『仕事も恋もぜんぶ失って休職した私。おじさんからもらった机の引き出しが異世界と繋がっていた件について』
人生が嫌になって休職した私。実家に帰ると近所のおじさんが亡くなっていた。おじさんの娘さんから、いらなくなった机を譲り受けたが、その机の引き出しは異世界へとつながっていた!?
この物語は事実に基づく。こう言うとみんな信じてしまうでしょう。
でも、私の話をこれから聞いて事実だとはきっとだれも思わないと思うのです。それぐらい御伽で荒唐無稽でオカルトのようなお話なのです。
これはとある机の引き出しから見つけたものとされています。
中には日記と手紙が何通もあって、きっと多くのやりとりがあったのでしょう。
質がよい紙とはいえず、破損がひどいものまでちらほらとあり、すべてを私の世界の言葉で解読するまではいたってはいません。
でも、この文通はただの文通ではないのです。というのもこの文通の内容がただ、悲しいとか、別れとか
楽しいとか面白いとかそれだけでは言い表せない数々のことが書かれていたのです。私も最初これが嘘ではないかと思いました。
そして、この文通をやりとした当の本人に聞きたいのですが、とっくに亡くなっていて、いったいなにが起こっていたのかさっぱりなんです。
たまたま偶然これを発見し、オカルトを信じない私もこれは本物であると確信したのです。
研究所でいろいろと調べてもらいましたが、わからないことだらけです。しかし、どう見ても、この手紙はどうやらこの世界のものではないんじゃないろうか?と思うようになったのです。
お読みになるかた。さぞ読みづらいでしょうが申し訳ございません。
慣れないことで私も興奮冷めやらぬので手の震えがとまらないのです。
不明なところなどは勝手ながら私が()で注をつけました。手紙などのやりとりについては一~順に並べましたが何通か断片しかのこっていません。そこはもはや解読不明のため読めるとこだけ訳してうまく載せます。
読みづらいかと思いますがよろしくお願いします。
「手記」
2△〇8年。6月1日。
いつものあの鬱な季節は去ったのだろうか。しかし、私の精神的な憂いは全然だ。一流とはいえないが、そこそこな学校を卒業して、これまた一流とはいえない今の会社に就職した。私はどこかで自分はいつか、なにかで、だれかに称賛されるのだろうというみょうな確信があった。そうすることが私の人生の喜びで、それこそが人生の意味。なんのために生きているかの答えだと思っていた。
しかし、そんなものはない。
そんなものはなかったんだ。
どれだけ頑張っても、やっても努力が報われないし、私が思いついた考えなどはとっくに天才たちが思いついていた。私の記録はだれかが破っていた。私が書いたものは、だれかが既に書いていた。それもより面白く。
神に祈っても何者にもなれなかった。
私は英雄になんてなれなかったし、小説などの主人公のようになにかの能力に目覚めるとかご都合主義的な展開はなかった。
せめてじゃあ、世界なんて滅びて明日から黙示録の世界でサバイバルしようかと夢想して浅い眠りから覚めてもいつもの日常しなかない。
そう簡単に世界なんて終わりはしないんだ。
では、なんのために生きればいい?
私は快楽に欲望に生きればいいのだろうか?私は永遠の愛を求めればいいのだろうか。
こうして恋愛に目覚めてしまえとやけに思い、髪を整え、スポーツをして、トレーニングをして肉体と外見を変えようとした。
女性にモテようと話題もいろいろと考えて意中の相手に告白した。
血のにじむような努力をしたのだと思う。
しかし、結果は散々であった。
それでも何度かいろんな女性に声をかけて行動した結果、特別好みでもなかった女性と付き合うようになった。
不思議なことに数か月一緒にいると楽しくなり好きになり、愛着が生まれた。
一年たって、結婚と子供を考えたが二年たつとどうしたわけか、なぜこの人を好きになったのかわからなくなってきた。
やがて興味も好意も失い、ささいなことで、いがみ合い喧嘩し合うようになって愛着をもたくなり別れた。
ああ。そうか。愛着しかなかった。私は愛していなかったのだ。
こうなると私は、恋のために生きられない。だれも愛せないのかもしれない。
私という人間は自分しか愛していないのだ。
では、仕事を馬鹿みたいにやって忘れようとのめりこんでみた。上司にすかれるため、エリートと称賛されたいためにがむしゃらにやってみた。
こうしたことを連続した結果あるとき、ぽっきりと心が折れる音がなった。
もう、仕事のためにも頑張れない。休みたくてたまらない。でも、真に休める場所なんてどこにある?
