『肆の噺:峠道』
その年の映画でバイクの映画が公開された。
オレはバイクレースがかっこよく、よく山の上の峠道をスピードを出して滑降していた。
ウォークマンで英語の主題歌をかけると、聞きながら主人公になりきって、峠道を走っていた。
いわゆる、中二病というやつだったのかもしれない。
当時はそういう言葉すらなかったが、確実に中二病だった(笑)
ある時、いつものように峠道をコスリンを荷台にに座らせ滑降していると、
50m先の次のカーブに黒い影が見えた。
「ん?」
その瞬間、かばんの中に入れている竹筒から、コンちゃんがものすごい勢いで黒い影に向かい
飛び出していった。
しかし、その影に近づいた瞬間、コンちゃんは吹き飛ばされてしまった。
「コンちゃん」
(やばい。)
瞬間的に思った時、黒い影がオレに向かって突進してきた。
すると自転車のタイヤが滑り横転し、オレと自転車は地面を転がりながら滑った。
そのまま、ガードレールの支柱に激突。
オレがその場で、うずくまっていると、コンちゃんがきた。
「大丈夫?」
「キューキュー」
「あっああ。いてててっ。コンちゃんコスリン大丈夫?」
「大丈夫だわさ。」
「キューキュー。」
「そうかよかった。」
一瞬の出来事だった。
ガードレールの方に目をやると、その外側は50mほどの崖になっていた。
「マジか。」
オレは落ちなくてよかったと安堵した。
家に帰ると両親には何も言わず、自転車でこけたとだけ言った。
その晩、オレの目に瞬きが止まらないという症状が現れた。
違和感がわかったのは、夜、布団に入ろうとすると、コスリンが入ってこない。
「コスリン?」
そういえば、今日は見てない。
「ん?見えてない?」
管狐のコンちゃんの竹筒を開けるも、中に居ない。
「マジ?見えなくなった?それになんだ?瞬きが止まらない?」
(昼間の黒いモノに障られたのか?)
考えても仕方ないので、その夜はそのまま寝た。
いつもオレの傍にいてくれた、コスリンやコンちゃんに会えないと寂しい。
それに、多紀理ちゃんにも、もう会えないような気がし、布団の中で泣いた。
次の日、両親に目の事を言うと、母親と神経科の病院に行くこととなった。
診察を受けるとチック症という聞いた事もない病名を聞かされ、
薬をもらい飲んでいたら、1週間ほどで収まった。
しかし1週間目、夢の中で多紀理ちゃんが悲しい表情で現れた。
すると、「もう会えないのかな?」と目の上にそっと手をかざしてくれた。
その手は暖かかった。
目が覚めるとコスリンとコンちゃんが見え出した。
「よかっただわさ。」
「キューキュー」
「うん。」
(多紀理ちゃんありがとう。また、キミを見る事ができるよ。)
心の中でそう呟いた。