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暗闇の底で ーIn The Nightmareー

「ありきたりすぎてつまらない展開、だ」目覚めは最悪よりは少しはましだった。たとえ裸に剥かれ、両手両足と首に呪文の刻まれた呪力環リングめられていようが自我があるという事は最悪よりは、少しはましというものだ。


 殺風景な部屋だった。形は私が居る場所を中心とした円環えん、その四方に配置された扉の印章によって、この部屋は上下方向の広さを持たせられ、球を、すなわち閉じられたこの世界を表している。空間に封じ込まれた複雑な魔術式を読みとる。やれやれ、いつの世も行き着くところは同じか、この魔術式は


「「神の喚起」」


 空間に私と老人の二つの声が反響し、それとともに、印章の記された扉を割るようにして四つ、鎧の塊が現れる。


「貴様には四聖隊このものたちと闘ってもらう」その声が終わる前に、現れ出た四人は身に纏う鎧の重厚さを感じられぬ素早さで私に殺到する。


 大男の大鎚が振り下ろされ、危うく避けた所に痩身の男の槍刃が幾重にも突き込まれる。その槍刃の間を縫うようにして舞うように剣閃が突き込まれ、しまったと思ったときには私の左手は宙を舞い、ただ一人動かぬ女の手中に収まっていた。


灰は灰にアッシュ…」自身の離れた肉体に意志を通す間もなく、女の振るう短剣の一薙ぎは私の左手を灰燼と化した。


「どんな奇術トリックを使った。ヨシュア」私は呆れながら問うた。その一連の動きは達人同士の連携というレベルすら超え、一つの生物器官にすら達している。


「さすがにもう気づいたか、百足むかでの脚。と、そういえば理解してもらえるかな」老人その声には種を暴かれた手品師の焦りもなく、事実のみを淡々と告げた。


「なるほど、死角の無い連係攻撃の種は、動かすあたまが一つ、というわけか」


「それだけではない、三点を基準とした攻撃の軌跡により多面的な召還陣を空間に描記、それによる高次元の仮想構築、そこに神の威を導き魔を滅ぼす最上の布陣」


「なるほど、な」私は再生しない左手を見ながら今日、何度目かわからないため息をつく。



 深淵、たゆたう、それは自らの伸ばされた触手の一部に違和感が生まれたのを知覚した。人ならざる者のその感覚をあえて人の感覚にたとえるならばそれは不快感、だったろうか、断続的にその触手の抱えるあわから漏れ出るその痒みをそれは、煩わしいと認識した。


 だが、そこに自身を伸ばすには、その亀裂はあまりにも狭苦しく不出来だった。そこでそれはいつも通り、その狭苦しい穴に自身の一部を送り込む事にした。

「神による魔物きさまらの一切の浄化、それが我々の望みだ。その呪力環リングはこの闘いを魔力に変化しそれを天上に放出、その魔力砲カノンによってこの世界に亀裂を生じ、神の進入孔を造りあげる」


「やれやれ、だな」奴の一言、一言のうちに、左手の肘から先が、右足首が宙を舞い、短剣を持つ女の「灰へアッシュ」の呪詞ことばとともに灰燼と化す。


 頼みもしない老人やつの長口舌は神という存在に私を捧げるための祝詞のりとだ。


 私の自由は奪われ、この魔術式の最後の部品として丁寧に丁寧に斬り刻まれる。いつものように煙草シガリロをくわえようとして、舌打ちをひとつ、まったく、やれやれ、だ。


 時震じしんの兆候に気づいたのは当然ながら私の方が先だった。「ヨシュア、悪いことは言わない、これ以上はやめておけ」無駄だと思いながらも忠告だけはしてやった。が、「命乞いならもう少し気の利いたものにするのだな」それに対する返答はほぼ予想通りだった。


 神の眷属がこの世界に割って入る時に生じる時震それ、が始まると同時に四聖隊の動きが急加速した。そして、その身に青白い炎が陽炎のように立ち上る。聖域、つまり神の眷属がここに存在するための力場が彼らを浸食し始めたのだ。


 そして、それは受肉した。


 そいつは、肉の塊に見えた。奇怪な顔がオブジェのように浮かんでは消える。そして私達の脳をまさぐり高次な存在がこの次元で活動するために無理矢理に自分の身体を折り畳む。


「なんだこいつは」その醜悪な様子に彼が叫んだ。思わず私は苦笑する。

「なんだとはご挨拶だね、あれがお前達の言う神とやらさ、正確にはその一部だが…、私達は監視者ウオッチャーと呼んでいる。

『神はあらゆる者の似姿をもち、この世界に顕現する』貴様らの持つ聖なる書の御言葉通りという訳さ」


 大源より伸ばされたそいつは、この次元で存在する為に我々の中に在る想像力イマジネーションと言う名のグラスを必要とする。


 器に満たされる液体の名は絶望。そいつは速やかに死に至る病を引き起こす。


 そいつは魔法陣の中心で脈打つように膨張し、それ以上の成長が望めない事を理解すると代わりに己自身から肉の触手を伸ばし出す。


 そして異常に気づいた聖徒達がこの部屋になだれ込むが、有効な打撃を与える間も無く己自身の絶望に喰われ、茫然自失と化したところでその触手に捉えられ血煙と化す。

 

 その様はまるでその身から血を吹き出し続ける醜悪な心臓のオブジェ。そうして、四聖隊さえもが血煙と化した。


 しかし、その中で幸いな事は、私が人間かれらの血を浴びた事だ。やつの被造物たる私達がそれに抗するのに必要な、律法を破る者たちの血を!!



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