私には恋人や妻が待つ家なんてない。私には趣味で集う人たちもいない。現実の友達もほとんど疎遠だ。
ましてや趣味なんてものもないし、残業ばかりの奴隷のような日々を繰り返したから、そんな趣味なんてできなかった。
ただ生きて働いて寝ているだけなのだ。私たちは無駄に長生きになった。はやく死にたい。
そう考えるようにいたって、こうして精神的にも肉体的にも極限に達した私は休職した。
2×〇8年。7月3日。
実家に帰ればなにか変わるとでも思ったのか。とにかく両親に会いたくなった。
久しぶりに見る両親はやけに老いてみえた。なにも言わずに私を迎え入れてくれて私はホッとした。
実家に帰って翌日、ちょうどオカルトに傾倒していた近所のおじさんが亡くなったことを知った。
その娘さんから、どうか机を受け取ってほしいと言われ、私はあのおじさんのアンティークな机をいただくか迷った。
正直邪魔になるだけだ。色もダサいし好みではない。つくりはしっかりとしているがそれだけだ。
そして、どうでもいいことに。引き出しのなかのものも、全て私にくれると言うのだ。
おじさんとは仲がよかったが社会人となり都会にでてからは音信不通なだけに私は申し訳なく思った。捨てるのも困っているようだから私は引き取ることにした。
綺麗に拭き上げて、実家の自分の部屋においた。
引き出しを開けると中から、自筆の解読できない言語がでてきた。何十ものノートをのりとひもで巻いて重ねたもので、へたくそな字で「異世界言語辞書」と書かれてある。
その辞書の間には、便箋があった。中を開けて確認すると、全く読めない。
見たことがない言語だ。
もしや、と思いあの異世界言語辞書を取り出して単語を調べる。
それは異世界についての手紙であった。
その内容は魔法陣についてと、ハゲをなおす方法とその代償について書かれてあって私は思わず吹き出した。
これはおじさんが残したものなんだ。
つまり、死んだあとでも私を笑わせる試みだったのだろか。
私は白紙の紙を取り出して、辞書を引っ張りだして試しに、ふざけて書いてみた。
内容はこうだ。
「おじさん。おじさんの引き出し見て楽しめたよ。ありがとう」。
異世界言語の文法はどこか馴染みある外国語に似ている。
きっとおじさんの考えた設定なのだろう。
おじさんはいつも異世界に行きたがっていた。
当然行けないのはわかっているのだろう。
いろんな設定をつくっていた。
面白い人だった。
悪い人ではないが、だれからも共感されなかった。
私もだれかに共感されたかったのかな。私はどこまでもさみしいのか。親がいても他人から愛されたいのか。
ああ。おじさんからの返答もないのになんだってあんなものを書いたのか。
2×〇8年7月4日。
おじさんとの思い出もおしまいだ。あれやこれや彼の遺品ともいうべきものをひきとった。
そうして、自分の部屋がおじさんの色でそまっていくのを嫌な感じに思っていると。
カタカタと音がなったんだ。それはあの机だ。
私は虫かと思い殺虫剤をもってきて引き出しを開けた。なかを覗いてもなんにもなかった。
しかし、私があの書いた紙になにか続けて書かれてある。
おじさんの辞書で調べる。
「あなたはだれ?」
と異世界言語の文字が続けて書かれてあった。
細く、綺麗な文字だと見慣れない文字なのに美しいと感じた。
手紙の右端に異世界の言語でかかれてある。名前かなにかだろうか。
「エナト」。
エナト?と発音できる。名前?
エナトとはなにか?
おじさんの辞書をだしてみて私は震えた。
辞書にはこう書かれてある。
エナト―いわゆる魔女。深淵の魔女の後継者とされる。襲名すると皆「エナト」を名乗る。今のエナトは継いでまだ日は浅い。伝説では魔女は血を継ぐと白髪となり不老となるとか。私たち似たもの。およそ200年いきるとも。継ぐ者は代々目が緑で肌が白いとのこと。伝統なのか歴史なのか呪いなのか。公爵家とゆかりがある娘でその落とし子が必ず魔女となるそうだ。
(注 ここから「私」と「魔女」との手紙のやりとりとなる)
〈手紙その一〉
私:「だれ?あなたはだれ?私は。あなたの。手紙。みた。おじさん。友人。」
魔女:「はじめまして。わたくしの名前はエナトと申します。あなたは彼の友人なんですね?彼の体調が思わしくないとお手紙を受け取って半年たちました。彼はどうなったのですか?
とても心配です。もしよろしければ、彼のことを教えてはいただけないでしょうか?」
〈手紙その二〉
私:「彼というのがおじさん。亡くなりました。私は彼の友人で。机。おじさんの遺品を受け取ったのです。すまない。まだ慣れない。あなたの言語が。どうやって。返事している?これは。魔法?いやどう考えてもトリックなんかじゃない」
エナト:「亡くなったのですか・・・。心より哀悼の意を表します。私は彼の友人でした。私は彼に(以下散逸。)
大丈夫です。あなたの言葉はとても美しいです。お返事ありがとうございます。」
〈手紙その三〉
私:「もしよろしければ、私と文通してくれないか?」
エナト:「わたくしなんかとで?それは、とてもうれしいですが、わたくしは寂しいただのつまらない魔女ですよ?」
私:「私はおじさんの友人だ。君のことが知りたいし、こんな経験は初めてなんだ。実際に異世界と交流できるなんて夢のようだ。ちなみに自分の名前は(散逸)。」
エナト:「改めまして、わたくしはエナトと申します。深淵の魔女エナトを継いだばかりなのです。森の中にある古びた塔に一人で住んでいます。今まで先代のエナト様と一緒に住んでいました。あなたのおじさんとの交流は先代エナト様のころからのものです。
ですが、わたくしははっきり言って、ずっと塔にいるので会話という会話をしてきませんでした。したとしても、近所の村といってもかなり離れた村ですが、そこのおじいさんか、村にたまにやってくる商人さんくらいしかおりません。こんなわたくしとあなたは文通したいのですか?
