 とりあえず地図を頼りに、一番遠いアイツから順に転移をして回収していった。

 全員を回収した後、この部屋の出口らしい部屋の中央(・・)へと転移する。


「なあ、さっきから気になってるんだけど…… あれはなんだ? 出口じゃないのか?」

「ああ、あれな。まあ、多分出口だとは思うんだけどな……」


 この扉の前に転移する直前には『自動地図』によってこの部屋の全容が明らかになっている。

 まあ、全体がわかってないと転移なんてしようとは思わないけど。

 部屋の形はおそらく正十二角形で、広さは昔見たことがあるような野球場のグラウンドの部分ぐらいはありそうだ。

 その中央部分には角が取れた四角形の部屋、というか空間がぽっかりと空いていた。

 好奇心は何とやらとも言うが、俺があまり乗り気じゃないのにも理由がある。

 扉の先が……


「見えないんだよな」

「ん? 何が見えないんだ? うちの裸か?」

「あぇ? ああ、違う違う。フィーネのならともかく、オマエのは見てもしょうがないなぁ」

「なんだとぅ? ふっ!」

「おっと」


 いきなりトップスピードで下からのノックアウトを狙って来たが、寸前のところで避けることができた。

 まともに当たったら顎が砕けてたな。

 今にも飛び込んで来そうなアイツはソータがどうどう、とまるで馬を宥めるように抑えていた。

 思わず比較対象として出してしまったフィーネはというと、なんかクネクネと体を動かし少し恥ずかしがっていた。

 リーン達はというとそんなフィーネを奇妙な、いや珍しい物を見たとばかりに何とも言えないような顔をしていた。


「冗談はさておき、見えないってのはあの扉の先だ。まあ、今の所この先しか進む道はなさそうなので行くしかないんだけどな……」

「まあ、進むしかないのは同意です。先が見えないというのは別の空間になっているのか、探れないように邪魔をされているのかって所でしょうか?」

「たぶんな。前の罪人(リゥム)が出て来た空間は、まあ少なくとも人が出入りはできるってことはわかってたけど、ここもそうだとは限らないしな」

「うーん? それでも進むしかないのではないでしょうか?」


 なんとなく、嫌な予感はしているんだけど、戻っても進む道はないからここは覚悟して進むしかないか。

 意を決して扉についていた取っ手を掴もうとすると、あれ?


