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【書籍化・完結済】少女とドラゴンと旋風(つむじかぜ)  作者: 香住なな
第一章 湖のドラゴン
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第1話

初投稿です。よろしくお願いいたします。

 ばさり。



 翼を大きく広げて、上下に動かす。

 風を呼び、風をまとう。

 身体がふわりと浮いた。



 ばさっばさっ。



 続けて大きくはばたいて、空の高いところまで上がる。

 雲の上はいつでもすっきりと晴れていて、美しい。

 気流に乗って翼を数回動かすだけで、里がある急峻な山脈は見えなくなる。

 本気を出せば風より速いが、今はのんびりと飛ぶ。

 遠くに見える海がきらきらと輝いて、きれいだった。





















 懐かしい夢を見た。


 ゆっくりと目を開けて、見慣れた天井を見つめる。

 寝起きはいいほうだけど、空を飛ぶ夢を見た朝は、いつもより爽快な目覚めだ。


「本当は、夢じゃないけど」


 小さな声でつぶやくと、苦笑いがもれる。

 いつも夜明けと同時に起きるが、今はまだ薄暗い。

 同じベッドで眠るエリンを起こさないように、そっとベッドを出た。

 両腕を上に突きあげて伸びをすると、音を立てないよう気をつけながら手早く身支度する。

 着替え終わった頃に、エリンがもぞもぞ動いた。


「アリア……もう朝……?」


 半分以上眠ったままの問いかけに、反対側のベッドで眠る二人を起こさないよう小さな声で答える。


「ううん、私が早く起きちゃっただけ。まだ夜明け前よ」


「……そっか……」


 エリンはうなずいて、すぐまた眠ってしまった。




 きしむドアをなるべくそっと開けて、廊下に出た。

 薄暗い廊下を静かに歩いて、裏口から外に出る。

 夜明け前の空気を、胸いっぱいに吸いこむ。

 少し冷たいけど、きもちよかった。


 夜明けを迎えた空は、人間には作り出せない繊細なグラデーションを描いている。

 とてもきれいだけど、私はもっときれいな光景を見たことがある。


「上から見たほうが、きれいだったな……」



 空を飛ぶ夢。



 あれは、本当は『夢』じゃなく、前世の私の記憶だ。

 思わず自分の身体を見回して、ため息をつく。 











 前世の私は、人間嫌いのドラゴンだった。



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