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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第百二話 イオリと草原とドラゴン

誤字脱字あればご指摘ください。

 さて俺達は今、九十五層に降り立った直後だ。

 スケルトン系の魔物が居た、お城の室内の様な階層は高々十層程度だったけど探索もとい移動ーーほとんど最短距離で進んでいたーーするのに予想よりも二倍程度の時間がかかってしまった。

 その理由はたぶん一層の中にさらに階が分かれていたからだと思う。

 今いる階層は前の階層とは打って変わり、目の前に広がるのは青い空と大草原だ。

 ダンジョンの中のはずなのに。

 遠くには森が見えて、更に遠くには山頂に雲がかかるほどの高さの山も見えている。

 さらに魔法で偵察していたソータによると湖らしきものもあるらしい。


「いやいや、ちょっと広すぎだと思うぞ、うちは」

「そうですね。湖は見つけられましたけど、ちょっと遠くて山の麓までは偵察できないかもしれません。移動にも時間がかかりそうですが、イオリくんどうします?」

「階層内がここまで広いとは思わなかったな。そういえば、組合で調べたときにもこんな広い階層のことは書かれていなかった気がするな」


 見落としていたかなと思っていたら、先程まで、このダンジョンの最終到達階層は八十八階層でしたよ、とソータからツッコミが入った。

 いつの間にか俺達のパーティーが一番になっていたわけか。


 ザクッーー


 たしか八十八階層辺りで『自動地図』に珍しく人が探知されているな、とは思ったけど遭遇すると面倒に巻き込まれそうな気もしたので避けて通ったけど、正解だったかもしれない。

 最深階層で地道に探索を続けているパーティーから見たら、つい先日登録したばかりの新人にあっという間に追い抜かれていい気分でいられるわけないだろう。

 ともかく過ぎたことは良いとして、今は目の前の大草原をどうするかだな。

 全方位、見渡す限り建物もなく草原が続いている場所では『自動地図』もほとんど役に立たない。

 まあ、『自動地図』では移動した軌跡も見えるので、単に迷ったり魔法によって惑わされて同じ所をぐるぐると回ったり、と言ったことは起きないので完全にお役御免といった事はないか。


「まあ、ここはショートカットするかな」

「ショートカット、ですか? そういえば、イオリ様は転移が出来たのですね」

「おっ! そんな便利なことができるのか?」


 便利とアイツは言っているけど、そこまで便利じゃないとは思うけどな。

 どこでも転移は出来るし、転移したら岩などの中だったとかいう状況には、そもそも失敗するので起きない。

 ただ、あるとき転移したら罠の真っ只中で、どんどん体内魔力が消費され危うく死ぬ所だったのを経験してから慎重になった。

 それでも諦めきれずに転移先を予め確認できるような魔法を作ろうと思い、実際に出来たは良いけど残念な事に距離に比例して魔力の消費が多くなる欠点があったので結局は使うのを諦めて、基本的に目視できる先にしか転移しないようにしているのが現状だ。


「まあ、思っているほど便利じゃないな」

「ふーん」

「とりあえず、あの辺りに転移してみるか。ああ、リーンはもう少し近くに寄らないとおいてかれるぞ」

「ふぇ? ああ、分かったのじゃ」


 リーンは何か気になる物でもあったのか山の方をぼーっと見ていたが、俺に呼ばれると弾かれたように振り向き、慌てて近くに寄ってきた。


 バキッーー


 俺達はのんびりと会話をしていたが、実は先程から魔物が近づき襲って来ている。

 まあ、アイツやフィーネが倒しているので問題ないのだけど、転移中に襲われたり、一緒に転移してしまうと面倒なので、とりあえず広めに結界で壁を作り、フィーネ達にはその中に数体居た魔物を狩ってもらってから転移をした。

