医者? 看護師? それとも何なの、あんたってば!! 1
「俺のどこがバカだってんだ!」
「ねぇ、ちょっと質問して良い?あんた最近食い物の好み変わってない?」
いきなりバカ呼ばわりされてキレた大和くんにビビることなく、隣のベッドの人は質問なんか始めた。
「それがどうした!」
「聞かれた事に答えて」
「暑くて肉なんか食ってらんないって思うようになったけど?」
「奥さんも?」
その言葉に私は黙って頷いた。
「で、25%の宣告を受けたのはいつ?」
「去年の春だっけ…私の誕生日の少し前だったから」
これは私が答えた。
「じゃぁさ、このごろめちゃくちゃ忙しいって言ってたよね、前よりあっちの回数減った?」
「!」
何? 何!? そのストレートな質問は!! 初対面の相手に聞くことじゃないでしょ。
「ねぇ、重要なことなんだけど」
黙ってると彼女からそんな声が飛んできた。
「ああ」
見ず知らずの女に何でこんなことを尋ねられなきゃならないんだという顔で、ウザそうに大和くんは頷いた。
「やっぱりね。はーい、バカ1名誕生っと」
彼女はそれだけの質問をすると、しれっとそう診断を下した。
「何がやっぱりだよ! 医者に普通じゃ子供なんでできないって言われたんだぞ」
大和くんは得体も知れない女に好きなように言われて、ムキなってそう反論した。
「でもね……よーく考えてみて。25%はゼロじゃないわ。ゼロじゃなきゃ、たとえ有効数が1%だったとしても可能性は全くのゼロじゃないのよ。ましてや25%もあるのよ」
でも、彼女は怯まなかった。むしろ……この展開を心底楽しんでる? ニコニコしながら話を進める。
「数学的な確率の問題じゃないだろっ、これって!」
「そうよ、確率の問題じゃない。あんた、意外とバカじゃないのね。そうよ、これは確率の問題じゃなくてタイミングの問題なの。だから、アリなのよ」
と言った後、彼女は大きくため息をついて、
「まったく、往生際が悪いわね。いい加減自分の蒔いた種なんだから、納得したらどうなの? もう、どう言ったら理解するかな」
と言った。
そして……そのまま正体不明の隣の入院女性の大和くんへのレクチャーが始まったのだった。