「何やってるんだ? 遊んでるんならうちが開けるぞ?」

「いや、取っ手がすり抜けて掴めないんだよ。ん? まさかっ!」


 どうやら扉と思っていたものは偽物で魔法か何かで、まるでそこにあるかのように見せていただけで実際にはすり抜けられるようだ。

 よし、では先に進もうか。


「ん? おお! それ面白いな! 次はうちな!」


 じゃあ順番にな、と振り返ろうとするも何かに掴まれたように戻れない。

 先には進めるようだけど、これはまずいかもしれないな。


『待った! ちょっとまずいかもしれない』

『ん? 何がだ? なあ、次に入っていいんだよな?』


 思考共有でアイツに連絡を取ってみると問題なくできたようだ。

 先に進もうとするアイツを慌ててを押しとどめる。

 転移で戻ろうとするも、それもまた何かが邪魔をしてできないようだ。

 そしてさらに悪い情報がある。

 どうやらこの部屋には主がいるらしく、薄暗い部屋の中で壁一面に広がる無数の画面から溢れる光によって人のような影ができている。


『とりあえず、待機だ。皆にも伝えてくれ。さっきの扉に入ると後戻り不可らしい。特にフィーネはちゃんと捕まえていてくれよ?』

『まあ、なんだかわからないけど。わかったぜ。フィーネのことも任せといてくれよな』


 とりあえず、何が起こるかわからないからこの部屋の周りに結界を張っておく。

 この部屋と外側とは別空間になっているわけではなさそうだし、結界を張るのを邪魔されることもなかった。


『念のため結界を張っておいた』

『わかったぜ。けどそんなにまずい状況なのか?』

『まだわからないけど、こちらに意識を向けていない状態でも威圧感が魔王軍の幹部が戦闘時に見せた威圧並みだ』


 まあ、とはいってもフィーネはわかるだろうけど、アイツらはどのぐらいかはわからないだろう。

 ただ、少なくともリーン達は気絶するか動きが大きく鈍るはずだから対峙するのはかなり危険だ。

 と、ここまで考えたところで動きがあった。


『おや? ここにお客さんとは…… 初めて、いや、久しぶりだねぇ。それも一人でとは』

「ん? ぐっ!」


ーーズガンッ


『ほう?』


 こちらに意識を向けた途端、明らかに魔王以上、もし魔神なんてものがいたらこのぐらいにはなりそうな威圧が俺に襲いかかる。

 少なくとも、全員でかかればなんとかなる、とは簡単には言えないだろう。

 言葉ではなく念話、いやこれはこの世界の言語とは違う系統の言語なのだろう、それを使い意思を伝えてくる。

 容姿は、画面から溢れる光によってほとんど影しか見えないが魔物や異形というわけではなさそうなのが僅かに見て取れる。

 そういえば、魔王も魔王軍の幹部もなぜか俺たち人間に似た整った顔立ちをしていたな。

 そして挨拶とばかりに岩でできた槍が恐ろしい速度で飛んでくるが、ギリギリのところで弾くことには成功する。

 ただ、無詠唱でこの威力にこの速度というのは想定以上だ。

 俺がほとんど反応できなかったという事実も看破できない。

 相手はというと、感心するような言葉を発しているが、まるで羽虫が珍しい動きをしたとばかりの声色で言葉と感情が剥離しているようだ。


『ふむ、ふむ』


 少なくとも今の魔法を見るだけでも、リーン達二人がここにいても、足手まといならまだしも、あっという間に挽肉になっている未来しか浮かばない。

 とりあえず、今はできることをしておこう。

 この部屋の外に結界は張った。

 運が良ければ、そとのメンバーのことは気がつかないだろうが、どうだろうか?


『ここまで来た頑張りに免じて名乗りを上げておこう。私は……』


 名乗りを上げつつ目の前の何か、は魔力を練っているようだ。

 さっきは、完全に不意を突かれたが、それは目の前の何か自身が魔力を使っていると考えていたからで、どうやらこのダンジョンから魔力を供給されているらしい。

 っと、考察はあとだ。

 他に出来ることは……

 外のメンバーに対してダンジョン街への転移を万が一俺からの魔力の供給が途切れた場合に起動する状態で使っておこう。


『ジュダオン・ロブアグリード(・・・・・・・)と言うものだ。まあ、ダンジョンマスターだね。もっとも、二度目に出会うことは、ないだろうがな!』

「っ!!」


 ロブアグリード、たしかこのダンジョンの名前も同じだったな。

 俺は冷や汗を流しながらも『思考分割』で考察を続け、絶えず思考共有で映像とともにアイツに垂れ流しておく。

 アイツからの返事を確認している余裕はなさそうだ。


『ははっ! これはこれは! ここまで持ったのは初めてだな! ああ、気になっていると思うから言っておくが、この部屋の物はダンジョンによって保護されているから傷が付く心配はないぞ!』


ーーガンッ!


「それはそれは、ご丁寧に!」


ーードガッ!


 俺は必死に逃げつつ目の前に迫る大量の槍を捌いていく。

 相手のジュダオン・ロブアグリード、長いからジュダオンでいいや。

 その、ジュダオンの方は余裕綽々なのが八つ当たりと思いつつも気にくわない。

 なにか、攻略の糸口は掴めないものか。


『いいぞ、いいぞ! 久しぶりに楽しめそうだ! ほら、ほらほらほらっ!』


ーードガガガッ!


 まったく、こっちが放つ『火球』も『水球』も『火炎領域』も『雷槍』その他諸々、挙句には『魔素拡散』までもが、防がれる。

 まあ、『魔素拡散』は無効というよりも、相手への魔力の供給の方が多いために意味をなしていなさそうだ。

 しかし、そろそろまずい。

 まだ一刻(・・・・・・・)も経ってないはずなのだけど、疲労感がハンパない。

 もう少しで糸口がつかめそうなんだけど。

 そう言えば、結界を攻撃に使ったことはなかったな。


ーーガガガンッ!


『ふむ。久しぶりに楽しめた余興だった。まあ、遊びはここまでにし…… クッ! このっ! 調子に乗るなぁ!!』


 完全に上半身を覆ったはずの結界は、寸前の所で逃げられるが、左腕の一部を喰うことに成功したようだ。

 いや、攻撃に使うと結構えげつないなぁ。

 と、そんなことを呑気に思い浮かべ、目の前に迫る大量の石の槍が見えた所で俺の意識は途切れた。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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次の投稿は未定です。なう、らいてぃんぐ……

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