風の魔法と同一の疑問
拝啓、お父さん、お母さん。
異世界は、と言うか異世界も生きづらいです。
努力する物が勉強から訓練に変わっても、やっぱり面倒くさいです。
でも、その面倒な物を乗り切り、優秀になれば、これまでの道は簡単だったと思えるかもしれません。
しかし、やはり俺だけでは無く、誰もが楽な道で頂点に立ちたいと思う訳で。
結論を言いましょう。
(やはり魔人になって無双とかしてみたいです。)
異世界に俺が放り込まれてから三日目の朝。
俺はこんな事を考えながら、全部屋の掃除に励んでいた。
俺は家事は得意な方だ。
もし俺が結婚したい相手が家事が出来なかったら、或いは相手の方が収入が多かったら、と言うときの為の保険として家事の練習をやったんだけどこんな所で役に立つとは思わなかった。
ふと思ったんだけど、風の魔法を使ってゴミを一気に集められないかな?今度練習してみよう。
そして昼過ぎ、俺は姫様と訓練をやる。
昨日覚えた風の魔法を使ってみた。
姫様は多少驚いたが難なく風を抜け、俺の剣を弾き飛ばした。
やはり姫様にはまだまだ敵わないな・・・情けない。
「アカキバさん、先程の風の魔法は元から使えたんですか?」
「いえ、昨日灰色の髪の、俺と同じぐらいの見た目の人が魔法の使い方を教えてくれたんです。」
「今日は魔法の基礎を教えるつもりだったんですけど・・・無駄になっちゃいましたね。」
「なんかすいません。」
「いえいえ、成果は早く出るに越した事はありませんからね。」
それはそうだな、成果は早く出た方が良い。
「でも、風属性魔法は扱いが難しいですから、応用を教えるのにも一苦労ですね・・・」
「姫様は何か得意な魔法ありますか?」
「フフフ・・・ありますよ・・・」
う、姫様が危険な表情をしている。
「それ!」
すると突然、俺の周りの地面が木よりも高く盛り上がった。
「なんじゃこりゃ!」
「どうですか~!これが私の得意な地属性魔法でーす!」
姫様がのんきに下から大声で説明している。
「説明は後でいいから!助けて下さ・・・うわっ!」
俺はバランスが取れず、落ちてしまった。
(落ちたら大怪我負うかな?もしかしたら死ぬかも、そしたらまた魔人に・・・)
そんな事を思いながら俺は目を瞑った。
「よいしょっと。」
すると突然、何かに受け止められた。
目を開けると、姫様の顔が近くにあった。
「大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です・・・」
姫様が俺を降ろしてくれた。
それにしても姫様にお姫様抱っこされるとは一本取られたな。
「もう一回やりますか?」
「結構です!」
姫様がシュンとなって盛り上げた岩を元に戻した、そんなに俺を落としたいのかよ・・・
「それはそうと地属性魔法って何ですか?」
「その名の通り地を操る魔法ですね、さっきの様に盛り上げたりへこませたり出来ます。」
なるほど、分かりやすいな。
「岩をマナで引き寄せる事とか出来ませんかね?」
俺が疑問に思っている事を聞いてみた。
「良い所に気付きましたね、マナで引き寄せられるだけマナを集めて岩にくっつけて引き寄せれば可能です。」
「姫様は出来ますか?」
「簡単です。」
そうすると姫様は目を閉じて集中した、するとあらゆる方向から岩が凄い勢いで飛んで来た。
「どうでしたか?」
「凄い!感動した!姫様は天才!」
俺がこう言うと、姫様は凄く嬉しそうな顔をした。
「よーし!風魔法の応用も見せましょう!」
姫様が調子に乗ってきたようだ。
「それ!」
姫様の足元から突風が吹き、姫様が上に飛んだ。
その後も姫様は足から突風を吹かし、横に、上に、下に飛び続けた。
やがて姫様が降りて来た。
「どうでしたか?風魔法はこんな事も出来ますよ!」
「やってみたいです!」
元気よく俺がそう答えると、姫様も元気よく了承の返事をした。
「体の中のマナを足に流すイメージです!」
「はい!」
「バランスを取って下さい!もし落ちたら私が受け止めます!」
「分かりました!姫様!」
「うわー!落ちるー!」
「手から風を出して減速してください!」
空を飛ぶ特訓は、夜ご飯の時間を超えている事に気が付かないほど続いた・・・
「「疲れた~。」」
俺と姫様が部屋に戻ると、あまりの疲れに二人とも倒れてしまった。
「私、こんなに疲れたの久しぶりです・・・」
「あぁ~ご飯とか風呂とかどうしましょう・・・」
「保存食に干し肉がありますからそれで済ませましょう・・・お風呂は近くに銭湯がありますからそこで済ませましょう・・・」
そうしようと俺も賛成して、俺と姫様は干し肉を何個か食べ、銭湯に向かった・・・
「それで?あのゴーレムタイプについて何か分かった?」
「いえ、まだです・・・」
「そもそも魔人が魔人を襲うなど聞いた事がありません、会長。」
「光となって消えてしまいましたので探しようがありま・・・」
「もう結構!引き続き探しなさい!」
「「「かしこまりました!」」」
「考える事はどこも一緒だな。」