迷宮探索6
「あの……さぁ…………」
「なんだよジュディア。どうせ逆ハーレム王国の野望とか、イケメン王子とか言うんだろ」
「その通りよ! 千載一遇のチャンスだったっつーの!!」
「幼女に囲まれて生きていく人生」
「エレモアが無事という前提だったら、確かにちょっと面白そうだったよねぇ」
「お前ら全員とち狂ってんな。世界征服なんて戯言を真に受けたのかよ」
「あんたもでしょ!!」
敵を欺くにはまず味方からなんて話もあるし、イーノを油断させる作戦だったとしても。いつかどこかで反旗を翻す機会を伺っていたとしても。
フェイリアの犠牲の上で成り立つのは、心が痛む。
「どうであれ黒幕はくたばったんだ。さっさと帰ろ……あぁ!?」
無数の穴から水が染み出して空洞を満たそうとしている。軽い地響きも感じられて、水脈からは鉄砲水が流れ込んできた。
「高いところに避難しろ、帰り道がなくなっちまった。どうにかしろよロリババァ!」
「さぁて。少なくともワシは助かるぞ。ラドが来てくれたおかげでな」
「テレポートでひとっ飛びってことだね」
「つまりわたしたちも助かるってことじゃない。だったら安心だわ」
イーノを倒した時点で水没するんだったら、倒してはいけなかったのかも。
全員でうまく地上に誘導してからにすべきだった。
「じゃあさっさと帰ろうぜ…………ってことにはなんねぇんだよ」
「だってラドくんが」
みんなはテレポート魔法をかけてもらって脱出できる。
フェイリアはボクにかけた魔法を反射して脱出できる。
ボクだけが取り残されてしまう。
「それだけが困ったことなんじゃ。うーむ、どうすればよいかのー」
「ねぇ、フェイリアさーん…………怒ってる?」
すぐに身動きがとれなくなるわけじゃないけど、ここはいずれ水で満たされるだろう。別の出口を見つけるか、もしくは。
「岩を掘って地上まで……天井を破壊…………そうか、レナ!」
致し方なしという表情でフェイリアが頷く。許可が出たと判断してレナのメテオ魔法に頼ってみよう。
「考えがあるの。いつもとは逆で、地底から空に向かって打ち上げたら」
「そんなことできるの?」
「できると思う。やってみたい。ちょうどいいかも、ふふ」
「ん…………うん?」
最低限、まずは閉鎖された空間と外を繋げたい。崩落の危険性を考慮して少し離れたポイントに絞り、レナが目を閉じる。
「しっかしまぁ、レナの魔法はトンデモだな」
「話には聞いていたけれど、僕はまだ見たことがないからさ」
「隕石って上から下に落ちるものでしょ。変なの」
「しっ、姉さん。レナちゃんが集中してるううううわああああああっ!!」
轟音を響かせて天井に大穴が開いた。粉砕された岩石が時間差でボチャボチャと水底に落ちていく。
「あっという間で何も見えなかったぜ」
「上に家があったら大災害だねぇ」
「この位置は人がおらぬ森のはずじゃから安心せい。さて…………」
フェイリアが手招きをしてボクを呼び寄せる。そして小声で囁いた。
「ラドよ。少しだけ、ワシの座興に付き合え」
「うん?」
天井が開いただけでは脱出できない。外からロープを垂らしてもらうか、水路に流されないよう耐えながら水が満たされるのを待つか。
「可能性だけは残った。崖を登りきれば命は助かるぞ?」
「こんな絶壁登りきれるワケねぇだろうが!!」
「どうしよう。もう一発やる?」
「その表現は止めなさいレナ。じゃなくて、やり過ぎたら空洞自体が崩落するっての!」
みんなはボクのために心配して抗議してくれている。
ボクだけが最大のピンチのはずなのに、どうにかなるという根拠のない気持ちを抱いていた。明日になったらいつも通り、元気に遊んでごはんを食べているんだろうと。
昔、誰かに言われたことがある。
「子供だからそう思うだけだ」
それでもボクは、そう思う。
「もういいじゃろう。ラド以外は学園に帰るぞ。安心せぇ、学園長室の隣であればロストのようにはならぬ」
「安心って、ラドを見捨てるつもり!?」
「ラドひとりを犠牲にできねぇだろうが!」
「そなたらが世界征服を企てておった時、ワシひとりが犠牲になることについて反対した者はおるのかえ?」
「悪かったわよ……でも最後まで反対してたラドが犠牲になるのは間違ってるわ」
「幼女ハーレムのためならやむなし」
「あたしはラドくんと残るから」
「うむー…………。ふむ、子供ふたり程度なら大丈夫じゃろう」
何が大丈夫なのか疑問に感じながら、耳打ちされた座興の意味を考えていた。予想は誰かにロープを持たせてのテレポート戻りだと思っている。
「ラドとレナにはどうにかして生き抜いてもらおうか。じゃあの」




