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蒼穹の涼風――人類の正義を撃ち抜け  作者: ジェミラン
第2章:逆襲の狼煙

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4/10

夜明け前の暗闇は、どこまでも冷たく重かった。焦げた大地に散らばる破片の中、夏山颯は倒れた仲間たちの姿を目にしながら、胸の内で荒波が渦巻いていた。数時間前に味わったあの絶望的な敗北。部隊は敵の猛攻に押され、指揮系統も崩壊寸前。誰もが心の支えを失い、絶望の淵に立たされていた。


「……俺の判断ミスだ。みんなを巻き込んでしまった。」


膝をつき、拳を握りしめる颯の瞳は、内側から燃え上がるような決意で揺れていた。彼の視線は散らばった装備に、一人一人の顔に、そしてまだ勝機が見える僅かな戦況へと向けられる。


「こんなところで終われるか。……俺たちは、まだ負けていない。」


小さな声が、唇の間から漏れた。颯はゆっくりと立ち上がると、雨混じりの風を受けながら、倒れた部下たちのもとへ歩み寄った。


「みんな、聞いてくれ!」


静まり返った空間に、その叫びはまるで雷鳴のように響いた。倒れていた兵士たちが、奇跡的に意識を取り戻し、顔を上げる。


「お前たちが諦めたら、俺も諦める。…だが、俺は諦めない。お前たち一人ひとりの命は、ここで終わる価値なんかない。」


颯の言葉は届いた。重苦しい空気の中に、少しずつ希望の灯が灯った。


「敵は今、警戒を緩めている。あの混乱に乗じて、一斉に反撃するんだ。皆で力を合わせれば、逆転できるはずだ。」


崩れかけた士気が、少しずつ持ち直す。疲弊した体を引きずり、兵士たちは颯の周囲に集まった。


「俺たちは仲間だ。命をかけて、共に戦ってきた。絶望の中にも、立ち上がる力はある。もう一度、勝利を掴もう。」


颯の熱い眼差しが部隊の心を揺さぶり、遠い昔に失われたように思えた勇気が蘇った。


「今から攻撃の準備をする。油断は禁物だ。だが、一人も欠けさせはしない。勝つために戦おう!」


彼の言葉に、兵士たちは力強く頷いた。誰もが諦めを振り払って、自分の手元の武器を握りなおした。絶望の深淵から、かろうじて這い上がった集団は、再び戦う意思を固めたのだ。


颯は仲間たちの顔を見渡し、心の中で決意した。この瞬間から、彼らの物語は逆転への第一歩を踏み出すのだと――。


破滅の淵で見つけた光。それは、まだ終わらない戦いの始まりを告げていた。





──深い硝煙のかなた、夏山颯は静かに戦況を見据えていた。空気は緊張に凍りつき、地面は足跡と血に染まる。未知の敵の激しい一撃により、残存部隊は散り散りとなったが、その瞳に滅びの色はなかった。むしろ、その奥底に燃える意志が揺るぎなく輝いていた。


「冷静に。焦るな。これが最初の一撃への答えだ」颯の声は低く、しかし断固として響いた。彼の指揮は大胆にして精緻、まるで沈黙の中で嵐を操るかのように部隊を再編成する。くぐもった砲声が遠くで鳴り続ける中、残された兵士たちも、彼の瞳に宿る揺るがぬ決意に引き込まれていった。


「敵の動きをよく観ろ。前線の偵察隊が報告した。彼らは攻撃が集中する地点に弱点を持っている。装甲が薄く、火力の配分に偏りがある。そこと一瞬の隙を狙う――電撃戦だ」颯は地図上の一点を指さしながら、短く言い放つ。戦場の空気が張りつめ、時が止まったかのようだった。


「この機を逃せば、再びこちらが追い詰められる。絶対に成功させるぞ」その言葉が合図となるや否や、絞り出された咆哮のように兵士たちの声が重なった。鋭い銃声が飛び交い、地響きが断続的に響き渡る。


夏山颯は先頭に立ち、計算し尽くされた鋭敏な動きで敵陣に迫った。微かな地鳴りのように迫る敵の気配に目を凝らしつつ、冷静に一瞬、一瞬を刻む。彼の脳裏を駆け巡る情報は、敵の配置、火力の分散、そして疲弊した隊形。すべてが反撃に必要な鍵だった。


突如、敵の装甲弱点への攻撃が始まった。複数の小隊が巧妙に分散し、狙いを定めた装甲部を一斉に砲撃。爆煙の中、敵の防衛線にぽっかりと亀裂が生まれる。その隙を見逃さず、夏山颯は即座に鞭のように指揮を振るい、突入部隊を動かす。


火薬の匂いと絶え間ない銃声。生き残った者の身に刻まれる轟音が、襲いかかる敵の剣となる。混乱の渦中、颯の姿はまるで戦場に凛と立つ光柱のように際立った。彼の冷静な判断と迅速な指示は、失われつつあった均衡を瞬く間に塗り替えていく。


「前進! 押し込め!」命令が飛ぶたびに兵士たちは前線を押し返し、敵陣の勢いは衰えた。敵の一瞬の隙をついた電撃戦は成功を掴み、その結果、夏山颯率いる部隊は前線の主導権を一部奪還した。


しかし、その勝利は決して完全なものではなかった。血に染まった戦場にはなお敵の足音が残り、侵食する影のように新たな脅威が迫っていた。陽炎のように揺れる尻尾を断ち切る第一歩は踏み出したものの、戦いの火種は消えず、むしろ次なる更なる激闘の序章を告げていた。


膝をつき、硝煙の渦から身体を起こした夏山颯の瞳は、鋭く光る。そこには敗北を認めない意志と、未来を見据える覚悟が宿っていた。


「ここからだ。これが、必ず取り戻すための布石になる……」彼は静かに呟き、不吉な風が吹き抜ける荒野を見据えた。血と硝煙が混じる戦場の深淵に横たわるその叫びは、第3章の幕開けを告げる合図であった──。




────戦いの火蓋は切られ、夏山颯の反撃は、終わりなき戦線のただ中で新たな道筋を示し始めたのだった。

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