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NGの日

「俺さ、この間社長に呼ばれた」

あ、知ってる。いきなり名指しで会議室の方に呼び出されて、出てきたときの大和くんの顔がやけに深刻だったから、気にはなってたんだけど。会社ではお互い仕事の話以外っていうか話しかけないようにしてるから聞けなかったし、ウチに帰って来てもそのことについては大和君から報告はなくて、何だかそのときの表情思い出したら、私も気楽に聞けなくて……


「そいでさ、『大和、もうお前何年樹里と暮らしてるんだ。樹里は来月幾つになる?ふらふらしてんでいい加減けじめつけろ』って社長に叱られた」

 社長はもちろん私たちの会社の社長なんだけど、早くに父親を亡くして母一人子一人で育った大和くんには父親みたいな存在でもある。それは両親が離婚してしまって家を飛び出すように出てきた私にも同じで、社長は私たち2人を自分の子供みたいに心配してくれてる。

「もちろん考えてますって言ったんでしょ」

なんせ「勝手に明るい家族計画」だもん、こやつは。そう言った私に大和くんは黙って頷いた。

「でもさぁ、どう考えてもいきなり子供って発想はいただけないなぁ」

「樹里はずっと欲しかったんじゃないのか? それともあいつの子供だから欲しかったのか?」

続けて私が言った言葉に、大和くんはむっとしながらそう返した。

「……違うよ、あの時は今より子供だっただけだよ」


 そう、あの頃の私は今よりずっと子供だったから、それがどんな結果を生むのか考えもしなかっただけ……

 3月10日、その日1日だけは、私は大和くんが「お誘い」をかけても頑として断る。

それは……元カレ(もちろん大和くんと知り合うとっくの前に別れてはいるんだけど)の子供を空に返した日だからだ。元カレは、私に子供が出来たとわかった途端、姿を消した。

それを聞いた大和くんは、

「俺、そん時に樹里に逢ってたら俺がその子育ててやったのにな」

そんなことまで言ってくれた。


 さっき、私は最初気になったけどその内そんなもんだって思うようになったって言ったけど、あれはウソ。私は大和くんが子供を欲しがっていることを解かっていた。家族が欲しいと解かってた。

最愛のお母さんを今の旦那さんに引き渡してからずっと、彼は私を抱く時に全身でそう言ってた。

だから、いつ出来てもきっと前のようにはならないとそう思ってたんだ。

思ってたけど、ちゃんと口に出してくれない大和くんを私はどっか、最後まで信じてはいなかった。そうなったらやっぱり、元カレみたいに消えちゃうんじゃないかっていう気持ちを捨てられなかった。

 だから私は、自分の期待感に自分でフタをしたんだと思う。ワザとそういう方向には、自分の気持ちを持っていかないようにしてたんだ。


 じゃぁ、大和くんは何故今更別れようって言い出したんだろう。

まだ……解からないことだらけだ。

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