第二章 暴風 5話目
「遂に運命の最終ラウンド!! 最後に立っているのは果たしてどっちだァッ!?」
「……今の一撃は効きました」
「ハッ! だったらそのまま倒れてなよ! 楽に止めを刺して終わりにしてあげるから!」
大剣を支えに立ち上がるヴェイルに対して、負けを認めるよう促すシャルトリューだったが、ヴェイルの辞書に降伏の二文字は無かった。
「ここで負けを認めるくらいなら、団長の名前を貶された時に嚙みついたりしませんよ……!」
「まっ、そりゃそうだ」
再び刺突の構えを取り出すヴェイル。対するシャルトリューもまた、先ほどのように頭蓋を叩き割るために大斧を振りかぶる。
あくまで真っ向からねじ伏せる――互いの意思は、そこに統一されている。
そして会場に湧く熱気を更に高めるかの如く、張り上げられるMCの声により、遂に最後の戦いの火ぶたが切って落とされる。
「ファイナルラウンド! ――ファイッッッ!!」
「フッ!!」
第一ラウンド同様に、シャルトリューは真っ直ぐにとびかかる。しかしヴェイルはそれを避けることもせず、更に引き付けようと大剣をぐぐっと後ろへと引く。
「っ!? あれでは避けられな――」
「黙って見ていなさい」
ユーゴーの言葉を遮って、シロは戦いにおける一瞬を見極めようとジッとモニターを見つめる。
そして遂に、その時が来る――
「――ブルファイト・スプレットエッジ!!」
「なにっ!?」
ギリギリまで引き付けることで、回避ができない――それはうらを返せばシャルトリューも同じ条件だった。
ならば、後は手数の勝負となる。
「ごはっ!?」
「いっ!? 今何が起きた!?」
「そんな、まさかっ!?」
元々が戦闘職ではないクロウの目には当然ながら、隣で座っていた護衛の修行僧ですら、その全ての見極めることはできなかった。
「なっ、何が起こったんだぁっ!?」
上空に映し出されるシャルトリュ―の体力が、ガガッ! ガッ! と複数回に細かく分けられ、削られていく。
その回数、八回。つまりヴェイルは一瞬にして八つの刺突をシャルトリューに喰らわせていたというのである。
「ばか、な……」
「言ったはずです。私の異名は“穿つ烈風”。決して貴方に捉えられるものではありません」
決着を確信し、その場に背を向ける。そうしてヴェイルの背中に浴びせられたのは、観客からの熱狂の声と、MCによる決着の言葉だった。
書き溜め分が今回でなくなってしまったので、また書き溜めに入りたいと思います(´・ω・`)。次回更新再開は3月1日を予定しています。(`・ω・´)