おそらく退屈なはずです。
あなたはわたくしの世界のことも知識も言語すらあやふやで、わからないことばかりですよ?きっと興味をもてないはずです。
あなたのおじさんは、知識しか聞いてこなかったです。それもあなたがたの世界では、役に立ちそうなものはないものです。
きっと、面白くなくて嫌になってしまうでしょう。
あなたの時間はこんな魔女に割り当てるのではなくて、ご自分にあててください。
あなたが嫌いだからと言っているわけではないのです。
わたくしとあなたと住んでいる世界が違うのです。
先代のエナト様がなぜあなたのおじさんの机で文通できるようにしたのかその深遠な考えは今なおわかりません。ですが、これは本来あってはならないものだとわたくしは思うのです。
会えないのになにゆえ文通するのですか?それは傷つくだけではありませんか?知識を求めるだけであれは数通でよいはずです。そして、あなたの世界の文化、価値、思想で衝突するかもしれません。それだけは嫌なのです。」
私:「君ともっと話してみたいんだ。おじさんも君のはなし相手になってほしいと言っていた。会えなくてもいいじゃないか?それにこんな感じで終わるのは嫌なんだ。もっと君のことと君の世界について知りたい。
(注:エナトにうそをついている可能性。はなし相手になってほしいという文みつかっていない)」
エナト:「それは本当ですか?わたくしは彼の知識にあこがれていました。ああ。彼にもっと話を聞いておけばよかった・・・。
すみません。わたくしに時間をください。
あなたと文通できるかはわかりません。
ですが、わたくしはあなたがたの世界を知りたいとも思ってしまうのです・・・。これは許されることでしょうか?あなたに聞いても仕方がないことでした」
私:「ああ。どうかそう気負わないでほしい。私も気になっているんだ。どうやってこの机の引き出しが、その・・・。君の世界とこっちの世界とで、手紙が行き来できるんだい?」
エナト:「それはわたくしにもわからないのです。先代のエナト様がこれをおつくりになったのです。壮大な実験の一つだったようですがその実験もどんなものかはもうわかっていません。わたくしは先代エナト様が文通しているのを見て、あなたのおじさんを知ったのです。ちょうど先代エナト様がお亡くなりになって日が浅いなかでわたくしも彼と文通しました。とても楽しいお方でした。紳士で、物知りで、心穏やかな方でした。」
私:「おじさんは変わっていました。しかし、紳士で穏やかであった。まさにそういう人でした。どうか次もお手紙書いてみてください。お待ちしています。」
〈手紙その八〉
私:「手紙ありがとう。おかげで元気がでたよ。君は優しんだね。きっと環境がいいんだと思う。皮肉じゃないよ?君のいるとこはすばらしい世界なのだろうと思ったんだ。君の住んでいるところはどんなとこなんだい?私の住んでいるところはちなみに退屈な場所だ。田舎だけどちょっと歩けば、鉄筋とコンクリートだらけのとこだよ。ビルはわかるかな?とにかく硬くて夏は暑くてじめじめして無味乾燥で墓場のような場所なんだよ。みんななんのために生きているかわからないで生きている屍人だ。隣人がだれかなんて知らないし、他人がどうなろうと知ったことない生き物だ。こいつらが荒野に投げ出されても一緒に生きようとしないで自分のことしか考えないよ。信じる者がないからね。そして、私も屍人だから仕事は今していないんだ。なんのために働くのか?信じるものがないからね。暗くなってごめん。ちょっと気分が塞ぎがちだ。もしかしたら君がうらやましいのかもしれない。
私は正直こんな世界で働くのは苦痛だし、億劫なんだ。愛想をつかないといけないし、うそをつかないといけない。売りたくない商品をとても素晴らしいものだとひきつった笑みを浮かべながら売るんだよ?
ああ。嫌になってくるよ。
親がこの前に病気になって私はうろたえてしまったよ。彼らの面倒を見ないといけないという大変さをふと感じて、親孝行の希薄さにびっくりしたんだ。私はいつからこんなに薄情になったんだろうか?全部、働いていた環境のせいなんだろうか?みんなが薄情になる世界で、自己主張ばっかり私もほかのひとも強いんだよ?信じられるかい?社会人になったら自己実現を成せばいいと催眠術みたいに、みんなかかって目指すんだよ。その結果、自分に酔ってしまうんだろうかね。自分にとってできないことを他人のせいにして邪魔する輩にはっきりと主張し、時には裏で罵倒し、自分にはまったく問題ないと言って満足して翌日の朝を迎えるんだよ。君はこの話をどう思う?ごめんなさい。私は暗い話は苦手だ。もうやめよう。いつか会える方法を探して、楽しい話をしよう。どこかでお茶を飲みたいよ。お返事お待ちしております」
エナト:「お元気そうでよかったです。ご両親の病が治ってわたくしもホッとしました。あなたはひどく取り乱していて心配でした。
あなたは墓場にすんでいるのですか?それは冗談ですよね?すみません。あなたの冗談とかがまだよく理解できなかったりします。
住んでいるところですが、わたくしの住んでいるところは森の奥なのです。近くには静かで、綺麗な湖があります。
とっても、すばらしい世界だと思います。争いごとはありますよ?でもそれらはわたくしにはどうすることもできないのは事実です。火の粉が舞い、村々は燃えていき、孤児は増え戦火の足跡は近づいていると先日、村のかたが言っていました。それは恐ろしくおぞましく怖いです。
でも、それでもわたくしはこの世界が好きなのです。
