医者? 看護師? それとも何なの、あんたってば!! 2
「これはあくまでも私の私的見解ってことできいてくれるかな」
彼女はそう前置きしてから話を続けた。
「まずね、体質改善ってやる人がいるくらいだから、食べ物変えると体質って変わるのよ。
それから、私も今お世話になってる身で、大きな声では言えないんだけど、医者って時々行かない方が良い時があるのよ。特に、こういうデリケートな問題じゃぁ、却って萎縮しちゃって、いい結果が出ないものよ。不妊治療してたツレが、止めた途端出来たっていうのを何人も聞いてるのを考えてもね。
それからこれもね、大きな声で言うのは何なんだけど、あんまりマメにやりすぎると却ってダメみたい」
彼女はそこでちょっと咳払いをしてから、声のボリュームを落として、
「薄くなっちゃうんじゃないかしら。それより日を決めて狙うほうが確実」
と言って笑った。大声だろうが小声だろうが、結婚している私たちはともかく、未婚のお姉さんと、小久保くんにはかなり刺激的な内容なんですけど。
「以上のことを踏まえると、充分に可能性としてアリなんだよね。有効数ゼロって診断を下されてるならともかく、そうじゃないなら……もう、じれったいなぁ! ってか奥さんが浮気とかしてないんだったら、100%どんなことがあってもご主人、あんたの子供でしょうが! しかも、その怒りようじゃ、あんた奥さんにベタぼれなんでしょ? 惚れた女の言うこと信じないで、一体誰の言うこと信じる訳さぁ」
「あ……」
彼女に捲くし立てられるように言われた大和くん、トドメの一撃まで食らって、一言呻いて俯いた後、済まなそうに私を見た。
「ゴ、ゴメン、俺……俺」
「いいよ、解かってる。私だってウソだって思ったもん。でも、私は自分の事だから、分かるだけだもん。ホントに大和くんだけだよ」
私がそう言うと、大和くんはふーっと大きく息を吐いてから、
「ホントに俺、親父になれるんだぁ」
ってしみじみそう言った。
「そうよ、――信じるものは救われる――だよ、ご主人。」
それに対して、名前も知らないその女性が、大和くんに向かってグッジョブポーズで応えた。
「俺……俺、あの時、樹里と別れてなくてホント良かった……樹里、お前ってサイコー……」
その後、大和くんはそう言って、男のクセに子供みたいにぼろぼろ泣きながら、私の手をぎゅっと握り続けた。