ラスボスしかいない学園生活
静岡私立山葵美味学園。
一年一組。
今年の入学生は、とても香ばしい、有望な粒ぞろいの生徒が揃っていた。
◆
「うぬはさー、好きな人とかいるの?」
【狂気と混沌の魔王:ディアボロス・ジ・アルティメイト】
世界を渡るゲートによりこの世界を征服するべく到来した、異世界の魔王。
かつての世界は征服しきり、新たな領土を求めるべく世界を渡り続けている最中にこの世界にたどり着いた。
すごく気さくな魔王様でジョークの類が大好き。
本気を出せばとても怖い性格になるが、周囲が自分と同等の存在ばかりなのであんまり意味ないなと思い、素のままでいる。
将来の夢は『世界征服』。
通称、魔王。
◆
「妾はねー、どれだけ痛めつけられても挫けずに立ち向かってくる男子がタイプかなー」
【退廃と終焉を司る魔女:ルラル・リシネウ】
世界を渡るゲートによりこの世界を征服するべく到来した、異世界の艷女。
邪法により人としての生を捨てた魔女である。
姦淫や奸計に因んだ魔法が得意で本人もそういった事は大好きだが
結構乙女趣味でぬいぐるみとかを自作したりしている。
ぬったりとした這うような口調は素。
この世に終焉をもたらそうと日々魔法の研究を重ねていた。
それなりに自分の世界に愛着があった彼女は他の世界に足を伸ばそうとしていた。
将来の夢は『世界全体の堕落』。
通称、魔女。
◆
「我はあまりそのような浮ついた会話は好まぬかな……。いや、聞くのは好きだぞ、大丈夫」
【新世界を統べるべくして神々に選ばれ立ち上がった真の覇王:王崔】
世界を渡るゲートによりこの世界を征服するべく到来した、異世界の拳法家。
拳法の修行を積み重ねるうちに神々に出会い、神の力を与えられ選ばれた存在。
筋骨隆々の肉体を持ち、その一撃は素手で大地を砕く。
神に選ばれし者の義務と称して他の者達を束ねることを標榜しており、従わないものは力で無理矢理従えようとする思想の持ち主。
甘いものが好きであり、趣味はスイーツビュッフェ巡り。
将来の夢は『力による強制的な独裁』。
通称、覇王。
◆
「何ソレー! 今流行りの冷笑系ってヤツ? ま、そういうのもアリだよねー!」
【破滅の大樹の精霊:オラーニウブ・マゼクア】
世界を渡るゲートによりこの世界を征服するべく到来した、異世界の精霊。
周囲の生命体から生命力を吸い取り、世界樹と呼ばれるまで異常成長した大樹に宿る。
無邪気な性格のまま他者の生命を吸い取り我が物とする。
精霊としての権能はあまり多くなく、ただ煽り嗤うことしかしない無害な存在に思えるが、大樹を意のままに操ることが出来るという最大にして最悪の能力を持つ。
かなりスレている性格をしており、結局世界の破滅の引き金を引いたのは、彼の世界の一般人達だったため『普通の人間』が大嫌い。
意外と寂しがり屋。
将来の夢は『究極の緑化』。
通称、精霊。
◆
『待機モード継続中…………』
【最終殺戮破壊兵器:プロトタイプ000号】
世界を渡るゲートによりこの世界を征服するべく到来した、異世界の兵器。
荒廃した世界のマッドサイエンティストにより生み出された自立起動機械。
本体は高層ビルをゆうに越える巨体だが、対人コンタクト用のインターフェースを持ち、無線で思考を飛ばす事により、コミュニケーションが可能。
もっとも、殺戮しか能がないAIがコミュニケーションを取る必要があるかは不明である。
会話学習機能が搭載されており、今はまだ無色透明な真っ白なキャンパスのような状態である。
将来の夢は『生命体の殲滅』。
通称、兵器。
◆
「なるほど、君は無口なやつなんだね。悪くないと思う」
【全ての正義を喰らい尽くすまで暴走を終えない思念体:クルディンド・カルス・ジデア】
世界を渡るゲートによりこの世界を征服するべく到来した、異世界の思念体。
元々は肉体を持っていたが、既に滅ぼされて思念体となってなお世界を憎む存在。
常人は触れるだけで発狂し、廃人となってしまう。
常軌を逸した知能を持ち、全てを見通すような知見で世界を俯瞰視している。
こう見えて筋トレが趣味。
将来の夢は『正義という概念の壊滅』。
通称、思念。