先代のエナト様がいた世界を愛しています。わたくしは貧しいのでしょう。着るものはほんのわずかです。本と呼べるものをわたくしは数十冊しか読んできませんでした。知識はまったくございません。化粧も先代のエナト様が教えてくださいましたが化粧をしてお出かけする場所もないのです。しかし、自然はわたくしに生きる力を与えてくれます。もしかしたらわたくしはこの手紙を書き終えたら死ぬかもしれない。そう考えると途端に世界が美しくはかないものだと感じるのです。夜、寝る前に祈るように、わたくしは毎日「今日もよく生きることができました」と先代のエナト様と自然に感謝します。どうか平穏で静かに美しいままでいてほしいと祈ってしまうのですが、わたくしはとてもこの世界に満足していまっているのです。
あなたの世界には聞けばなんでもあるのでしょう。お食事に音楽に娯楽に。きっとあなたがわたくしの塔とこの森をみたらびっくりしますね。
あなたの世界には神がいるかわからないが信じているものはほとんどいないと聞きました。
わたくしの世界では神は万物に宿るといわれています。神は人格を持ちませんが、ときおり物に憑依し罰を与えることがあります。
ええ。罰を与えるだけなのです。ですが、人々は罰を忘れて、いや罰が下っても罰だったと思わないで悪事に進んでいるのです。
わたくしはそれが恐ろしいことだと思っています。
いずれ大きな罰が下るのでしょうか。それともこのままなのでしょうか。
先代のエナト様は言いました。どうにかできないことは自然に任せるしかないと常々おしゃっていました。どうにかできることは意外と少ないとも。
あなたがどうにかできることだけを考えなさいと賢人のあの方はそうしていつも静かでした。わたくしはあなたが無理してまでそうした場所にいる必要はないと思うのです。あなた次第だけの世界で生きるのがよいと思うのです。あなたの心の平穏とあなたが真に愛し愛してくれるお方と過ごせばいいと思うのです。
気分を害されたらごめんなさい。あなたに幸福な生き方をしていただきたいのです。
さて、わたくしのお仕事でしたね。
わたくしのお仕事はそのほとんどが薬草づくりです。わたくしは今、塔に住んでいるのですが塔の下におりると小屋があります。そこの小屋で薬草をつくり、ときおりやってくる近所の村の人や商人様にお渡しします。最近はすぐになくなるので忙しいです。
そういえば、あなたはものを売っていたということですが商人さんなんでしょうか?具体的にどういうお仕事をされていたのですか?ほんとうに屍人ではないですよね?」
私:「言っていなかったかな?ものを売ってはいたが本職はあなたがたの世界でいう騎士みたいなものです。今は休職中ですがね。王にお仕えし、魔物相手に戦うのです。この前も多くの魔物を倒し上司から称賛されました。おら!と敵をちぎっては投げ。おあッ!と敵をちぎっては投げていきましたよ。
なぁに。もっと前は殿をつとめて大軍を相手に単騎で敵を食い止め退けたりもしました。信じられないでしょうね。でも事実です。加増されるのも慣れてしまました。ああ。敗北を知りたい。私の領地はどんどん増えることでしょう。ああ。あなたは知らないのか?おじさんはかつて白銀の騎士アロンゾというたいそうな変ちくりん騎士を名乗っていました。私はそのもとで修業し歴戦の勇士となったのです。こんどは魔王を討ちに行きます。あなたをパーティーに加えてドワーフと僧侶をいれて冒険に行きたいです。ドワーフはわかるかな?地下の炭鉱に住み鍛冶がうまくて、何百年も生きる種族だ。髭が長くて足は短い。斧をよく使うイメージかな?君の世界にこんなのはいるかな?
ドワーフの絵をかいてみた。ほかにもいろんなものを描いてみた。ぜひ見てくれ。そして感想をおくれ。(注:絵は散逸)」
エナト:「あなたのお話を聞いて大笑いしてしまいました。本当におかしなお人ですね。わたくしは知っているのですよ?あなたのおじさんから聞きました。あなたの世界には本当の騎士がいないことを。騎士は御伽だけの存在だと聞きました。
あたなの絵を拝見しました。こうした種族は残念ながら見たことがないです。わたくしが知らないだけなのかもしれないです。でもとても素敵だと思います。
最近あなたのことを考えていたら、早く手紙がこないか待ち遠しいです。
こんなにも心穏やかになれるなんて。きっとあなたがわたくしの世界へ来たらあなたは本当に驚くでしょうね。ドワーフはいませんが、あなたが想像する勇者も竜もいるんですよ?勇者はあなたが以前見せてくれた絵とは少し違います。巨人で腕も足もふとくて、巨大な剣と槍をもち何百年と生きています。悪い竜が現れると地中より目をさめてそれを喰らいに出るのです。竜はあなたの絵の通りです。こちらの竜は、羽はありますが飾りで飛べないです。神の罰がくだって飛べなくなったともききます。何百年も前には戦う音が響いたと先代様から聞きました。でも聞いただけでわたくしは見たことないです。
でも、勇敢なあなたなら勇者も竜もこてんぱんにたおせるのでしょうね?わたくしもあなたの領地とやら見てみたいです。そこは、どんなころでしょう?そして、あなたはどこか本物の騎士になれる気がします。ゆかいで勇敢な騎士」
〈手紙その九〉
私:「君の顔を見てみたい。実験してみたが私の撮った写真はおくれないようだ。手紙に挟んでも届いていないみたいだしね。カメラも送ったけどだめ。でも無くなっているから届いているはずなんだ。本当に届いていないのか?君はうそをつかないとわかっている。こんなことで嘘をついていても意味がないからね。でもどこへ消えたんだろう?亜空間かな?引き出しには君の手紙と私の手紙のやりとりは残るのにね。でも、そうだな。ほんとうにどういう仕組みか、どうやら紙にかいたものじゃないとダメみたいだね。まったくへんな魔法だ。だから、わたしは自分で似顔絵をかいた。ほんものはもっとイケメンなんだがね。君が惚れちゃうと困るから、へたくそに描いたよ」(注:絵は現存してある)
エナト:「絵を拝見しました。これは以前あなたが送ってくれた猫の顔そっくりじゃないですか。あなたは猫なのですか!?私をまたからかっているのですね?ほんとうにおかしなお方。わたくしをあなたは毎日楽しませてくれるのですね」
