第百四話 イオリと遺跡と守護者
俺達の目の前に横たわる黒い岩で出来た丘のようにも見えた暗黒狂竜はさっさと『倉庫』に仕舞い込んだ。
解体とかは後でもできるしな。
仕舞い終えたところで、辺りを見回してみる。
この山の山頂は意外と広かったーーと言うよりも暗黒狂竜が巨大だったようで、死骸をどけたら野球が出来そうなぐらいの広さがあった。
「うーん、次の階層へ転移するための場所は…… 見当たらないですね。ここじゃないのでしょうか?」
「さっき倒した暗黒狂竜が実はボスじゃなかったとか、この階層のボスは自由に移動できた、とか?」
「確かにどちらもありそうですね」
「あとはここにあるけど、隠されてるとか? どうやってかはうちはわかんないけどな」
山頂は少し縁が高く、中心に向かって緩やかに窪んだお椀型の地形をしている。
周囲を見回すが、建物や洞窟など他の階層なら有っただろう小部屋など、別の空間への入り口は見当たらなかった。
「どうも、次の階層への入り口はなさそうだから、他を探すしかないかな」「実はこの階層で行き止まり、とか?」
「まさか…… そんなことがあるのか?」
「僕が調べた時は、そういうダンジョンがあるという話は見なかったですね」
まあ、流石にダンジョンの階層が、行き止まり、という事はないと思う。
俺が調べた時も特にそういう情報はなかったはずだ。
とりあえず、ここにいてもしょうがないので転移しながらこの階層の出口を探すことにする。
「うーん? 見つからないですね」
「まあ、この階層は、かなり広いからなぁ。以前の階層に比べて何でこんなに広いのだろう、ほんとに」
「うちが思うに、でかい魔物がいるからじゃないか?」
「デカイ魔物? ドラゴンとかか?」
「そうそう」
確かにドラゴンはでかいし、空も飛ぶから狭いところよりも広いほうが良いのだろうけど、果たしてダンジョンそこまで考えてた魔物を生み出したのかどうかは議論の余地があるかな?
まあ、何時議論するんだって話はあるけど。
転移をしつつ他愛もない話をしながらダンジョンの出口をを探すが、中々見つからない。
「そろそろお腹空いてきましたし、昼食を食べませんか?」
フィーネからの提案で、休憩が出来きそうな場所を探し、周囲を結界で囲む。
ソータもお皿などの準備をしつつ、引き続き周辺の探索をしているようだ。
と、ソータが使っていた『式獣』のうちの一匹(?)がソータの元へと戻ってきた。
ソータが使う『式獣』という独自に発展した魔法はなかなか便利なようだ。
指示を何個か与えたり、物事に対しての多少の判断ができたり、術者ーーこの場合はソータと視覚を同期して探索を安全に行ったりできる。
アイツやソータの住んでいた国には他にも独特な魔法体系があったらしいけど、ソータ自身はどちらかと言うと適正が魔法使いよりだったらしく特に便利そうな術を集中的に覚えて使えるようにして、覚えたうちの一つは『式獣』だったらしい。
実は、教本の類もアイテムボックスに仕舞ってあるらしいので、ダンジョン探索が落ち着いたら見せてもらう約束をしてある。
「あっ! どうやら、何か見つけたようです」
「お? そうなのか? じゃあ、食事が終わったら確認しに行くか」
さらに数匹戻ってきた『式獣』と何やらやり取りをしていたソータだけど、どうやら特徴のある建物か何かを見つけたようだ。
「むぐむぐ。やっぱ、これうまいな!」
「そうですね」
ソータが出したお皿の上に広げた、サンドイッチやハンバーガー、パスタなどを少しずつ盛り付け、飲み物を飲みつつ、適当に好きなのを選んで食べる。
新たに見つかった目標の確認を早くしたい溜めなのか、心なしか皆の食べる速度も早く、あっという間にお皿が空になった。
そうして、ちゅ食を食べ終えた俺たちは、早速とばかりに何やら見つけた場所へと転移を行い近く。
「あー、なんか影ができてると思ってましたが、どうやらドラゴンが上に居座っているみたいですね」
「ん? またドラゴンか?」
「ええ、さっきのドラゴンよりは…… 少し小さいようですが」
転移を繰り返し最終的に目視でも見える位置まで近づくと目標が確認できた。
目標の場所ーー遺跡のようにも見えるそれの中心には何やら大きい水晶の塊のようなものがあったので、もしかしたらここが何時もの転移部屋の代わりなのかもしれない。
その遺跡の上には、ソータが言うようにドラゴンがまるで遺跡を守護しているような感じで居座っていたので倒さないと中へは入れそうにない。
種族の名前は…… 『鑑定』で確認すると暗黒狂竜亜種のようだ。
亜種だからなのか、色もさっきのドラゴンに比べ鱗にツヤがなく、まるでそこに何もないような錯覚を引き起こすが、まあそんなことはもちろんない。
「ほんじゃあ、やりますか!」
「遺跡を壊さないようにしないといけませんね。イオリ君、ドラゴンが飛び立ったら結界を張れますか?」
「了解、まあ大丈夫だと思う。じゃあ、もう少し近づいたら結界を解除するから、準備だけしておいてくれ」
「「わかった」」
暗黒狂竜亜種から数十歩離れた位置まで近づくと、皆に向かって合図をして結界を解除する。
「ギャオォーーーー」
「いきなりかよ! とりあえず結界を張るから集まれ!」
どうやら、先ほどのドラゴンのように居眠りしていたわけではないようで、結界を解除すると一呼吸を置いて、まるで小手調べでもするようにブレスを吐き攻撃をしてきた。
慌ててすぐ目の前に張った聖属性や光属性を多目のにした合計百枚の結界で作った簡易障壁は五枚を残し、パリンと澄んだ音を鳴らし消え去る。
さすがに、これは予想外で冷や汗が垂れたが、まあ全部が全部壊されたわけではないので、辛うじて首の皮一枚でつながったと言ったところかな。
暗黒狂竜亜種の脅威を上方修正しておこう。
こちらも、試しとばかりに『雷槍』を放ってみるが、ほとんどが鱗で弾かれ、刺さった槍もあまり効いていないようだ。
「なぁ…… このドラゴンってこの世界の住人に倒せるもんなのか?」
「たしかに、ブレスだけでも魔王の攻撃並みだな。まあ、位置付けは魔王級ってところじゃないか?」
アイツが疑問に思うのもしょうがない。
さっきの暗黒狂竜も大概だけど、この暗黒狂竜亜種は、技の威力だけを考えるとフィーネの生まれた世界の魔王に近い実力、幹部級の力を持っている感じだ。
っと、どうやら遺跡に居座りながらだと技の威力が出ないのか、翼を広げ上空に飛び上がったようだ。
俺はこれ幸いにとばかりに、結界で遺跡を覆っておく。
暗黒狂竜亜種の方は…… それに気がついた様子はない。
猪突猛進的な所があるのか意外と周りが見えていないようだ。
「じゃあ魔法を遠距離から打ち込むから、ソータとリーン以外は待機な」
「えぇーー」
「えー、じゃない」
「あ、イオリ君。張ってある結界はどのぐらいまで耐えられますか?」
「全属性を何重にも張ってあるから…… そうだな、さっきのブレスの二倍ぐらいなら余裕だな」
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