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『弐の噺:こだま』

 学校行事として、親睦会を兼ねての努力遠足が開催された。朝6時に朝見神社集合。

山道を歩いて、志高湖まで30km、、、


(遠足じゃないって!何で遠足で努力?。わからん、、、)


と思いつつも、学校行事だから仕方なく参加、出発。

しばらく歩くとコスリンが現れ、オレは転げそうになった。


「おいで。」


コスリンがオレの肩へと登ってきた。

傍から見るとオレは独り言を呟いているアブナイヤツ、、、


まぁそんなこんなで、無事志高湖までゴール。

志高湖は、山の山頂付近にある湖だ。

なんで皆、山に向かって叫びだす。


「ヤッホー。」

「やっほー やっほー やっほー。」


皆の声がこだまとして返ってくる。


オレも叫んでみた。


「ヤッホー。」

「あぶないよ。気をつけて。」

「はぁ?」


こだまが返ってこない代わりに妙な言葉が返ってくる。

それは、周りの皆には聞こえていないみたいだ。


「コスリン、聞こえたか?」


コスリンが頷く。


「ヤッホー」

「あぶないよ。あぶないよ。」


声のするほうへと、歩いていく。

茂みの中に入ると、突然一本足の妖怪が現れた。


「山彦」


咄嗟に声を出してしまった。

山彦はあたふたとし、どうしていいのかわからないみたいだ。

オレは一呼吸おき


「山彦だよね。」


とたずねた。


「うん。」

「あぶない。ってどういう事?」

「皆が立っているあの展望台あんなに乗ったら壊れちゃうよ。」

「マジ?」

「うん。あそこ10人まで。」


展望台が崩れたら大惨事だ。

オレは山彦に、何かいい方法がないか聞いたが、重量を軽くするしかないみたいだった。

そして、人数制限の立て札が抜かれてる事を聞いた。


オレは慌てて、展望台の方に走った。展望台の辺りを探すが立て札がない。

とりあえず先生に、重量オーバーで壊れると告げたが、情報源が情報源だけに


「頑丈だぞ。」と取り合ってくれない。


オレは、展望台を降りると、また立て札を探した。

(今、おおよそ30人ぐらい乗ってるから早くしないと。)

展望台の下を見たら、あった。湖スレスレの所にある。


オレは、何とか手を伸ばしてみるが届かない。


「コスリン」


すねこすりが、立て札にぶつかる。

すると、転げてこちらに来た。


「よし。届いた。」


立て札を持つと、先生の所に持っていった。

先生が「皆降りろ」と叫ぶと、展望台がギシギシと音をたて出した。


「早く降りろ。」


オレも叫んでいた。

展望台が傾きだし、ほとんどの生徒は展望台から降りたが、恐怖で降りれない女の子がいた。


オレは、決死の思いで展望台に上がると、手を握り「行くぞ!」と大声を上げ女の子と地面に飛び降りた。

その瞬間、ガラガラガラ音をたて展望台が湖の中へと崩れていった。


「ふ~。間一髪。」

「あっ。ありがとう。」


と女の子はオレに言うと、オレに抱きつき泣き出してしまった。

オレは仕方なく、しばらくそのままで居た。


先生は、志高湖の管理事務所へ行き、事の詳細を伝えた。

女の子は泣き止むと、照れくさそうに「ありがとう。」ともう一度オレに言うと皆の所にかけて行った。


オレは、山に身体を向けると「ありがとう。」と叫んだ。


すると「よかった。よかった。よかった。」とこだまが返ってきた。


帰りはロープウェイを使い、ラクテンチまで降りると、ラクテンチで解散となった。

オレはこの日の為、また母親に稲荷寿司を注文していた。

乙原稲荷神社へよると、稲荷寿司を備えお参りをした。


顔を上げると、又おきつね様が稲荷寿司を食べていた。


「ひさしぶりだね。」

「はい。いつぞやはどうも。」

「まぁ。お前をからかう事ができないからね。」

「あの時のお詫びにこれをやろう。」


おきつね様は竹筒を一本オレに渡した。


「これは?」

「私のクダよ。」

「お前を守れって言い聞かせてあるから、持っていきな。」

「はい。ありがたく頂戴いたします。」


竹筒をもらうと、深々と礼をし踵を返した。

少し歩くと


「また、来ることがあったら持ってきておくれよ。稲荷寿司。」


と後ろから声が聞こえた。


「はい。ではまた。」


と振り向かずに手を振った。

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