『参の噺:雷雨』
2年生にあがったその年、梅雨に大雨が降り同時に雷がそこらじゅうで落ちていた。
「最近、雷が多いな~。また、火事になってんのか。」
「それは、雷獣のしわざだわさ。」
竹筒から、ひょこっと首を出して話しかけてきたのは、前回、おきつね様から譲り受けた、
管狐の、コンちゃんだ。
コスリンは鳴くだげだか、コンちゃんはしゃべれた。
「雷獣?」
「そう。雷を操る妖怪だわさ。雷自体で出来てるって噂だけどね。」
「ふ~ん。そうなんや。」
その時は、聞き流していたが、次の日の夜布団に入って寝ると、
コンちゃんから警報が発せられた。
「学校。危ないよ。」
「ん?何?」
「明日、学校に雷獣が現れるかも?」
って
「おきつね様より連絡があったんだわさ」
「いつ?」
「今しがただわさ。」
「じゃね~で、学校にはいつ頃?」
「台風がきてるじゃない。だから早朝かな?」
「そうなんや。対処方法は?」
「おきつね様が言うには、実体が雷だけど、一度人間に切られた事があるみたいだわさ。」
「う~ん。僕にもできそうか?」
「だいぶ危ないけどね。」
「判った。学校の為っちゃ。」
オレはこっそりと布団から出ると着替えた。
「準備ができたよ。」
「はいさ。じゃあ、店の鏡を使おう。」
店に足音を立てないように降りていく。うちは、散発屋を営んでいたので、大きな鏡がある。
店の鏡の前に着くと、コンちゃんが
「雲外鏡のじい様。じい様」
と呼ぶと、店の鏡の中がぐにゃりと曲がると大きな老人の顔が現れた。
「なんじゃ。誰じゃ?騒がしい」
「わたしよ。」
「おおう。おきつね様の所の管狐か。」
「そうだわさ。」
「なっなに?人間の子供がいるではないか。」
「大丈夫。今は私この子に使えてるの。」
「そっそうか・・・って肩に、すねこすりまで。」
「キューキュー。」
「何者じゃこの子は。」
「多紀理様のお・気・に・入・り。」
「なぁなんと。それはすごいな。」
多紀理ちゃん、本当にすごいんだと思うと、少しクスッと笑った。
「お願いがあるの。」
「なんじゃ。」
「雷獣を倒す為、立花家の蔵まで、道を繋げてほしいの。」
「お願いします。学校を守りたいんです。」
「立花家って道雪の業物か?」
「そうだわさ。」
「わかった。」
店の鏡が一閃するとトンネルのような道が現れた。
コンちゃんが鏡に向かって飛び込むと鏡に入った。
「早く。」
オレが鏡に手をそえると、鏡にコスリンともども吸い込まれると
光の窓枠がいっぱいあった。
光の道が現れると遠くの光の窓に繋がった。
体が宙に浮くと、その道に沿ってすごい勢いで飛んでいった。
一つの光の窓に着くと、そこから外へと投げ出された。
「痛たたた。」
そこは、真っ暗な土蔵の中みたいだった。
「さぁ。よく目をこらして見回してみて。」
オレは目をこらし辺りを見渡す。
すると、ひとつの長い木箱から青白い炎のようなモノが上がっている。
「それだわさ。」
木箱を開けると、刀が入っていて、手にとった。
「それが、唯一、雷獣を切れる『ライキリ』だわさ。」
「よし。じゃあ学校に行くっちゃ」
また、鏡の前に立つと、コンちゃんが
「今度は学校までお願い。」
「やれやれ。妖怪使いの荒いやつじゃな。」
と雲外鏡のじい様が現れると、又鏡に吸い込まれ一気に学校まで行けた。
学校に着くと、急いで屋上まであがる。
台風により暴風雨状態で、雷が徐々に近づいてきている。
雷が目視できるところまで来たとき、天空に光っている獣の姿を認識した。
「あれか。」
「そうだわさ。」
「でかっ。20mはあるぞ。コスリン降りてろ。」
天空でグルグルと暴れまわると、一気に地上へと駆け下りる。
その時、同時に雷も落ちている。
「くるよ。」コンちゃんが叫ぶ。
「よし。」
オレは鞘から刀を抜くと、身構えた。
剣道はした事がなかったが、小学生時代少年野球をしていたので、動体視力には自身がある。
玉が止まって見えていた。
ゴロゴロゴロ。
ピカッ
一閃の光が走ると、学校に向かって雷獣が駆け下りてくる。
オレはすかさず、ライキリを振り降りした。
「ウォーーーーーーーーーン」
光が学校に到達する瞬間、光が四散すると辺りが暗くなった。
すると、目の前に30cmくらいのかわいい雷獣がちょこんといた。
「はぁ?なにこいつ。」
「ライキリで切ったから、小さくなったんだわさ。」
すると、天空からまた一閃の雷が落ちると、3mほどの裸の大男が立っていた。
「ごめんごめん。俺は雷神。こいつの飼い主だ。」
「はぁ?」
「いや~。こいつ放電がうまくできなくなって。どんどん大きくなって逃げ出したんだ。」
(って命がけでやったのに、単なるペットの迷子かよ。)
「迷惑かけたな。なにかあれば力になるから。」
と雷神は雷獣を抱えると、天空へと一閃飛んでいった。
「なぁコンちゃん。なんだったんだ。」
「う~ん。学校を守ったって事だわさ。」
コンちゃんはニヤッと笑った。
オレはため息をつくと、立花家に『ライキリ』を帰しに行くと自宅に戻った。
店の鏡から出たオレは、雲外鏡のじい様にお礼を言うと、パジャマに着替え布団に潜り込んだ。
「コスリン、コンちゃん、おやすみ。」
コスリンはオレの布団に潜り込み、コンちゃんは、竹筒へと入っていった。
次の日、日曜日でよかった。オレは昼過ぎまで寝ていて、早く起きろと両親に怒られた。