第百話 イオリと騒動の発端
やっと百話です。
「じゃあ、まあ…… 座った所で状況を教えておく。お前たちも、まったく関係ない話ではないからな」
「え? 俺達は単に依頼を受けただけ、のはずだと思いますが……」
「ああ、実はーー」
と、説明してくれた状況は一般的にはよろしくない類の話だ。
あくまで一般的に、だけど。
順に何が起きたかを纏めると……
まず、時間は俺達が組合を出た直後に遡る。
この時、ぐるぐる巻きだった罪人は、気絶したままで拘束は解かれ、組合奥の牢に入れられていたらしい。
そして、少し時間が進み罪人が目を覚ます。
ただ、このあたりは証言をした牢屋番をしていた職員が巻き込まれ重傷となっていたために、証言自体があやふやのようだ。
ここで、どうやら組合内の内通者の介入が有ったらしく、組合の保管庫を襲撃した後、牢屋を襲撃し罪人を牢の外に出したらしい。
そして、保管庫から盗み出した転移魔道具を使い、どこかに転移していったということみたいだ。
そして、現在確実に分かっていることは、まず当然のことながら罪人の逃亡と内通者の存在、次に保管庫から盗み出された転移魔道具他数点、そして最後に探索者の登録情報、それも最近登録された探索者の情報が盗み出されたようだ。
この内、最後の『最近この探索者組合に登録された探索者の情報』が俺達に関係する言われた理由らしい。
「とりあえず、状況はこんな感じだ。全くもって謝るしかない状況だ。申し訳ない」
「うーん、まあ起こってしまった事はしょうがないです。それで、その盗まれた情報には何が書かれていたのでしょうか?」
「ああ、盗まれた書類は組合で管理している探索者の情報の写しでな、マスターは組合に備え付けの魔道具で管理しているんだが、万が一壊れたときのために定期的に書類に落としている。で、どうも盗まれたのが情報を書類に書き出している最中だったらしくてな…… ああ、何が書かれているか、か。登録時に書類に記入たと思うが、その情報が基本となる。で、あとは倒した魔物の個体数や依頼の達成状況やダンジョンの攻略階層、能力分析、総資産、あとは、直近の購入履歴だな」
「購入履歴ですか?」
「ああ、組合のカードでものを買ってるだろ? それの何を買ったかの履歴をトラブル対応のために三十日程度履歴を取っている。ああ、今回盗まれた情報には購入履歴と総資産の情報は含まれてないぞ。あれらは別個で管理していて、俺以外には権限がないから確認ができん」
たしかに内容を聞く限り盗まれるとよろしくない情報があるようだ。
能力分析とかは、誰に依頼をするかなどに利用しているのだろうか?
「そういえば、結局誰が内通者だったんですか?」
「…… まあ、いいか。罪人を組合で受け渡した職員が居るだろう? テシラって名前なんだが、アレがどうもそうらしい」
「念のため聞きますが、他には居ないですよね?」
「ああ、おそらく居ないだろう。前回、罪人が逃げ出したときもアレだけはどこかに言っていていなかったようだし、出身で語るのは俺は嫌いなんだが、今のここの職員のうち他のダンジョン街から移ってきたのはアレだけだ」
どうやら、テシラと言う職員は、ロベルトスさんとしては、かなり目をかけていたらしく、裏切られてかなりショックのようだ。
まあ、俺達には直接は関係ないことだけど。
「おっと、そうだ。今回の件の保証なんだが、何か要望があれば可能な限り沿おう」
「だそうだけど、どうする?」
「そうですね。見られて困るのは能力分析でしょうけど、まあそれも多分ですが僕達に関しては問題ないでしょう。それに急いでのの街を離れる予定も特にないです。なので組合のポイントを融通してもらうのが良いかもしれません」
「なるほどたしかにそれはいい考えかも。ロベルトスさん、僕達はそれで」
「それぐらいでいいのであれば、組合としては助かるが…… 本当にいいのか? 過去には、襲撃されて大怪我を負ったとか、そう言うのを恐れて他の街で登録し直したとかあったんだが……」
まあ、普通の探索者なら有り得る話だけど、俺たちに関しては関係なさそうだし、強いて言えばリーン達が辛うじて該当するかもしれないけど、俺達のパーティーにいる限りは、襲撃なんてそんな舐めたまねは許さないから、関係ないかな。
リーン達を見みるが、話を理解しているかはともかく改めて気合を入れなおしているので、まあ問題ないだろう。
俺達が譲歩したために特に揉めることもなく報告という名の話し合いは終わった。
ポイントについては書類を盗まれた探索者全てに話を聞いたあとで内容を調整し、再度話し合いの後で付与するという話らしい。
「んー! 罪人の事は、もう出来ることもないな。で、これからどうする?」
「イオリさんなら、何とかなりそう。いえ、何とかしてしまいそうな気がしますが……」
「まあ、場所はわかっても、移動手段がなぁ…… あとは、わざわざ追いかけて捕まえる理由もないしな」
「だなっ! で、終わった事は置いておいて…… これからダンジョンに潜ろうぜ!」
「それは良い考えです。私も賛成します」
「んじゃあ、ダンジョンに潜りたいのは挙手!」
ロベルトスさんとからの報告の後、組合を出ると腕をんーと伸ばしつつ、ぶらぶらと街を歩き始める。
しばらく歩いた後、そういえば、と今後の予定について多数決を取ってみる。
まあ、聞くまでもないか。
苦笑しているソータ以外は全員が手を上げることで、言葉にせずとも伝わって来た。
「まあ…… これは、決定だな。じゃあ、ダンジョンに行くとしてどれだけ潜る?」
「どれだけ? 期間の話か? それとも階層の話? まあいいや。うーん…… そうだな一週間ぐらいで、どうせならこのダンジョンのトップを取ってみようぜ!」
「トップか…… まあそれもいいけど、どうせならこのダンジョンを攻略してみないか?」
「おお! それいいな! よし、目標はそれにしよーぜ! ソータやフィーネもリーン達もいいだろ?」
すこし発破をかけたらすぐに乗ってきた。
まあ、乗せやすいやつだなと思いつつ、俺も少しワクワクしていたりする。
フィーネにはイオリ様も意外と戦闘狂ですねと小声で言われたけど、戦闘を極力回避してもダンジョンは探索できるから、俺自身は戦闘狂じゃない、と思う。
ダンジョンに再び潜ることを決めた俺達は街では『倉庫』などに仕舞っておいた、装備を再び取り出し準備を終えると、ダンジョンの受付を経由し、八十五層に舞い戻ってきた。
さて、ここから再び探索を進めるわけだけど……
「さっきのように、『自動地図』で階層の地図を作ってから進むか、進みながら地図が埋まるに任せるかどっちにする? いや、どっちにしたい?」
俺の問いに対して、アイツは少し考えると「進みながら」地図を作る方を選ぶ。
フィーネはもう片方だ。
選んだ理由を聞いてみる。
「うーん、最短経路だと魔物も少ししか遭遇しないけど、歩きながらだったらもっと戦えるとうちは思ったけど…… フィーネもそう思わない?」
「いえ私は、地図を作った後で魔物の多い所を通ればもっと多く戦闘が出来るとおもいます。そうですよね、イオリ様?」
「まあ、そういうことも出来るな」
なるほどそれは思いつかなかったと、アイツもフィーネと同じ意見になる。
まあ、こうなる事は容易に想像できたから、すでに地図は作り始めているんだけどな。
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