私:「よし。君を想像して絵をかいてみた。ぜひ感想をおくれ」
エナト:「絵を拝見しました。これは以前書いてくれたドワーフじゃないですか!?わたくしはドワーフではないです!それともあなたにはドワーフに見えるんですか?わたくし髭が濃いと思われているんでしょうか。おかえしにわたくしの顔を墨でぬりたくったものを紙におしつけてみました。顔拓というのでしょう?感想おきかせてください」
私:「顔拓拝見しました。怨念の表情にしか見えなくて怖くて泣きそうでした。君も私を笑わせてくれるね。私は実は仕事を休んで君とこうしてやりとりするまで鬱でなんのために生きているかわからなかったんだ。でも君の世界がどこにあろうともこうして君と話せていることがこんなにも幸せで楽しくなるなんて。ずっとこんな時間が続けばいいと思ってしまうんだ。また絵を送るね。」
〈手紙その十〉
エナト:「絵をありがとうございます。感想ですね?怒りますよ?というのは嘘です。とても美しい絵です。私を想像して描いてくれて・・・。わたくしの絵を描いてくれる人はあなたが初めてです。わたくしはあなたにどんなお礼をすればよいのでしょうか?」
私:「お礼を楽しみにしているよ。どんな物をくれるんだろうか?今から楽しみだなぁ」
エナト:「すみません。あなたに贈るものですがわたくしもあなたに絵を描いておくることにしました。あなたがどんな人か想像して。気に入ってくれるとよろしいのですが・・・。お返事待っています」
(注:絵は現存している)
私「とってもきれいな絵をありがとう。そのなんだろう?とても・・・。写実的?いや違うな。とにかくいろいろと図形ぽくてあらゆる部位が斜めで、そして、三角できれいだったよ。私の鼻のとこの三角?うん。二等辺三角形で美しかったよ。あと赤が好きなのかい?私は赤い感じがするのかな?なんだろうホラーぽいけど、いい感性だと思う」
エナト:「ほめてくれてありがとうございます!人生で一番頑張りました!絵って描くのこんなにも大変なんですね。絵を描くのが得意なあなたがわたくしの絵をほめてくれた!芸術家の仲間入りした気分です。今度来る村の人の顔も描いてみます」
〈手紙その十一〉
エナト:「本日、引き出しを開けてみたらあなたのいうカメラが入っていました。使い方を記載されたメモも入っておりました。どうやって使うのかがわかりませんが、わたくしが想像していた以上に傷んでいるのがわかりました。使えば壊れてしまうかと思います。ですか、光がパッとでてきて絵が出てきました。わたくしの顔が写されておりました。触ると壊れてしまいもとに戻せません。とりあえずわたくしの写真を送りました。手紙以外のものは遅れてくるのでしょうか?返事お待ちしております」
私:「君の手紙を受け取って三日後に写真が机のなかに入っていた。どういうからくりなんだろうか?
君の写真を見たよ!
びっくりした!とても綺麗で可愛くて、なんと言ったらよいのか?
私の世界でいうと映画や物語にでてきてもおかしくない。映画は・・・。ああ。わからないか。とにかく君は美しいんだ。
きょとんとした顔。とんがり帽子をかぶった姿。肌は真っ白だね。幼いようで、目のあたりは賢くて大人のようだ。
君に会いたくてたまらなくなってきた。
君とじかにいろんな話をしてみたいな。
私の写真はどうだったかな?」
(注:返事は散逸)
〈手紙その一五〉
エナト:「返事が遅れてすみません。村以外でも近頃、病が蔓延して薬を欲しいと注文の殺到がきたのです。近くでは地震もあり、近くの火山も噴火しそうだと聞きます。そうした中で慌てたのが悪いのです。森へ薬草をつんでいたら転んでしまい、通りかかった村人に助けられて数日間休んでいたのです。納期は遅れてしまい公爵様にこっぴどく叱られましたが」
私「心配した。嫌われてしまったんじゃないかと。なんたって、あの喧嘩した手紙のやりとりのあとだから。私がどんな気持ちだったか。でも君が無事でよかった。ああ。なんだって手紙だけなんだ。君に会いたい。今おじさんの手紙を読み返している。彼のメモなんかもだ。なにかヒントがある気がする。どうか体を大切にしてほしい」
〈手紙その一七〉
私:「戦争が近いと聞きました。公爵家の城塞がいくつも陥落したとも。戦火で村が消えたとも。軍隊が合戦でなんども敗れたとも。あなたのことだけが気がかりです。どうか返事をください。どうか無事だといってください。おじさんのメモからあなたにあえる方法は今のところ見つかりません。でも、この引き出しをつかえばあなたのとこへいけると考えてあらゆる手段を考えましたが、すべて無駄でした。あなたの字が見たいです。お返事お待ちしております」
エナト:「ご心配をおかけして申し訳ありません。わたくしは無事です。わたくしの気をつかってくださりありがとうございます。会えないものはしょうがないと思います。こう言うといつか喧嘩したみたいにあなたはわたくしに怒るのでしょうね?でも、わたくしはあなたとこうしてあなたの独特な字と話し方と面白いお話を聞けるだけでもう幸せなのです。戦争については、それは悲惨です。森に避難した人々の悲しみの声。軍隊が通る足音。自然と獣たちの警戒した音が毎日響きます。わたくしの実家もきっと・・・。この塔はなんの価値もないので問題はないと思います。心配おかけしました。また面白いお話待っています。こんどは音楽作曲したので送りますね。あなたの世界の音楽を再現するなんて。こんどまたお手紙で紹介してください。待っています」
私:「あなたが作曲した曲を演奏してみました。とても愉快でそれでいて美しい音色でした。こんどは詩も送ります。なんならなぞなぞもお新しく考えたので送ります。あなたとの交流は途絶えたくない。返事お待ちしております」
〈手紙その三〇〉
私:「自分はなんのために生きているんだろう?
