飴雨
空いっぱいに広がっている雲があれば、きっとこんな想像をしたことがあるだろう。
飴が降ってきてくれないかなって。
私は、それを願っていた。
退屈な日常から抜け出したかっただけだ。
授業中に、小学校の教室から空を眺めていると、飛行機が飛んでいる。
飛行機雲を引き連れて、楽しそうに飛んでいると、グラリとゆがむ。
あれっと思っている間に、光が生まれた。
赤色黒色、黄色だ。
それから、音がやってくる。
ドカンと大爆発する音だ。
先生も音を聞いてあわてて窓へと駆け寄る。
「離れなさいっ」
窓傍の私たちを廊下側へと寄せさせる。
そして、何かが降ってきた。
「キャンディー?」
思わず聞き返した。
空から降り注いでいるのは飴だった。
飛行機の破片が一緒に降ってきているし、地面に落ちているから、誰も拾おうとはしない。
むしろ、避けようとしているようだ。
飴雨と呼ばれたこの事故は、半径何キロメートルにもわたって、飴をまき散らした。
私たちは、それのどれも拾うことはなかった。
汚れてたり、汚かったり、焦げていたりしたからだ。