 ダンジョン内なので失敗するかもと思いながらも、試さずにいきなり転移をしたけど杞憂だったようだ。

 転移をすると、俺達の側からの視点では目の前の景色が一瞬で切り替わるので、ダンジョンの出入り以外で初めて転移するリーンとソフィーは目を丸くしながらキョロキョロと辺りを見回し、最後に俺を振り返ると、面白いのじゃと一言つぶやいていた。

 ちなみに、転移を外側から見ていたーー今回は魔物側がそれに該当するーー場合は目の前から風景に溶けるように一瞬で消えてしまったように見えるはずだ。

 そのような状況なので、最初は見えない壁に阻まれて右往左往していた魔物も、目の前の魔物が消えてしまっていたので、ダンジョン内にしては珍しいことに、近くにいた同種の魔物と喧嘩を仕出してしまったようだ。

 これも、ソータが偵察した結果わかったことだ。


「とりあえず、転移前に居た所はそんな感じのようなので、さっきの魔物がまた集まって来るといったこともないようです」

「よし、じゃあまた魔物が集まってくる前に、山の麓まで行ってみようか」

「なあなあ、転移に使う魔力は大丈夫なのか?」

「ああ、近距離の転移は日に百回以上使っても十分余裕があったから問題ないな」


 へー、とすぐに興味を失ったかのような返事をするアイツを見て一瞬、何か言おうかと思ったけど、まあ良いかと思い直して、替わりに小さくため息を吐いた。

 ソータにはどうやら気が付かれていたようで、目が合うと連れがすいませんと軽く謝られた。

 まあ、気にしていてもしょうがないので、とりあえずは、さくさくと転移していこうと思う。

 ソータに偵察を頼みつつ、俺も一応は燃費が悪い遠見の魔法で確認してから転移を繰り返す。

 この遠見の魔法、確認する先までの距離が伸びると転移で消費する魔力の数倍から数十倍まで、もしかしたら更に距離を伸ばすと数百倍は消費するのかもしれないけど、ともかく燃費があまりに悪すぎる。

 なので、以前はパーティーメンバーに遠見が出来る魔道具を持った協力者がいたので、ほぼ全くと言っていいほど出番がなかった。


「とりあえず、山の麓らしき所に着いたけど…… どうしよう?」

「魔物も殆ど見かけないですね」

「それなのじゃが、どうも山頂あたりにドラゴン系の魔物が居る気がするのじゃ」


 山に近づくに連れて、周囲の魔物の数がだんだんと減っていくことには気が付いていて、それはおそらく山の何処かに居る強大な力を持った魔物に依る影響ではないかと、そのあたりまでは何となく予想がついていたし、実際に何かいる気配はしていた。

 もっとも、それがドラゴンに連なる何かで、その魔物が山頂に居るということも、リーン以外には気が付いていなかったのは、たぶん魔物が気配を限界まで希釈している事が理由だと俺は思う。

 まあ単純に、俺達の誰一人気が付くことがない中で、リーンが一番に気が付いたという事に驚いているだけだな。

 そういえば、最初に転移する前にリーンはどこか遠くを見つめてぼけーっとしていたけど、もしかしたら何となく気が付いていたのかもしれない。


「じゃあ、ここは会いに行くしかない、とうちは思うんだけど」

「まあ、その山頂に居るというドラゴンがボスという可能性が高そうだし…… 最終的に相対するなら、今ここで会うのも悪くないな」

「そうですね…… リーンとソフィーは、そのドラゴンさんと合うのは怖いですか?」

「妾は、まあ少し会いたくない気もするのじゃが…… 我慢するのじゃ」

「すこし、怖い。けど頑張る」


 まあ、正直な所、リーン達二人を除いたメンバーでどうにも成らない場合は、もはやこの世界では誰ひとりとして倒せないということになる、と勝手に思っているけどまあ、多分間違いはないだろう。

 そう言う理由なので、念のため少し弱めの精神魔法を掛けたのでなんとかなると思う、なるといいな。


「それでは…… 山頂に向かって進むぞ!」

「おー!」

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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誤字や脱字の指摘もあればお願いします。


次の投稿は10月6日の予定です。

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