陽気な午後、あるにぎやかな都会の喫茶店、真っ白なテラス席のポートレート
誰かを馬鹿にしたことがあるアナタ
ぜひ読んでみてください
その誰かの気持ちが、ちょっとだけ分かってしまうかも、知れません
だー、かー、らーぁ、一人っきりなんですよ、最終的に! 人間って奴は。
街なんか歩いてるとね、友達ぃー、なんて言って、連れ立ってる若い女の子とかいるでしょ? ああいうの見てると、無性に腹が立ってくるんだよね。
あいつらバカだなぁ、頭悪いなぁって。君も思うでしょ?
彼女らみたいなのは、言葉どおりに友情があるから連れ立って歩くのか。
いやいやいやとんでもない。
何かしらの利害関係が一致しているからああやってまとまっているわけなんですよ、なーんて僕なんかは思うわけです。何せ受験地獄って奴を体感してますから。
僕は地元じゃそこそこ有名な、厳しい私立高校の出身ですが、在学時は、人間のエゴやアラなんて、毎日のように見てきましたよ。
もうみーんな、騙しあいのおとしめあい。ああおぞましいねー。
もっとも、その環境でたった一人耐えてきたおかげもあってか、名門国立のキャンパスライフをエンジョイ出来たし、今みたいな? わりといい職にも? 就けたんですけどね!
合格発表の時なんかはもうね、ボロ泣きですよ。男泣きです。
こりゃもういいことは出尽くした、人生終わっていいんじゃないかと……、あ、すみませんねぇーっ。
今回の話の趣旨はそこじゃありませんでしたね。
思わず脱線してしまいましたよ。いやぁ面目ない。
人間誇らしいことがあるとつい自慢したくなるものですな、はっはは。
所で君はどこ大出身? 私立大? 聞いたこと無いなぁ。まあいいか。
分かってますって話を戻しましょうねぇ。全く最近の低学歴はせっかちで……いや、すまんすまん。なんでもないよ。ここだけの話!
そうそう、結局はエゴ、それなんです!
その事がわかるまで純真な僕は苦労しましたよー例えばですね……、
「ウザっ、ああいう風だから友達できなかったんでしょうが」
サオリはわざと半分しか瞼を開けないような、だるそうな眼をして、大声で笑っている実業家風の男をねめつけた。
じろりとした視線を投げかけることを、確か睥睨するっていうんだよね。
彼女の目はそんな感じ。取るに足らない存在をただ眺めているような、そんな目だ。私は絶対にあんな眼で見られたくはないと思う。
彼女は美しい女性だ。
ウェーブの髪を明るく染め、派手なメイクと服をまとって、いつでもキラキラ輝いている。
ピンク色のルージュを引いた半開きの唇に、細身のタバコをくわえてボーっとしている姿は、いつもここじゃないどこかについて考えているみたいだ。
私のいる世界には今までいなかった、どこまでもおしゃれで垢ぬけた人。
「あんたもそう思うっしょ」
彼女は、深緑のシャドウとつけまつげに彩られたシャープな瞳を、私に向けてきた。女性誌のモデルか、昔買ってもらったバービー人形みたいに綺麗な顔が、じっとわたしを見つめている。
まるで何かを試されているような。
やめて、そんな目を私に向けないで。
私はいたたまれなくなって膝に目を落とす。コーヒーは既に冷めてしまっていた。
その様子を見て取ったサオリが鼻を鳴らすようにした。嫌だ、呆れられている。
「何下向いてんのよ。そんなにあたしといるの嫌?」
「そ、そんなこと無いよっ」
慌ててサオリに弁解した。
私みたいないいとこなしの目立たない女が、美しい彼女の機嫌を損ねるような真似はしたくない。
特に、これから数年同じ職場で過ごさなくてはならない、今の間は……。
「あたしねー、ああいう奴がいっちばん大きらい。人様の批判ばっかりしてるけどさ、結局、他の人と比べたら自分の方が上だって言いたいだけじゃんね。自慢かよ。ほら見てよ、あの太鼓持ち」
彼女が、同じく冷たい視線を投げかけている先には、実業家にインタビューらしき事をしている青年がいた。決して気弱そうには見えないけれど、一生懸命ぺこぺことご機嫌とりに終始している。
「ハハっ、かーわいそ。バカにされてやんの」
彼には意思というものがないのだろうか、気持ち悪いくらいに、笑顔を絶やさない。
実業家風の男性の自慢話は、いよいよ佳境に入ってきたようで、あまり上品とはいえない胴間声が、ガラガラと笑っている。
青年は、何度も頭を叩かれていて、それでも笑っている。
ああ、なんてかわいそうなんだろう。
でも、アレくらい寛容な人だったら、もしかして私みたいな女でも受け入れてくれるんじゃないかしら……。
「あんたもあーゆーとこありそうな感じすっからさぁ、自己主張しなきゃだめよー」
サオリはそう呟くようにしながら、タバコを始末した。
その声が、すぐに私を現実に引き戻す。
私は赤くなりながら、「わかった……」と消え入るような声で言うしかできなかった。
彼女はキチンと携帯用の灰皿を使っている。
彼女は一つ一つの持ち物が洗練されていて、うらやましい。
お給料は同じだけもらっているはずなんだけどな。やっぱり無駄遣いが多いのかな。
普段から美意識の高い人なのだ、彼女は。
本当に、本当に私とは大違い……。
クソッ……!ついてねぇよ。
俺はいつまでこんなオッサンの話を聞いてなくちゃいけないんだ。
俺がFラン大学の出身って分かった瞬間からこいつは、前にも増して図に乗り出した。
(学歴ばっかり気にしてんじゃねェぞこのカスが!)