真剣に考えてしまうんだ。
君のように私には信じているものが無いんだ。
きっとこの手紙のやりとりが無くなったら自分はもう本当に生きているが死んでいるようになっていると思う。
ごめん。こんなこと言って。
君とのやりとりがいつか終わる気がしたんだ。
終わってしまうのが怖いんだ。途端。君にぶつけてしまいたくなった。もう、なにがなんだかわからない。
でも、自分はエリートになって称賛されたかったんだ。
それができないなら、だれかとともに過ごしたかったんだ。
君に会いたくてたまらない。
君に称賛されて君と一緒にもっと楽しい日々を過ごしたいんだ。
自分はなんでこんなに自分のことばかりなんだろう。君を怒らせてしまうんだろうけど、私は君のことを好いているんだ。
ああ。私はどうやって生きたらいい?
君はここにこうしているのに。会えない。君と文通しかできない。
私はどうやって生きていけばいいんだ?
なんのために生きていけばいいんだ?上を見てそれを羨望しながら、グチグチ文句を言って、娯楽と君との文通で心を癒せばいいのか?
もしあるとき、君との交流がプツンと切れたら?
ああ、考えたくない・・・。生きるなんて・・・。そんなことになんの意味がある?ごめんなさい。もう。返事はしなくても大丈夫です」
エナト:「あなたの震えた字を見てわたくしも心を痛みました。わたくしの世界とあなたの世界とその感じるものとその痛みはわたくしにはわかりません。しかし、わたくしにはあなたが悩んでいるのはわかるのです。わたくしには賢者のようにあなたを導くことはきっとできないでしょう。わたくしはそしてあなたの悩みのすべてを理解できるのもきっと難しいのだと思うのです。すべての悩みを言語化できたらどんなに身軽になるのでしょうか。言語化できない悩みのほうが多いのではないでしょうか?そうしたときどうしたらよいのでしょうか?
その・・・。好いてくださりわたくしもうれしいのです。
生まれてこのかた好意をむけられたことがほとんどないのでわたくしもどう返答したらよいのか困るのです。ですがわたくしはあなたに嫌悪感なんてもってはいないです。わたくしはむしろあなたが悩み、その根本のものに向き合い、あなたとこうして続けられる限り交流を続きたいと思うのです。
あなたの悲しみと、屍のようだといっていたあなたのその病理をなんとかしたいと思うのです。
わたくしは先代エナト様から次のように言われました。
今でも覚えています。
それはわたくしが公爵家から追い出されて、魔女の塔へ流されたときです。わたくしは公爵様と使用人の母との間に生まれた子でした。母が亡くなると子は捨てられたりします。しかし、子を亡き者にすれば罰があたるとして、忌み者として捨てられるのです。領地の森にはそうした子をひきとるという習わしがあるようで、わたくしは森の塔に住む魔女に拾われました。
初めて先代のエナト様にお会いし、にらみ、怒鳴り、威嚇し、自分の人生に絶望して魔女にむかって慟哭したのです。その時の、あの偉大な魔女の言葉がなにかあなたの生き方の答えになればいいかと思います。
魔女は言いました。
『いいかい。おまえは奴隷のような扱いをうけてここの塔へやって来た。そしてこの塔は生きる上できっと屋敷より大変だろうね。なんたって森の向こうへはいけないし、人とのかかわりも最小限だからね。ああ、おまえはきっとつらい思いをしたのだろう。人としての扱いを受けてこなかった。飯を貰うためになんだってしたんだろうね。そうしてあんたは捨てられた。わたしもさ。同情する。でもわたしはちっとも不憫じゃなかった。あんたも不憫とはいえないよ。なぜかと怒った顔しているね?神とこの世界を恨んだ顔だ。だが、あんたはわかっているのかい?
この世界は区別できなきゃ生きていけないんだよ。
どうにかできることと、どうにもできないことだ。
あんたには公爵家から追い出されずに贅沢にできるんかね?
いやできないよ。なら。別の人生かい?
公爵家に生まれるのは運命だし決まっていたことだ。
なら悲しみ塞ぎこむときたか?
神なんて信じない。もうずっと恨むような生き方をすると?
それもよい生き方ではないよ。
どうにもできないことはほっておくことなんだよ。
放っておくなんてどうかしているだと?贅沢三昧と欲望がかなう公爵家の令嬢でいたいと?あんたは今そう言ったね?
