インターミッション2
日曜日の夕方でも学園内って結構賑わっている。
施設やグラウンドは常に開放されているので、ギルドやサークル活動はもちろん、遊んだりおしゃべりする生徒たちが自由に過ごしている。
もちろん、勉強も。
「おや。君、それは迷宮に残した装備品じゃないか!?」
衣類や武具を積んだ荷車を引いて敷地内を横切れば、嫌でも人目についてしまう。即座に周りを囲まれてしまった。
「うん、はぁ、はぁ。クリス先生に押し付けられて、わざわざ迷宮から運んで来たんだよ」
「俺の服がないぞ」
「愛剣は回収したかったんだが」
「これで全部なのか?」
たった一度で何百人の荷物なんて運べるわけもなく、ここにあるのはごく一部でしかないことを説明した。おそらく二、三往復は必要だろう。
ボクの行動はボランティア。偶然近くにいたからというだけで命令をしてきて、偉そうにふんぞり返っているクリス先生が悪の張本人なんだと身の潔白を主張する。
すると上手く同情を誘えたのか、手伝いを名乗り出る生徒たちが出てきた。
「私たちにも協力させて。少しでもクリス先輩に恩返しができるなら」
この人たちは馬術サークルの部員で、以前から付き合いがあるかのような口ぶりだった。きっと弱みでも握られているんだろう。
「握っているのは手綱だけですよー」
寒いセンスが似通っていることに恐怖を覚えながらも、荷馬車や乗合馬車を用意してくれたおかげであっという間にすべての荷物を回収できた。
「すごく助かったわ。お礼を言わせて頂戴。みんなありがとう、おかげさまで陽が沈む前に片付いたわ」
「そんな。クリス先輩にはお世話になりましたから!」
「私たちにとっての恩人ですから、お力になれれば本望ですよぉ」
「またいつでもサークルに顔を出してください。歓迎しますよ」
これほど親切にしてくれる理由を尋ねてみると、馬術サークルの部員でもないくせに頻繁に顔を出しては馬を乗り回して遊んでいたそうだ。
ギルドほど大きくないサークルという組織に生徒会長が出入りすれば箔がつくということで重宝されたらしいけど、それって単純に都合よく使われていたんだと思う。
「在学中から恩を売っておいたからね。正解だったでしょ」
クリス先生は時折、どこからか馬を持ち出していた理由がこれでわかった。それでも部員たちが口々に感謝の言葉を出しているのはやっぱり、生徒会長という権力による圧力なのか。それとも脅されているのか。
「まさか。クリス先輩……先生って実質ウィザードギルドと掛け持ちみたいな状態だったし、面倒見がよくて助かってたんですよ。今だってずっと気にかけてくれてるし」
「あははは、照れるじゃない。だから別に弱みとか握ってるわけじゃないのよ。握っていたのは手綱だけ、わかったチビッコ?」
それはさっき聞いたんだ。馬術サークルの伝統芸か何か?
「ところで先輩……先生、結局ゲームはどうなったんでしょう。全滅なんですか」
「そうよー。報奨品が大量に余っちゃったみたいだから、後ほど参加賞として配布するつもりみたい」
「私も参加してたから、スイーツ食べ放題チケットだったらいいな。最後の方まで粘っていたのに、ものすごく足の速い女の子がいて。誰かわからないままロストしてました」
「僕もそうだったんです。見覚えのない子で、黒い服装で……エクリル女学院の制服に思えたんだけれど。そんな子、最初からいたのかなーって」




