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始まりはいつも突然に……

 一緒に棲み始めてたぶん、6年目だったと思う。


 アパートに帰ったら、大和くんが笑っちゃうほど情けない顔をして正座していた。その上、

「山口さん」

なんて普段2人の時には絶対に呼ばない苗字で呼びかけてくるし。大和くんは捨てられた子猫みたいな顔をして、

「山口さん、俺と別れてください」

って言った。私はその顔と切り出した言葉のギャップとにどう対処して良いのか分からず、思わず大笑いしていた。

「何、それ! 今から浮気の懺悔でもしようっての!? 大体、ここ元々私のアパートだし。大和くんが勝手に転がり込んだだけでしょ?一緒に棲ませてくれるってお願いもなかったような気がするなぁ」

「ゴメン、そうだったかな。でも今俺もう帰るとこなんてないし。早めに新しいアパート見つけるようにするから、ちょっとだけ我慢してくれな」

大和くんは私が半分冗談で言ったその台詞をマジ受けして、首を落としながらそう返した。


……じゃぁ大和くん、マジ浮気って言うか本気で誰かに惚れたって訳!?


 大和くんのフルネームは八木大和。今年28歳になるこの男は、ある日突然この部屋に転がり込んできた。そのずうずうしさは野良猫並で、いつの間にかちんまりとこの部屋に納まってしまったという感じで…

 あ、私の名前は山口樹里。29歳。正確に言うと、あと1ヵ月で大台に乗る、つまり20代は風前の灯状態なんだけどね。

大和くんと私の関係は会社の同僚。

 会社の飲み会でべろんべろんに酔っ払って、今にも行き倒れそうな入社したての大和くん(一応彼の名誉のために言うと、うちの職場は体育会系クラブをそのまま地で行くような会社で、まかり間違えば急性アルコール中毒にもなりかねない飲ませ方を平気でやるような連中の集団なの)を会社近くの私のアパートに泊めたのがそもそものきっかけ。

 遅刻魔の大和くんはのんびりと徒歩でも出勤できるこの環境がいたくお気に召したようで、飲まされると自動的にウチに帰ってくるようになり、ついには居ついてしまった。

 それまでの彼の自宅(実家なんだけど)は電車を2本乗り継いで40分もかかるとこにあって、飲むと翌朝必ず下痢をする大和くん(これも一緒に棲み始めて分かったんだけど)は駅毎にトイレに走ってる間に遅刻するっていうのがその真相だったみたい。

 ま、何にせよ、最初は週一、それが3日おき、そして毎日になり、さらに大和くんはその代償を自分の体で返してくれちゃったりしちゃったから。そしてそれが何年も続いてしまうと……


 私、いつの間にかこの関係がずっと続くんだって思ってた。

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