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医者? 看護師? それとも何なの、あんたってば!! 3

 しかし、この人、一体何者なんだろう……


 嵐のような30歳直前男への『性教育』が終って、いきなり氷河期に放り出してしまった感のある独身2人も何とか現実世界に戻ってきたようだ。

特にアラフィフと言ったって、どっかお花畑に生息していそうなお姉さんには、正直きつい話だったろうなぁ。小久保くんは大丈夫なような気がするけど。なんか遊んでいそうだし。


「ま~りこ~、寂しかった?」

その時、病室にいかにも軽っぽそうな作業着姿のイケメン男性が、やんちゃそうな3~4歳の男の子の手を引き、1歳くらいのお人形みたいにかわいい女の子を抱いて入って来た。

「あ、トモミチぃ、待ってたぁ。ちょっと寂しかったよぉ。でもね、今はこのお隣さんが遊んでくれてたんだよっ」

するとさっきとはうって変わってまりこと呼ばれたその女性は、くねくねとブリトークを始めた。

その様はさながら女子高生のようで、どう見ても私と同世代の顔とはマッチしなかった。

それに、今入って来た人が旦那様なら、この人2人の子持ちな訳だし……

「あ、こいつが何かご迷惑おかけしたんじゃないっすか? 俺、この佐竹真理子の旦那の佐竹智道って言います」

遊んでもらったという台詞に反応してか、やっと名前の分かった佐竹真理子さんの旦那様の智道さんは、そう言って頭を下げた。

「いえ……とんでもないです。こちらこそ助けていただいて」

私がそう言うと、

「そうだよ、夫婦の危機救っちゃったんだから、私」

と、真理子さんは智道さんに胸を張った。

「バーカ、お前やっぱまたお節介焼いてんじゃん。ホントすんません。けど、根は悪い奴じゃないんで……」

と、恐縮してまた頭を下げた。それを見て

「いや、ホントに助かりました」

と、大和くんも頭を掻きながら智道さんに頭を下げる。男二人が赤くなりながら頭を下げあっているのを見て、真理子さんはけたけたと笑った。


「あ……あの、私たち帰るわね。」

その時、お姉さんがやっと完全復活してそう言った。

「あ、すいませんでした。悪いですけど、俺今日はこのままここに居ていいですか?」

大和くんが慌ててお姉さんと小久保くんに頭を下げる。

「ええ、もちろんそうして。じゃぁ、小久保君、行きましょう」

お姉さんに促された小久保くんは、右手を挙げて、

「じゃぁ、お疲れ。社長にお前らのラブラブっ振りをよーく伝えとくよ」

と、ニヤニヤ笑いながら帰っていった。

 お姉さんはともかく、あの小久保くんが社長にどんな報告をするのかいまいち不安。そう思って大和くんの方を見ると、彼はなんとも言えないという表情をしていた。

大和くんは何を思ってたんだろうか。



―*-*-*-*-*-


千夏ちゃんに聞いた話では、あの後お姉さんと小久保くんは会社に戻った後すぐに社長室に報告に向かったらしい。

「直哉、樹里の具合はどうだった?」

と聞く社長に、

「あ、かなりきてますよ。山口……仕事にはもう復帰できないかも知れませんね」

と、沈痛な面持ちで答える小久保くん。

「ちょっと、小久保君!」

事情を知っているお姉さんが、思わず声を荒げる中、小久保くんはニヤニヤ笑ってお姉さんに目配せした後、

「たぶん、八木は心配で山口を出せないでしょうね」

と言った。

「樹里、そんなに悪いのか? 姉貴……」

「ま、まぁね。今は大事にした方が良いとは思うけど……取り返しのつかないことになっても困るしね」

そして、お姉さんが間違ってないけどなまじぼかして言うもんだから、社長は私を心配してため息をついてデスクに突っ伏して頭を抱えた。

「そうですよね、お姉さん。この先あっという間に大きくなりますからね。あの山口にベタ惚れの八木は心配で出せないでしょうよ」

続いて小久保くんはそう言ったんだと。

「は? あっという間に大きくなる? そんなひどい腫瘍でもできてるのか?」

社長は意味が解からない。小久保くんの言い草にどんどんと顔が引きつっていく。

「ええ、特大のがね。ま、あと半年も経ちゃぁ、けろっとしますけどね」

「ぷっ、樹里ちゃんおめでたなのよ」

そこでこらえきれなくなって、お姉さんが笑いながらネタ晴らし。

「そうか、子供……直哉、姉貴…ビックリさせんなよなぁ」

社長は突っ伏した顔を一旦上げた後、一気に脱力したんだと……


会社でそんなやり取りがされていた事を知ったのは、私が産休に入った後だった。


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