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エピローグ2

「忘れ物でもしたの?」


「その程度じゃそなたらを呼びつけぬ。おい、生きておるかガキンチョ共め。少しは反省をしたのかえ?」


「ぐごごぉ……」


「暑……暑い…………」


「せめて、せめて水だけでも……」


「ごめんなさいごめんなさいよくわからないけれどごめんなさい」


 牢屋に改装された鉄格子の先には、亡者のごとく暑さに苦しむみんながいた。


「ラドっ、レナちゃんも、無事だったんだね!!」


 ミーシャの叫び声でカイザーが飛び起きた。朦朧としていたジュディスとジュディアも喚声を上げる。


「お願い、ラドからも言ってくれないかい!?」


「わたしたちだって頑張ったんだから」


「夢は夢のまま幼女は諦める」


「ロリババァがヘソ曲げてんだよ。出すように説得してくれや」


 助けを乞う声はフェイリアにも筒抜けになっている。その願いを叶えようとはせず険しい表情を崩さない。そもそもどうして幽閉されてるんだろう。


「世界征服罪。世界征服を企てた罰じゃ。国によっては重罪、死罪にもなる」


「何だよその罪! イーノの口車に乗ったフリをしただけだろうが」


「実行すらできなかったのに酷いわ!」


「愚か者め。クーデターよろしく、予備罪、準備罪とて同じこと。あわやエスカレアが火の海に包まれるところじゃぞ。その前に運良くイーノを倒せたからよかったものの」


 もしも話が進んでいたら、真っ先にエスカレア特別区が制圧されていた。拠点となれば教育機関としての信用は失墜、全世界が敵国に回って争いが起きる。

 真面目な話を遮らないよう注意しながら、手にしたヤカンの水をみんなに配った。


「はぁー助かるぜ。今日は暑ぃな」


「ぷはっ。でも反省を促すためとはいえ、これじゃ拷問だよねぇ」


「夢破れて牢破れず、せめて膜」


「メイちゃん先生の読みっしょ。サイコーよね」


 説教じみた正論を話半分で聞いていた態度がフェイリアの逆鱗に触れてしまった。顔は紅潮して、怒りに震えている。


「気が変わった。ちっとも反省しておらぬ!」


 フェイリアだって本気で裁こうとしているわけじゃないだろう。

 未遂に終わった世界征服の原因はフェイリアを救出するためだったとも言える。夜通し探索したおかげで助け出せたんだし、今回の不祥事を学園側にバラす存在もいないんだから痛み分けじゃないだろうか。

 そうでなければなぜ、ボクとレナも投獄しない?

 教室で寝ている時だって準備室に入る前だって、隙はいくらでもあった。


「ここにはメシもトイレもないんだぞ!?」


「せめて男女をわけてよ。生理的に無理」


「そういえば姉さんそろそろ」


「ジュディスが倒れた!? 早く、早く治療を!」


 世界征服を成し遂げても首謀者はイーノになるわけで、フェイリア自身が創り出したゴーレムに他ならない。


「相打ち、引き分け、ケンカ両成敗、どっちもどっち…………いい言葉はないかな」


 ボクなりの説得案を思い浮かべていると、レナが裾を引っ張ってきた。


「フェイちゃんはきっと、寂しかったんだと思う」


 地底で生き埋めになって半世紀。

 永い時間を孤独に過ごして、やりたいことも行きたいところも自由じゃなかった。魔法の副作用で若返り、見た目は子供でも中身は大人。だから大人なんだと決めつけていた。



 フェイリアは、遊びたいんだ。



 失った長い年月の隙間を埋めて、縁が繋がったみんなと楽しい時間を過ごしたいんだ。

 だから再び、ジェムストーンに閉じ込めるイーノの提案を否定して欲しかったんだ。


「あたしも同じ考えだよ。カイさんはどう思う?」


「予測や判断という意味合いでしたら、そうかもしれません、と返答します」


 カイはゴーレムだから感情を持たない。他人の心のうちを垣間見て想像なんてできないんだけど…………少しだけ口元が緩んだように見えた。


「ふーっ、ふーっ…………」


 毛を逆立てて威嚇する猫みたいになっているフェイリアに近づいたレナが、真正面から抱きしめた。


「フェイちゃんよしよし。これからはみんなでたくさん遊ぼうね」


「レナっ、だからフェイちゃんと……なん、そ……う、ママぁあああああーっ!!」


 大声を上げて泣いた。

 子供の見た目にふさわしく、わんわん泣いた。

 ボクたちはただ見守るばかり……………………だけどママって。うーん。

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