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Prologue
日付が変わったことを知らせる鐘が響く。
街の外れにある墓地に彼女はいた。
この下には誰もいないと聞いていた。あるのは名前の彫られた墓石だけ。それでも時間ができると、彼女の足は自然とここへと向いていた。
彼女は目的の墓石の前まで来ると、しゃがんでその石を撫でる。横に並んだ四つの墓石。十年前、野党に襲われて亡くなった一家のものだ。刻まれた名前を指でなぞり、順に淡々と読み上げる。
厚い雲に覆われた闇の中では彼女の表情まで伺い知ることはできなかった。
「リュシアン・オルブライト……」
三つ目まで読み上げると彼女は立ち上がった。
「また……来るからね」
掌を強く握りしめながらも、優しい声色でそう告げる。
読み上げなかった最後の墓石を一瞥し、彼女はそれに背を向け歩き出した。