では令嬢は自由で悩みをもたずに奴隷ではない。完全に幸せに生きていると本気で思うのかい?
なにものにも囚われずに生きていると本気で思うのかい?
あんたはなにものにも囚われずに生きるのと自由に生きるのとどっちがいい?ん?なんだって?ほら。「自由」だろう?
なら、あんたは地位と名にとらわれていて不幸だ。
なぜか?
自由が幸せだとわかっているのに、地位と名に囚われているからだ。
だれかの人生をうらやましく思ってもその地位も名前も姿も体もあんたがどうにかできることではないのよ?』
わたくしは、初対面なのになんてことを言う人かと思いました。ですが腹が立ちましたが、いちいち言っていることは正しかったのです。わたくしは彼女のようには生きられませんが、彼女の話はわたくしの人生を大きく変えました。
わたくしはあなたの心をどうにかできることはきっとできないのです。ですが、わたくしはあなたがこのまま文通をぷっつりと終えて虚無な感情のまま消えていくのは嫌なのです。わたくしはあなたにより良く生きてほしいのです。それこそがあなたの生き方だと思うのです。
あなたは翌日死を迎えるとしましょう。しかし、夜、寝るときあなたは「今日もよく生きた。ああ。なんのために生きているか?よりよく生きているかだな」とそう言えるようになってもらいたいのです。
ずっととか。永遠なんてないのです。わたくしもあなたもきっと終わりがあります。好意もいつしか無くなることもあります。
わたくしはあなたのとの交流は自然が、神様から与えられたものと思っています。ですが消えてしまうと恐れているあなたにわたくしは言います。
神様はわたくしたちに交流を与えてくれなかったこともありうるのですよ?
あなたもわたくしもこれから多くのものを失う経験をすると思います。ですが、どうかあなたは世界をうらまないでください。これはあなたが手にしたものではないのです。一時的に与えられたものとお考えください。そして、どうすることもできない問題と考えるのです。どうにかできるような力はわたくしにもあなたにもないのです。
そして、だれかに称賛されたいために、気に入れられたいために、自身を偽ってしまうのは、あなたのよき生き方ではないのです。
なんとしてでも気に入られたい、好かれたいと思うあまりあなたがその奴隷となるのです。それに囚われ自由ではいられなくなるのです。あなたのどうにかできるものはあなたの魂と精神だけなのです。あなたがもつものでそれだけは絶対に消えてなくならないものです。
なにかに囚われて生きていく。それは屍人の生き方そのものです。あなたの行動が他人に握られてしまうのです。快楽に欲望に走って「ああ、これがずっと続けばいいと」思ことがあるでしょう。他人を抱きしめ、抱きしめられ幸せな人生を過ごしたいとおもうでしょう。
ですが、これらは、あなたの永遠にはならなく、そうしたものが一瞬で消えてしまうことがあります。そうすると、あなたの心は暗くなりやがてはかつての悲しみを消したいと思って、また新たな快楽を追求する。快楽を追求しつづけると、それは倒錯した憎悪されるようなものになりあなたの精神を曇らせるでしょう。そうして、あなたは老いていき、何もものにも興味をもてなくなり、それは生きる上で苦痛だけとなるでしょう。「なんのために生きているのだ?」と。
あなたはわたくしの好意に疑問を持っているでしょうね。
愛とは他人を慈しむ永遠の約束と意志だと思うのです。それは永遠の誓いです。わたくしはあなたを愛しています。これまでの話とおり、わたくしが亡くなり消えればこの愛もきえるのでしょうか。
ですが、あなたは自身の心に問いてください。
あなたは愛されたかと?それに喜びを感じられたなら、あなたには善き心となって生きる意味を問うてほしいのです。この世界でどのように生きるかは我々次第なのです。
えらそうなことを長々とごめんなさい。
お返事お待ちしております」
私:「君との手紙のやりとりもけっこうたったね。
私も君を愛している。
君の言葉は、私にがつんと響いた。
君は私が思っている以上に賢かった。
君は本を数十冊しか読んでいない。
だから、その・・・。
正直言おう。
私は君より知識があって賢いと思っていたがまったく違っていた。
君のほうがよほど賢かった。
こんなことを言うと軽蔑されるんだろうけど、君のことをどこか劣っていると思っていた。
それは文化的なことや娯楽とかでだ。
君は音楽も知らないし、娯楽もまるで知らない。社会的な繋がりから途絶えた美しくてかわいい女の子としかおもっていなかった。だから、私が君を癒し、私が君を守るようなそんな気持ちの悪いことを思っていた。
でも、君の言葉は私を癒し、私の魂を守ってくれた気がする。
それは心地よくもあったし、すこしムッとした。
でも、君は私を慈しんでくれていると知った。私には君のように生きられないのかもしれない。区別もできないし、きっとなにかを求めてしまうよ。
私はずっと孤独だった。
君とのこの特別な体験をできて私は主人公になったと思ったよ。
ほかのものには信じられない話だろうよ?
異世界とつながり美女と会話しているんだ?
それも魔女だよ?