俺は、口をついて出そうになる罵声を、必死で噛み殺していた。
こうやって頬に笑顔を張り付けていれば、めったなことは口にしなくて済む。だが、そのかわり、表情筋が今にも引き攣りそうだ。
そりゃ俺は決して頭がよかったわけじゃないが、少なくともこいつよりは幸せな人生を送っている自信はある。バスケ部では努力の甲斐あってかいつもレギュラーだったし、女にもよくモテていた。
ま、大学出るまでの話だけどな。この辺バスケチームないし。
ベタな話だが、高校在学中に何人の女と寝られるか、連れと競い合ったことだってある。
もっともその勝負は、女の気持ちを酸いも甘いも噛み分けたこの俺の圧勝だったわけだが。
こいつは多分、この年になっても、自力で落とした女などほとんどいないだろう。
ムカつくことに金周りはよさそうだから、童貞ということはあるまい。何よりも金を必要としている女だって、中にはいる。
だが、こいつの持っている雰囲気は、とても異性を前にして堂堂とふるまえるものではないことぐらい俺にだってわかる。
今、立場の弱い俺を屈服させているように、いつでも金をちらつかせているわけだ。
大方、金と権力を使えば、これまで無視されまくってきた他人を支配できることに気づき、快感を覚えているのだろう。
本気でバカじゃねーかよ。
そんな思いも口に出せず、ただ笑ってメモを取っている俺に気をよくしたのか、相手は俺の頭を叩きだした。
当人はスキンシップでもしているつもりなのだろう。
メモの筆先がずれ、さっきまで書いていた文章に、ぐしゃぐしゃとした線が上書きされる。
べしっ、べしっ、べしっ……。
こいつは、さっきから人の頭をなんだと思っているのか。畜生。マジやってらんねーよ。
こんな仕事はもう放り出して、さっさと家に帰りたい。帰って一発オナニーして寝てやる。
そういや先週借りたAVまだ見てねーな。そろそろ返さないと。
……本当はAVなんかじゃなくて本物の女が抱きてェよ。
社会人になってから忙しすぎて、全然女と遊べねぇから。
向かいの席の女なんかいいな、気が強そうで。モデルみたいな足してやがる。
ああいうのを組み伏せて、アンアン言わせてやりてェ。乳首に噛みついてよがらせてやる。
それで、最後には「アタシには俺しかいない!」なんて言わせてやるんだ。
そこを捨ててやる。……想像しただけでたまんねぇな!
せっかく、人が気持ちよく妄想しているところに、視界を遮る物体があった。
なんのことはない、モデル女の連れの不細工だ。
ああいう女を見ていると吐き気がする。
見るからに、自分の見た目に気を使っていないタイプだ。
学生時代のクラスにも、ああいう女は何人かいた。触れる気も起らなかったが。
ああいうのをオタクっていうんだろう。
あの不細工女もどうせ同じだろう。ぼさぼさで染髪もしていない頭に、にきびだらけの頬はメイクすらされていない。
くすんで貧相なトレーナーとジーパンに押し込められた肉体は、だらしなく緩んでいる。
なんであんなきれいな子がこんなブスと一緒に過ごしているのか。
「おい!聞いているのか?」
奴のガラガラ声で我に返った。
「あ、ああぁぁ、はいはい。聞いておりますともー。いやぁ、本当に素晴らしい学生時代を送ってこられたようで、すごいですねー!僕なんか尊敬してばかりですよぉー!」
まるで美女と野獣だな、と、俺は心の中で呟いた。
(むしろ刺身とツマか……)
「あ、あの、じゃあ私、もうほんとに用事あるし、帰るねっ!」
ミツ子は、その豊満(笑)な肉体からは想像もつかないくらい、素早く立ち上がった。さっきからアタシにくぎ付けだった太鼓持ち君が、視線を遮られて憮然とした表情を作る。
くぅぅっ、たまんない!
