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【書籍化・完結済】少女とドラゴンと旋風(つむじかぜ)  作者: 香住なな
第二章 王都へ
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第6話

 

「小娘、どけ」


 にらんでくる大臣を、まっすぐにらみ返す。


「どきません。

 フィアに近づかないでください。

 それ以上近づいたら、フィアだけじゃなく、ドラゴン全員を敵に回しますよ」


 何度も警告してるのに、無視して近づくなら、攻撃とみなされる。

 ここからでは見えないけど、仕切りにいる二体がこっちに敵意を向けてるのが、肌で感じられた。

 ドラゴンは同族を大切にするし、子供はもっと大切にするから、幼生への攻撃はドラゴン全員を敵に回す行為だ。


「平民の分際で、わしに口答えするな!」


 顔をゆがめてどなった大臣が、私に向かって一歩踏みだす。

 ウィルさんが動くより早く、突風が吹いた。


「うわあっ!」


 風は私とウィルさん以外の全員を背後の壁にまとめて叩きつけ、そのまま押さえこむ。

 悲鳴がいくつも重なったけど、風の音に散らされた。


【アリアの言う通りだ、てめえら全員ぶちのめすぞ。

 幼生だけじゃねえ、アリアへの手出しも許さねえからな】


 いつの間にか鞍をはずして竜舎の入口にいたディドさんが、怒りを含んだ口調で言う。

 二体のドラゴンも、仕切りから顔をのぞかせて、こちらをにらんでいた。

 今の風は、ディドさんの力だろう。

 空を飛んだり膜を作ったりする以外にも、風の利用方法は幅広い。

 

「……アリア、ディドはなんと言ったのかな」


 彼らを順番に見たウィルさんが、硬い声で問う。

 通訳すると、ウィルさんは小さくため息をついた。


「彼らにかわって謝罪するよ、すまなかった。

 だが私たち竜騎士団は、フィアや幼生にも、アリアにも、危害を加える気は全くないことは理解してほしい」


【それはわかってるが、そのバカどもを竜舎に入れてる時点でダメだろうが】


 言われる前に通訳すると、ウィルさんは困ったような表情になる。


「……おそらく私がでかけている間に、竜騎士の誰かが大臣に知らせたのだろう。

 竜騎士団の団長は私だが、竜騎士団を含む近衛騎士団の総帥は王太子殿下で、王太子殿下が地方視察でご不在の今は、軍務大臣が代行している。

 国防の要であるドラゴンの不調を気にして様子を見にくるのは、当然のことなんだ」


「だからって、調子が悪い相手を力ずくで調べるなんて、していいわけないでしょう」


 ドラゴンに力ずくは無意味だけど、力ずくで何かしようとすること自体が許せない。

 私の言葉に、ウィルさんはさらに困ったような表情になる。


「それは、そうなんだが……」


 ウィルさんは、フィアを守ろうとはしてくれたけど、彼らを問答無用で追い出すことはできないみたいだ。

 ちらっと視線を向けると、大臣は壁に風で押さえつけられたまま何かわめいてるみたいだった。

 今は風の膜があるから聞こえないけど、解放したら、さっき以上にどなりちらして、乱暴なことをしようとするだろう。 


「ディドさん、その人たちがいるといろいろ面倒だし、全員まとめて竜舎の外に放りだしちゃってくれない?」


【そうだな。

 こいつらが幼生やアリアのことを知ったら、何しでかすかわからねえ】


「ちょっと待っ……」


 ウィルさんが何か言うより早く、ディドさんが再び風を操って、大臣たちを壁から浮かびあがらせた。

 逃げ出そうともがいているのを風の膜の中に閉じこめて団子状態のまま空中を運び、入口にいるディドさんの頭上を越えて、竜舎の外に出した。


【訓練場まで放りなげて、戻ってこれねえよう風で押さえつけといたぞ】


 にやっと笑ったディドさんに、うなずいて笑い返す。


「ありがと、ディドさん」


【おうよ。

 おいフィア、こいつがこの前話したアリアだ。

 邪魔な人間どもはいなくなったから、アリアと話してくれや。

 こいつは人間だが、俺たちの味方だ。

 幼生を守るために、竜騎士の奴らと交渉してくれるぞ】


 ディドさんの呼びかけに、フィアの背中がぴくっと揺れた。

  

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