◆
「グルルルルルル…………」
【完全実験体合成獣:XX号】
世界を渡るゲートによりこの世界を征服するべく到来した、異世界の獣。
邪法により数多の魔物を組み合わせて作り上げられた合成獣の究極完成体。
およそ理性という物は持ち合わせておらず、本能のままに人間をむさぼり食う。
獣的思考しかできない上、おとなしいのでペット的存在になっている。
意外と人懐っこい。
将来の夢は『全ての生命の頂点に立つこと』。
通称、獣。
◆
「先生ー、教室内に犬が入り込んでまーす。え? クラスメイト? それはごめんなさい」
【堕天したかつては最高位の創造神であった邪神:カアフェイル・ムロドラカ】
世界を渡るゲートによりこの世界を征服するべく到来した、異世界の神。
全ての存在は自らより劣るものとして見下している最上の存在。
事あるごとに自分の境遇を愚痴る悪癖がある。
将来の夢は『新たなる世界の創造』。
通称、邪神。
◆
「はははは、クラスメイトと犬を間違えるなんて、君はお茶目だなあ」
【クラス内で唯一の只の人間:真神 洋馬】
特に世界は渡っていない、この世界の人間。
すさまじく物怖じしない性格で、気軽に呼んでくれと言われたのに大魔王閣下とからかって呼んだり、いかつい竜王などにも平気で毒を吐いたりする精神の持ち主。
少し長めのグレーの髪に琥珀色の目、どこか暗さを背負った雰囲気だが常に飄々としているイケメン。
気を抜けばバッドエンド選択肢しかなくなってたり、あっさりヒロインなどがヒドい目に合うタイプの理不尽な生態系をしている。
無害さを装って裏で黒いことしまくったり暗躍しまくってるタイプで、異能の力はない。
将来の夢は『絶対悪の正当化』。
通称、人間。
◆
「はいお前ら、いつまでも喋ってないで着席しろー」
【そして、俺。教師】
通称、先生。
◆
……………………。
いや。
粒ぞろいすぎだろ。
教師の俺が言うのも何だが、こいつら全員ラスボスじゃん。
ていうか、ラスボスじゃないの俺しかいないじゃん。
唯一のただの人間も、デ●ノとか、ダン●ンとかにでてくるようなタイプのラスボスじゃん。
上記に紹介した奴ら以外も、竜王みたいなやつとか皇帝みたいなやつとかがゾロゾロいるし。
世界が何個あっても足りねえわ。
これだけ雁首揃えて、どんだけの世界を征服するつもりなんだ。
不幸中の幸いなのは、《《今のこいつら》》には世界を征服するつもりはない所か……。
というのも、こいつらが一同に介した場所に遭遇した俺は知っているのだが、こいつらは《《互いが互いに抑止力になっている》》。
要するに、誰か一人が世界をどうこうしようと動き出すと、それ以外の全員が敵に回ることになるので、誰も動けないのだ。
本当に、いやマジで本当に、こいつらが全く同じタイミングでこの世界にやってきてくれて助かった。
でなければ、一人(と数えて良いのか不明なやつも多々いるが)の手によりこの世界は終わっていたことだろう。
……にしても、お互いに動けない状況で何をするか相談して導き出した答えが“学園生活を楽しもう”というアッパラパーな結論だったのは意味不明すぎるが。
そして、偶然そこに居合わせてしまった俺が教師として選ばれてしまったのも、理不尽すぎるが。
だって俺、教員免許を持っていないどころか、専門知識を全く持っていないし、家庭教師のバイトすらしたことがないもの。
本当にただ居合わせただけだもの。
なんでそんなヤツが教師できているかって?
ラスボスどもが生徒として在籍しているのも同じ原理らしいが、なんらかの催眠だの洗脳だのをしているらしい。
哀れなのはこの学園だとしか言いようがない。
もっとも、しっかり学費は払っているらしいので、一クラス分丸儲けになったと思えばそこまで悪くないのかもしれないが。
いや、騙されるな俺。
十分悪い事してるだろ、常識改変って。
そんな奴らに惑わされないように、曲がりなりにも教師に任命された俺はしっかりしなければならないのだ。
「よしお前ら、一限目は数学だ! 教科書出せ!」
『(儂(妾・余・我・僕)達に囲まれてもあれだけ啖呵が切れる先生も十分おかしい人材だよなぁ……)』