例えミツ子相手だとしても、恋愛対象外のダサ男くんからだとしても。
どこかの男性が、自分と誰かを比較して、最終的に自分を選んだ瞬間っていうのは、どうしてこんなにも気持ちいいのだろう。
「えー、もうちょっと居なよ。そんなこと言って、もしかしてデートだった?」
もちろん、そんなことはおくびにも出さずに、私はやんわりとミツ子を引きとめる。
けだるい眼差しと、嘘をとがめるような空気を作るのも忘れない。
「え、いや、違うんだけどっ……」
ミツ子はまたしても蚊の泣くような声で、だが困り果てたような顔で固まった。
あーあ。ぶりっ子してもあんまり似合ってないんだけどなぁ。やめた方がいいよそれ。
「何だ違うのか、やっぱりねーっ」
客観的に自分を見られないから分からないのね。
意地悪なようだけど、アタシは、ミツ子がこれだけ急ぐ理由を知っている。
彼女は重度の腐女子という奴だ。
現実の恋愛を放棄して、キラキラしたホモの絵ばっかり追いかけてるバカな子たちのお仲間。
職場では必死になって隠しているみたいだったけど、アタシは、彼女のケータイの待ち受けが、そこそこ人気のある少年漫画のヒーローだってことを知ってる。
今日はそのマンガの劇場版が公開されるらしい。それもミツ子が、やけに気にしていた昨日の新聞の広告で知った。
てか職場でまで妄想すんなよ恥ずかしい。
大手出版社から出ているマンガだから、公開日に行けば、ファンのために何かしら特典が付いてくるに違いない。
マンガに恋する哀れなミツ子は、どうしてもその特典が欲しくてたまらないはずなのだ。
もうすぐ始まっちゃうアニメが、どうしても見たいんです。
素直にそう言っちゃえば許してあげなくもないのにねー。
ネタとして、職場で発表させてもらうかもだけど。
そう、それにアタシは見た。
質素なトートバッグの中に、何冊かそういう本が入っていたのも、残業の次の朝、机の下の屑かごにそのキャラクターの落書きが放り込まれていたことも。
やけに切れ長の目をしたそのキャラクターは、もう一人、よく知らない少年キャラクターと密着し、濃厚なキスを交わしていた。
確かにイラストは上手かったが、所詮、マイノリティな趣味だって事は変わらない。
そのイラストが今、屑かごから救い出されて、アタシの手の内にあると知ったら、ミツ子はどんな顔をするだろう。
「あ、あの、ホントに今日はありがとう……」
それはそうと、ミツ子も彼女なりに、知恵を使って生きているみたい。
蚊の鳴くような上ずった声だけど、下手に出てあたしの機嫌を伺い、さっさと帰ろうとしているのが、よくわかるもの。
でも、駄目ぇー。
アタシはいま、無性にあなたをいじめてみたい気持ちになっているの。
だって、さっきはあなたも太鼓持ち君の事を情けないって思ってたんでしょ?
なのに、わざわざ自分から同じような行動をとるのは、どうなんだろ。ねぇ?
「は、早くしないとぉ……」
普段は、おっとりを通り越してスローペース過ぎるミツ子の声だけど、(人によってはイライラを募らせているはず)今はさすがに焦っているのが手に取るように分かる。
人の感情を思うがままに操るのは、正直、楽しくて仕方がない。
「じゃあ、ミツ子ってさ、今彼氏いないんだよね。例えばさ、あの太鼓持ち君なんてどうかなぁ。ああいうタイプって、必ず疲れて帰るから、ミツ子みたいな包容力あるタイプ、好きだと思うんだけどなー」
アタシは思ってもみないことを発言するのが得意な方だ。
バーカ、どうせ上手くなんか行かないよって思いながら、平気で相手を励ますことが出来てしまう。
それでも純真(笑)なミツ子は、頬を赤らめて一生懸命否定するのだ。
ハハ、いじらしいいじらしい。
……アタシは絶対こんな風には生きない。
折角女として生まれてきたのに、美しさを武器にせず、わがままで人を操らない人生なんて、絶対に楽しくない。
今のアタシには幸い、素敵なパトロンがいてくれている。
まあ相手は上司で不倫なんだけど。
彼氏も他にちゃんといるんだけど(笑)
少しのリスクで、自らのお給料以上の生活も、楽々手に入れることが出来るのだ。
そうね、お金があるんだったら愛がなくても……そう、太鼓持ち君を怒鳴り散らしてるあいつでも、別にかまわないかもね。
何としても、この楽しさを手放してなるものか。
