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第二章 暴風 2話目

 とあるギルドの団長を務めていた戦士職の男は、豪快な戦い方と痛快な性格をしていたことから、ギルド内外から“吹き荒ぶ暴風”と異名がつけられていた。

 一対多数の戦闘、および悪路において彼の異名を持つ者はまさに最強といえるものだった。旋風を巻き起こす大斧を振り回し、何人来ようが持ち前の筋力(STR)で押し通していく――そんな彼の噂を聞きつけて、とあるギルドのまとめ役が、彼との接触を図る。


「今のギルドを抜け、こちらに移籍しないか」――既にそのギルドの名はベヨシュタットでも有名で、普通に考えればそれまで所属しているギルドと天秤にかけたとしても、移籍した方が得をするのは目に見えていた。

 しかし男は彼にこう告げた。


“――それがしには、このギルドに世話になってきた恩がある。そして、創設したリーダーとして、最後まで面倒を見る義務も”


 男はそう言って一度は断った。しかしその義を重んじる心と、その類稀なる素質をどうしても欲した男はこう言った。


“――ならば、ボクと一対一で勝負しませんか? 場所、時間はそちらにお任せします”

“むぅ……そうは言ってもな――”

“貴方が負けたら、ボク達のギルドに入って貰います。ボクが負けたら……そうですね、貴方のギルドの一番下の雑用として、なんでもやらせていただきますから”


 そうして男は、こうまでして自分を認めてくれている相手の申し出を無下にはできないと、移籍をかけた戦いに受けて立つことにした。

 そうして前作における少数精鋭ギルド、“殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”の最後のメンバーとして入団したのが――




「――グスタフさんとあいつ、どっちが強いと思います?」

「そうですね……流石に試合を見ないと確定した格付けはできないでしょうが、それでもあの方は誰が相手だろうと、戦うと腹を決めたからには油断は決していたしませんよ」


 モニターに映るシャルトリューの姿と、頭に浮かぶ最強の戦士とを比べながら、シロとジョージはこの一戦を見守ることとなったのだった。



          ◆ ◆ ◆



「ラウンドワン! ――ファイッ!!」


 MCの掛け声により、ついに始まった第二回戦。最初に動き出したのは、シャルトリューの方だった。


「ッシャァ!! 先手必勝ォッ!!」

「なっ!?」


 クルクルと片手で斧を回しながら飛び上がり、溜めた力をそのままヴェイルのいる地面へと叩きつける。


「くっ! 言うだけあって素早いですね」

「貴方の方こそ、この一撃にビビらずによく見切ったわね!」


 そうしてシャルトリューが開けたクレーターの大きさに目を見張りつつ、ヴェイルは大口を叩くだけはあると、口に出さないものの称賛の言葉を胸の内に呟いた。

 しかしこれだけではまだ、“元団長”の領域には辿り着いていない。あの人ならば、今の一撃で闘技場の端々に至るまで地面を割っていたはずだ。


「今度は私の方から行きますよ!」

「いっ!?」


 相手が大斧を軽々と振り回すのであれば、こちらもまた大剣クレイモアを片手で振るい、連撃ラッシュを仕掛けるのみ。


「フンッ! ハァッ! エァッ!」

「ちょっ!? まっ、速ッ!?」


 まるで普通のロングソードでも振り回しているかのような速度で、クレイモアが振るわれる。その様子だけを見れば筋力(STR)の数値で言えば、シャルトリューに勝るとも劣らないことが一目で分かる。

 そして――


「ソードバンカーッ!!」

「ぐぁっ!?」


 剣の柄をそのまま突き出し、腹部への一撃で相手をよろけさせる。そして即座に持ち手を変えて、相手に向けて真っ直ぐと剣を突き出す。


「まずは第一ラウンド、取らせていただき――ッ!?」

「ぬああぁぁっ!! 打岩撃だがんげき!」


 打撃にひるむことなく斧腹をそのまま壁にするかのように真っ直ぐに突き出し、シャルトリューは接近するヴェイルを力づくで押し返す。思わぬ反撃にヴェイルもまた後ろへと退いたが、ダメージの差で言えばシャルトリューの方が体に響いている様子。


「中々やりますね……」

「そっちこそ、その速さで大剣を振り回すなんて反則じゃない」


 始まってまだ一分と立たない攻防。しかしそれらは会場のボルテージを上げるには十分なものだった。


「す、すごい……」


 そしてある程度身に染みて理解してから見る、初めてのスキルを使った戦い。ユーゴーは以前とは全く違う意味で、その言葉をつぶやいていた。

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