表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
103/107

第百三話 イオリと暗黒狂竜

 高山病が怖いので休みながら何回か転移を繰り返すと雲の上に出る。

 もう一度の転移で山頂にたどり着ける位置だ。

 山に背を向けると所々に雲が掛かっているけど、草原とその先にある森や泉も含めて遥か彼方まで見ることが出来た。

 ここからでは見えないけど、山頂の火口には先程までは殆ど感じられなかったドラゴン系の魔物の気配が、今はしっかりと感じられる。

 当のドラゴンはこちらの気配に気がついた様子はないが…… どうやら寝ているようだ。

 もう一つ、突然襲われても大丈夫なように転移した後も念のため結界を張ったままにしていたけど、これも理由の一つかもしれないな。


「まだ姿は見えないけど、どうも寝てるようだな」

「その…… ようじゃな。しかし、妾達に気がついた様子がないのは、油断しすぎだと思うのじゃ」

「うーん、やっぱ、この結界だっけ? それを張ってるからだと思うぜ?」


 結界をコンコンと軽く叩きながらアイツはドラゴンが未だに気が付いていない理由を予想する。

 まあ、ドラゴンがよっぽど平和ボケしていない限り、それが正解だろうな。

 とりあえず、戦闘の準備が出来たら結界を壊して交渉を始めるとするかな?

 基本的にダンジョンに入ってからは周りに気を配り、魔物にいつ襲いかかられても問題ないように準備をしているので、戦闘の準備と言っても再度気合を入れ直すぐらいだ。


「じゃあ、山頂のドラゴンの腹の辺りに転移し、結界を壊すからな」

「「わかった(のじゃ)」」


 皆に向かい一つ頷くと、結界ごと狙った通りのドラゴンの腹の辺りに転移する。

 さらに、皆に聞こえるように、解除と一言唱え結界を解除する。

 ちなみに、結界の解除は結界の構築と同様に詠唱する必要はないけど、パーティー内の連携の為にワザと声に出している。


「グル?」


 目の前に少し体を丸めた状態で寝入っていた全身が漆黒のドラゴンも、流石に結界を解除した所で気が付き目が醒めたようだ。

 解除しただけでは起きなかった場合、いきなり敵対する可能性もあるのでやりたくはないのだけど、威圧と殺気を当てて強制的に起床させるという手段を取るつもりではあったけど、使わずに済んだのは良かった。


「グリューーー!!!」


 目が覚めたドラゴンは辺りをキョロキョロと見回し、お腹の辺りに居た俺達を見つけるとまずは小手調べとばかりに、威圧を含む鳴き声を浴びせてくる。

 立ち上がったドラゴンは高さは民家の四階から五階程度の高さになるようだ。

 リーン達は武器を構える動きが一瞬ぎこちなくなるが、威圧に何とか耐えたようだ。

 まあ、俺達はビクリともせず、逆にドラゴンに対してお返しとばかりにソータも含め全員が全員、威圧を仕返していた。


「ギャゥ!!!」


 ドラゴンの目を見ると普通は白目の部分が体と同じように黒い色をしてして、縦に割れた中に金色の瞳が怪しく光っていた。

 この状態の目だけを見ても普通の状態ではないし、リーンに聞いてみた所、体表の色はドラゴンの中でも不吉と言われている色で、それを除いたとしても、やはり、このような瞳をしたドラゴンは見たことがないようだ。

 高位のドラゴンが本来の獣の形態を取った場合でも、ドラゴン同士だと鳴き声に重ねて念話のような方法で意思を伝えてくるが、このドラゴンの場合は、リーン曰く、ただただ不快な音が乗るのみらしい。