残念だけどミツ子、あんたがいまさらこっちの生き方をしようったって無駄よ。
それでも、あなたはアタシと徹底的に比較されて敗北感を味わうべきなの。
オタクの世界にこもって戦線離脱した気になっているなんて、甘すぎる。
さ、今日は絶対に帰してなんかあげない。
これを機にオタクなんかやめた方がいいよ。イメージ悪いし(笑)
アタシは猫のように目を細めて、口角を上げて笑顔を作った。
「ね、もうちょっとだけ話そうよ」
(てか、はよ帰れっつの)
店番のおねーちゃんは、誰も見ていないのをいいことに、思い切りぶーたれた顔をしていた。
道路に面した店のテラス席には、今四人の客しかいない。
男二人のグループと、女二人のグループだが、おかしなことに、どちらも仲良しには見えないのだ。
しかも、それぞれ、少しずつうっ屈がたまっているらしく、どことなく険悪な雰囲気だ。
会話の全く聞こえない店の中からですら分かるくらいだから、当然外からの客も寄り付かない。
店番の私の気にもなってみろって。
折角お団子ヘア決めてきたのに、誰もほめてくんないし。
バイトのおねーちゃんは、深くため息をついた。
「あーあ。誰かこんな状況、ぶち壊してくんないかなぁー」
その時、実業家風のオッサンがいきなり激昂し、地面にグラスを叩きつけた。
パリ――――ン!!という、小気味の良い音が、店内にも響いて来た。
「ちょ、お、お、お客さんッ!!」
おねーちゃんは慌ててテラス席に走っていく。
数刻前。大陸半島の北半分の国では、核爆弾を積んだミサイルが打ち上げられていた。
エゴばかりで自分たちの言い分を聞かない、なまいきな隣国を押しつぶしてやれという機運が、急激に膨れ上がった結果であった。
一度、東の島国の上を通過して太平洋に落ちてしまったこともあるミサイルである。
その島国の偉い人が気付いた時には、すでに手の打ちようもなく、ミサイルは目的地に到達する寸前であった。
目標は、白いテラス席が自慢の喫茶店がある、あの町。
「き、貴様はッッ!! これ以上僕を馬鹿にするとどうなるかッ!」
「うっせ―! この童貞糞オヤジ!!」
「お、お、おじさん、やめてあげてくださ……」
「不細工は黙ってろやァ―――――!! んだょォこのドブス!! 触んな!!!」
「!!(サオリのうそつき…)」
「ぶくくっ…(不細工だってww言われちゃったねwwwww)」
「どどどうせ貴様もあの馬鹿女共と同じだ! 底辺だ!! ビッチだ!!!」
「へ? だ、誰がバカ女よっ――――!! あぁんッ!? 舐めてんのかてめェ!! こっちは今からすぐに金ちゃんの映画見なきゃいけないのよッ! 古ちゃんと結ばれるか見届ける義務がくぁwせdrftgyふじこ……」
「(覚ww醒wwwしwwwwwたwwwww)」
「ちょっとお客さん達!! いい加減にしてくださいよッ! ぃやだっお団子引っ張らないで」
「部外者は引っ込んでろよっ!」
「店員にだけ高圧的な男ってどうかと思う。正直ドン引きなんだけどぉww」
ミサイルは、既にこの町の上空、肉眼で確認できるところまで飛来してきている。
彼らの視界が白く染まるまで、もう30秒の猶予もない。
私が、一人暮らしを始めてから二年間、2chからは、本当にたくさんのものを頂いてきました
寂しい時の笑える話とか、真面目な話とか、好きなアニメに湧き出るアンチ達とか
2chは、所詮便所の落書きとさげすまれている場所ではありますが、本当にたくさんの人間が、それぞれ自分なりの考えを持ちよって始めて成り立つ場です
沢山の意見がある、だからこそ面白いと思いませんか?
さて、2chでも、現実世界でもよく見る主義主張達を、ステレオタイプ化したキャラクターたちが実在したとします
そんな彼らを現実の町に放り込んでみたら、一体どうなるんでしょうね?
自分はこうしました
っていうのはただの建前で、最後の数行が書きたいがために書き上げました よろしくお願いします
なお、この作品を完成させた際に、宣伝効果を狙い、複数の、不特定多数の方が閲覧する可能性のあるサイトに、リンクURLを張りました
後に、別の掲示板の方で、これはマルチポストと呼ばれるマナー違反行為であるという説明を受け、納得いたしました
もし、同じ内容を何度も読まれた方がいらっしゃったら、不快な思いをさせてしまったかと思います
本当にごめんなさい




