1日目② 把握
今まで特別なことをしてきた訳じゃない
善行をしてきた訳じゃないけど悪行を働いた覚えもない…多分…
なぜ俺がこんな目に…
とりあえず状況を整理すると
・人から見えていない
・今までの生活の痕跡がない
・物には触れるからいつの間にか死んでた訳ではない
こんなとこだろうか
幽霊というよりは透明人間だな…
「イケダさんですか?」
うなだれてた顔を上げると知らないおっさんが俺の顔を覗いていた
「そうですけど、どちらさ…」
…あれっ?見えてるのか!?俺を?
「いやぁ、災難だったねぇ」
「俺の事が見えてるんですか?」
「あぁ、私も君と同じ境遇でね」
俺だけでは無かったのか…
少しの安堵と共に疑問も浮き出てきた
「何で俺の名前を?」
まぁまずはこの辺りだ
「私たちは毎朝の放送をチェックしてできるだけ新入りを迎えに行ってるんだ」
私たち?
「私たちと言うことは他にも?」
「あぁ、私のグループは50名程で行動している。…おっと、私の名前はヤスダだ」
「俺たちみたいのが50人も…」
「あの放送が始まって半年は経つんだ名簿に記してるだけでも千人は確認してるよ」
そう言えばそうだ、1日8人だとして180×8で1400人程度いるわけだ…
「俺はどうなってしまったんですかね?」
まぁこれが一番気になるな…
「まぁ今の状況の通り、普通の人たちからは見えてないし以前の個人情報などは消滅している」
「これ以上は実際に経験しなければ信じられないだろう…いずれにせよ我々の常識から外れた出来事だ」
何があると言うんだ…
しかし同じ境遇の人間がいたと言うことは心強いな
「一人でも食うには困らないだろうが身の安全は守れないだろう、我々の所に来るといい」
「危険?何がですか?」
「君はインビジブルと言う映画は観たことあるかい?」
「ありますけど…透明人間が人を襲うやつですよね? ……!!」
「あぁ我々も透明人間のようなものだ」
「仲間かいるから私たちは孤独ではないが仲間ではない人間の中にはモラルを失った奴等もいる」
そうか…こちら側には警察も干渉できないのか…
確かにこの状況を利用しようとする輩もいるだろうな…
「確かに覗きや盗みもし放題ですしね」
俺がそう言うとヤスダさんは少しばつの悪い顔をした
「私たちも向こうの法律を全て守ってる訳ではないんをだ…」
「我々が独自に食料などを生産するのは難しいんだ…だから最低限の必需品は拝借している」
確かに…食料を作るにはそれなりに土地がいる
管理の行き届いたこの国ではそんなもの確保できないだろうな
「しかしモラルのかけた行動は最低限にして秩序をもった組織を作るという考えを持つのが私達のリーダーなんだ」
なんか釈然としないな…
俺たちを認識できない奴等に気を使ってどうなるんだ
「何か釈然としないようだね」
「エッ…」
顔に出てたか…
「まぁ私も解るよ、私も始めはそうだった」
「我々はこちら側を隙間の世界と呼ぶのだが、そんな世界にルールを作ろうとしているリーダーの考えを聞けば共感出来ることも多いだろう」
「…話は聞きましょう、常にあなたたちと行動するかは解りませんが」
「聞きに来てくれるだけでも良かったよ。 あっ、そうそうリーダーの名前はシジマと言うんた」
シジマ…そいつがキーパーソンになるのだろうか……