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1年後―夏― 3

「そんなの決まってんじゃない、大和くんのだよ。」

私がそう言ったら、大和くんは間髪入れずに、

「ウソだ!」

と返した。

そこにちょうど、社長に様子を見て来いと言われた小久保くんが呑気そうに入ってきた。それを見た大和くんは、私と小久保くんをぎっと交互に睨んで、

「樹里、ホントのこと言えよ!相手は…小久保か?!」

ってものすごい剣幕で怒鳴った。

大和くんの気持ちは解からなくもない。私だって最初はウソだって思ったもん。だから、男の…しかも子供はムリだと診断されて、私のために別れるとまで言ってくれた大和くんが、「出来ちゃいました」と言われて、簡単に「はい、そうですか」ってすぐに受け止められるとは思えない。

でも…でもね、誓って言うけど私、浮気なんかしてないよ!!

「そんな訳ないじゃない、大和くんの大バカ!!」

私はそう叫んで、ここが病院だってことも忘れてわんわん泣いてしまった。

「八木君…どうしたの、突然…」

お姉さんもフォローできなくておろおろしている風だった。


 その時、カーテンが開く音がして……

「ちょっと、そこのご主人?!あんた一体何考えんのよ! あんた、取り返しのつかないことにでもなったらどうするつもりなの!!」

って女性の怒鳴り声が響いた。

「奥さんがそう言うんだから、絶対にあんたの子に決まってるじゃないの! あんたね、どんだけ仕事が忙しかったか知らないけど、やることやってんでしょ? それとさ、奥さん3ヶ月の半ばなんて微妙な時に、しかも倒れてここにやって来たんでしょうが。そんな時にショックなんか与えてもしもなんてことになったら、あんた泣くにも泣けないわよ、ちっとは考えたらどう!!」

 声の主は病室の隣のベッドに寝ていた。私のことなのに、真っ赤になってぶるぶると震えている。

「何も知らない奴が聞いた風な口を利かないでくれ! 俺の子供なんてできる訳がないんだ」

大和くんも売り言葉に買い言葉で、そう答えてしまっていた。その台詞に、お姉さんも小久保くんまでもが完全にフリーズしてしまっている。それを聞いた隣のベッドの人は、一瞬ハッとした顔をしたけど、

「それって、医者にまったく子種がないって言われたわけ?」

と、ずけずけそう聞き返した。

「全然じゃないけど、約25%だって言われた。それに、どんなに頑張っても出来なかったのに、このクソ忙しい時にぽこっとできてたまるかよ」

それに対して、大和くんは吐き捨てるように彼女に言った。

「なんだ、そうなんだ。それならやっぱりバカなのはご主人、あんただわ」

それを聞くと隣のベッドの人は、不敵な笑みさえ浮かべてそう言ったのだった。


……で、この人、一体何者なの??

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