 一応鑑定してみたけど、リーンのときのように何かに操られているということもないようだ。


「意思疎通も出来ないし、鑑定の結果からも、この階層のボスと考えて良さそうだな」

「そういえば、種族名とかは?」

「種族名は…… 暗黒狂竜ダークネスマッドドラゴンって書いてある。まあ、見たままだな」


 種族名をソータに聞かれたが、『鑑定』の結果は見たままで分かりやすくて良いな。

 と、すこし話していたら、なんとか威圧から復帰した暗黒狂竜は、顔はこちらを向けながら体を仰け反らせて攻撃の準備をしていた。

 たぶんドラゴンブレスの類だろう。


「とりあえず、結界を張ってみるか。百枚でいいかな? ダメそうなら転移するから」

「わかったぜ」


 パーティーメンバー全員の返答を確認しつつ暗黒狂竜の行動を待つ。

 少しの溜めの後、暗黒狂竜は予想した通り、ドラゴンブレスを放ってきた。


 ガシャンーー


 一枚、また一枚と……


 パリンーー


 ガラスが割れるような音がしながら次々と結界が割れ、結果として四割程度が破られた。

 予想したよりも破られた枚数が少ない。

 この半分でも問題なかったかもしれないが…… まあ、少ないよりも多い方がマシだろう。

 ちなみに、暗黒狂竜から隔てるように俺達を囲んで張った百枚の結界は、実験も兼ねて色々な属性を付与してある。

 その中でも、光属性を付与した結界(もの)と、聖属性を付与した結界(もの)が破られにくいようだった。

 種族名にも暗黒と付いているので、つまりはドラゴン自体は闇属性を持っていると言うことなのだろう。

 ともかく、属性によって違いがあることがわかったので、それを踏まえて反撃をしようか。


「どうやら、聖属性とか光属性と相性がいいみたいだ。まあ、こちらからの攻撃に対してどうかって話はあるけど。さっきのはあくまで防御の話だし」

「なるほど。じゃあ、とりあえず聖属性を付与して見ましょうか」


 と、ソータが一言、『聖なる光よ』と呪文を唱えると周囲に光が溢れ出す。

 暗黒狂竜はと言うと、まるで痒いところがあるかのように、頻りに頭を振ったり、体を捩ったりと、じっとしていられないようだ。

 俺も、フィーネの大剣に聖属性と光属性を同時に付与し、戦力のアップを図る。

 もっとも、フィーネなら手数と怪力で強引に押し通すかもしれないけど、武器に相手が苦手そうな属性を付与すればさらにやりやすくなるだろう、たぶん。


「じゃあ、行くぜ!」

「行きますね!」

 

 フィーネとアイツはお互いに顔を見て、同時に頷くと、弾かれたように左右に分かれ暗黒狂竜へと向かう。

 あっという間に暗黒狂竜の元へとたどり着くと同時に、片や殴りかかり、片や大剣を足元へ向かって振り抜く。

 フィーネが振り抜いた大剣の方は途中で止まることなく、まるでバターを着るようにスルッと暗黒狂竜の足を切り裂く。

 もう一方のアイツは、少しづつ足の周りを移動しながら殴っていて、移動した後のアイツの身長よりも高い場所を見ると、鱗が剥がれていたり、隕石が落ちた後のように凹みができていた。


「ギャゥーーー!!!」


 暗黒狂竜の方は、最初はうろちょろと鬱陶しいとばかりに、体を大きく振っていたが、すぐにそれどころではなくなったようで、傷ついた足を庇いながら暴れている。

 まあ、すでに血もかなり流れているので、もう少ししたら貧血で倒れるかもしれない。

 そんな訳ないか。


「でかいの行くから、二人とも一旦離れてくれ!」

「わかったぜ!」

「わかりました」


 俺が、大技に巻き込まないように注意を促すと、暗黒狂竜からすたこらと一目散に離れ、俺たちの元へと戻ってきた。

 二人が戻ってきたことを確認した俺は、暗黒狂竜が体制を整える前にさっさと魔法を使う。


「『(kutinhira)(pfumo)』、『(kutinhira)(pfumo)』、『(kutinhira)(pfumo)』」


 となりで、うわぁとアイツが呟いているが、まあ気にしない。


 ズガガガガーー


 俺が放った『雷槍』は、一本も外れることなく、まるでハリネズミのように暗黒狂竜に突き刺さる。

 次の瞬間、ビクン、ビクンと痙攣した後、俺達の方へと倒れ込んで来たので慌てて転移で避けた。

 危うく潰されるところだったぜ……。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

感想、評価、ブックマークを頂けると励みになります。

誤字や脱字の指摘もあればお願いします。


次の投稿は10月13日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