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魔法の訓練

 「すいません、今日は私、予定がありますので訓練は休みです。」


 翌日の昼過ぎ、赤牙はエイルからこんな書置きがあったので、城下町を散歩していた。


 「散歩を始めて数時間・・・もう飽きて来たな、門の外へ行って素振りでもやるか。」


 「おーい、そこの兄ちゃん!素振り用の剣なら貸してもいいぜ!」


 エイルの部屋へ素振り用の剣を取りに行こうと思った時、突然誰かから声を掛けられた。


 「あんた誰ですか?」


 「兄ちゃんの彼女が青銅の剣やら槍やら買わなかったか?俺はそれを売った武器屋だ。」


 「あの姫様は彼女では無く同居人ですよ。」


 「・・・え?」


 「だからあの姫様は・・・」


 「あー・・・もういい、分かった。」


 「?」


 この武器屋は、昨日訓練に門の外へエイルと行った赤牙をからかうつもりで一国の姫を彼女と言ったのだが、赤牙はそれに気付かなかった。


 さらに赤牙が、エイルを同居人と何の羞恥心も無く言ったのを見て、もう呆れたようだ。


 「それよりも、素振り用の武器だが・・・」


 「ちょっと待ってくださいよ武器屋さん、俺は金持ってませんよ。」


 「何を言ってるんだ、兄ちゃんの・・・同居人が昨日あれだけ商品を買ってくれたんだ、貸し出し位タダで何時間でもやってやるぜ。」


 「でも・・・」


 「何なら兄ちゃんの同居人のツケにしてもいいぜ。」


 「じゃあそれで。」


 「兄ちゃん、少しは同居人に遠慮・・・」


 「する訳無い。」


 「・・・分かった、ツケにしとくよ。」


 武器屋がまた呆れ、赤牙に丁度いい武器を貸し、とっとと立ち去ってもらった。


 すると、向こうから女が武器屋に近寄って来た。


 「いらっしゃい!どんな武器をお探しで・・・」


 武器屋が挨拶をすると、水色の髪をして、お菓子の袋を両手に持ちながら、意気消沈しているエイルが歩いて来た。


 「嘘でも彼女とか言われたのに少しは恥じらったらどうなんですか・・・しかも私にツケを作るとかひどすぎますよ・・・嘘でも彼女とか・・・」


 そんなセリフを連呼しながらエイルは赤牙を追いかけて行った。




 「ほっ、へっ、はっ!ほい!うん、昨日よりは大分速くなってるな。」


 赤牙は、エイルの剣筋をイメージしながら素振りをしていた。


 「問題はパワーなんだよな・・・何かいい方法は・・・」


 その時、草むらが揺れた。


 「ゴブリンか!?」


 険しい顔をしながら音がした方向を警戒する。


 「ワン!」


 草むらから出たのは犬だった。


 「何だ・・・ただの犬か。」


 さらにもう一匹出て来た。


 また一匹、また一匹、また一匹、また一匹、また一匹・・・・・


 ついに赤牙は犬の大群に囲まれてしまった。


 犬達は涎をたらしている。


 (あぁ・・・終わった・・・)


 赤牙は目をつぶってしまった。


 犬が飛びかかる構えをした。


 「「「「キャウン!!!」」」」


 その時、赤牙の体が光に包まれ消えてしまった。


 犬達はその光で目が眩んでしまった。




 「お前、大丈夫か?」


 「え?」


 赤牙が目を覚ますと、そこに、灰色の髪をした赤牙と同い年に見える男が立っていた。


 「俺が助けて無かったら、今頃あの犬の大群に肉食われてたぞ。」


 男が下を指さしていたので、下を向くと犬達がまるで失明したかの様に周りを右往左往していた。


 「あの犬達は光に弱い、俺が使う光だったら二度と景色を拝める事は無いだろうよ・・・あ、ちなみにここは門の高台だ。」


 「わざわざ説明ありがとうございます。」


 赤牙は社交辞令を返した。


 「しかしお前の素振り下手くそだな。」


 「やっぱりですか・・・」


 「どう振れば良いのかは分かっているが力と速さが足りて無い。」


 「やっぱりですか・・・」


 「うん、ちょっと端から端まで全力で走ってみてくれ。」


 赤牙は高台の片方の端まで行き、もう片方の端まで全力で走った。


 「走りましたけど。」


 「うん、これぐらいじゃ疲れないか、じゃあ今度は右足だけでやってみてくれ。」


 「えっ!?」


 赤牙は少し疑問に思ったが、男の言う通りに右足だけで端から端まで走った。


 「どうだった?」


 「右足だけが疲れました。」


 「右手で剣を持つなら、右足だけで走った方が力も速さも付くから効率が良い。」


 「でもそれだと左が退化するのでは?」


 「左は魔法でカバーすれば良いじゃないか。」


 「俺、魔法使えないんですけど・・・」


 「魔法を使うにはマナをいじる必要がある。」


 「マナ?いじる?」


 「マナも知らないのかお前は・・・マナと言うのは空気にほんの微量含まれている気体の事だ。それを集めたり燃やしたり凍らしたりして出来る物が魔法だ。ちなみに俺がさっき使った光はマナを目にも留まらぬ速さで燃やして出来る物だ。後、空気の中に含まれていると言う事は、俺達は常日頃からマナを少量吸っている訳だから、ほどんどは排出されるけどマナはある程度体の中に残っている。」


 「はぁ、なるほど・・・俺にも使えますかね?」


 すると男は少しニヤッとした顔をした。


 「誰にでも使えるよ、集められるマナが燃やせたり凍らせたり出来る量だったらね。」


 「量?」


 「さっきも言ったけど体の中に残る量は人間はほんの少しなんだ、だから魔法を使える人間は限られているんだよ。」


 「えぇ~!?それじゃあ一生使えない可能性だってあるじゃ無いですか~」


 「ハハハハハ、まぁ試しにやってみな、マナをどうするかを頭でイメージして手に集中させるんだぞ。」


 赤牙は諦め半分でやってみた。


 (頭でイメージして手に集中・・・マナをどうするか・・・力もスピードも足りないんだ・・・どっちかを取るとすれば魔法は・・・スピード・・・スピード・・・スピード・・・左手で早く飛ばせる物・・・そうだ・・・風だ!)


 イメージ完了、赤牙は左手を前に出した。


 「うおっ!」


 男のバランスが崩れた、どうやら風は出せたらしい。


 「よっしゃ!魔法出来たぞ!」


 (風を作るにはマナを空気にして高圧にしたり低圧にしたりしないと作れないから、かなりのマナが必要なんだが・・・こいつ化け物か?)


 「どうでしたか?」


 「・・・・あ、うん、フェイントには持って来いかも知れないな。」


 「そうですか!ありがとうございます!初対面の俺に助言をくれて!」


 「お前があまりにも未熟だったからだ、これで少しはマシになっただろう。」


 「では俺はそろそろ帰ります、ありがとうございました!」


 「おう、じゃあな。」


 こうして赤牙は帰って行った。


 (ゴーレムタイプがオーガタイプを襲ったと聞いて昨日からゴーレムタイプを探していたら、あんな伸びしろがある奴見つけられるとはな・・・そう言えば名前聞いて無かったな。)


 男が少し後悔して、今日もゴーレムタイプを探しに行った。


 今訓練をした相手がそのゴーレムタイプだとは知らずに・・・

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