こうなるとなにがなんでも会って、喧嘩もするだろうし、楽しい話もするだろうけど、君を愛し守れる存在になろうと思うよ。
だれにもこんな体験ができないからさ。
だれもが羨望するからさ。
でも、今の話を聞いて、すこしだけわかったことがあるんだ。
どうにもできないことだよ。
私はきっと何かの物語なら主人公じゃないんだ。ほんとうは脇役なんだと思う。でも、そんな脇役がだよ?この体験で君の愛情を知ることができたんだ。思えば私はいろんな人から愛情を注いでもらっていたような気がする。気づかないだけでね。
そして、私は君の言うような「神」というものは信じられないが見えない力や何かが、君との時間を与えてくれたんだ。今はそう思う。
ああ。私のこの心はどうにかできることだね。
ありがとう。
君をずっとずっと愛しています。あなたのことが心配です。あれから戦争はどうなりましたか?公爵家の残党狩りが長引いているとこの前の手紙に書かれてありました。お返事お待ちしております」
〈手紙その最後〉
私:「あなたは無事でしょうか!?わたしはおじさんのあの辞書からかつて部屋にあったものまですべてひっくりかえしてあなたのとこへ行く手段を考えました。わたしとあなたは机の引き出しでつながっていると勘違いしていました。ほんとうは引き出しではなくて、もっとべつのものかもしれない。ああ。なんといえばいいのか?魔法陣などもためしてみます。どう転ぶかわからない。どうすることもできないことかもしれない。でも、私はあなたを愛しております。あなたが戦争や災害で消えていくのをこの手紙のやりとりで知りえないで終えるなんて嫌だ。わたしは抗います。最後まで。返事をください」
エナト:「このお手紙があなたとわたくしとの最後の手紙になるかと思います。先日、この塔へ避難してきた村の方々と公爵家の生き残りがおりました。わたくしは彼らを匿い、夜陰に乗じて逃がすことに成功しました。しかし、まだ避難すべきものたちがいると聞きました。わたくしは彼らを逃がすために塔に残ることにしました。森が焼かれているのが見えます。塔の下の扉がたたかれる音と怒声も聞こえます。わたくしもここで終わりなのでしょうが、最後にあなただけには伝えたいことがあったのです。今まで恥ずかしいことをなんども書いてきましたが、わたくしはあなたを愛しております。わたくしはあなたに恋をしておりました。あなたの姿を見てわたくしもあなたに会いたいと思っておりました。わたくしは実はうそをついていたのです。わたくしはあなたの写真を拝見しました。とっくのまえにあなたの写真はこちらの世界についていたのです。カメラもなにもかもあなたが送ってくれたものは保存しておりました。壊れてなどいないのです。いつかあなたとこれを一緒につかうことがあると思って大切したのです。わたくしは毎日、あなたとの夢を見ます。一緒に笑い、絵を描いて音楽を聴いて。森のなかを散策して、見たことがない体験したことがない数々をあなたとすごす夢です。わたくしは寝るたびにわたくしの夢をあなたも見てくれないかと思ってしまいました。どうすることもできないことなのに。どうしても願ってしまったのです。わたくしは、あなたに散々えらそうなことを言いながら、別れの直前になってあなたに会いたいなんて思ってしまうなんて。わたくしは消えてしまうでしょうが、わたくしはあなたとの出会いを後悔なんかしません。わたくしはなんども言います。あなたを心の底から愛しております。わたくしはあなたに恋しておりました・・・・・」
( 終 )
手紙は以上で終わっています。
その後、異世界の手記と呼ばれるものがかつてのこの塔の中からも発見されましたがほとんど解読できないまま断片のみです。
この地球のどこを探してもここまで詳細にそして断片ながらかなり解読できる異世界の証拠はないでしょう。
異世界の言語で書かれてありましたが、彼らのやりとりと最新の人工知能技術でここまで復元できたのです。
私たちチームが遺物調査で偶然発見したこの塔の中にあった数々の手紙などはほとんどが炭化していました。近くに火山があるのですが、この噴火によるものかと思います。何百年か一度噴火があったようです。
おそらく手紙のなかのおとぎのような話の竜と勇者との争いの話もこれがもとなのでしょう。
公爵家があった公国では、度重なる自然災害と病で内戦が勃発し他国の介入があって滅んだことがわかっています。
チームは公爵家の家系図を追い、遠縁の子爵家までたどり着きました。
この子爵家の伝説によれば何百年も昔に森に住まうこの「魔女の伝説の話」が残っております。その文献によれば公爵家の長女が魔女に助けてもらったとされています。よき魔女として書かれているのが不思議ですね。
魔女は悪さをするのですがこの伝説の魔女は薬草をつくり森にひっそりと住んでいたそうです。
チームは今なお残る子爵家から助力をいただき、この魔女の話の出どころや、存在と出生について調べましたがわからずじまいでした。
しかしながら、公爵家の次女とされるかたの日記と呼ばれるものがなお教会に残っており、その日記の中から隠された写真がでてきたのです。
古くなった写真ですが、その当時には写真と呼ばれるものはありませんでした。チームはこの日記の存在について疑問視しましたが、なんと手紙の続きもはいっていたのです。
なぜ、あの魔女の手紙の続きがここにあるのか?私たちは回答がでたようで興奮を覚えました。
解読が困難なほど紙が痛んでおり現在これを時間がかかりますが特殊な機器をつかって解析しようと試みています。
写真はボロボロでした。
1枚入っておりました。
写真に映るのは男性と女性のものだと思います。
裏には消えそうな文字で異世界の言語で「永遠に想う」と書かれてありました。
伝説によればこの次女の子供たちは耳がすこしとんがっていて、今でいうエルフのような容姿だったといいます。




