05
「お嬢様、バル爺が至急お会いしたいと玄関に」
直ぐにバル爺の元へ行く。
「どうかしたの?」
「隣国との境に人が倒れているんだ」
「こちら側にいるの?」
「はっきり区別はつかんがこちら側だと思う」
バル爺に付いてその人の元へ走る。
バル爺より私の方が足が遅くて走れないってどういう事?!
スタスタ先を行くバル爺を恨めしく思いながら付いて行くと確かに境界辺りに人が倒れている。
境界線と言っても境はわからない。塀もなければ川もない。何となくこのへんかな〜?と思っているだけだ。
肩を叩き声を掛けるが返事がない。
30歳くらいの男性で薄汚れているが大きな怪我はなさそうだった。
水筒の水を口元に寄せるが流れ落ちるばかりで口の中に入っていかない。
水を口に含み口移しで飲ませる。
今度は上手くいったようで喉が動くのが目に入った。
数度繰り返すと倒れた人の目が開いた。
「大丈夫ですか?どこか痛いところや苦しい所は?」
「み、みず・・・」
頭の下に膝を差し込み上半身を抱えあげ水筒を口に寄せた。
コクコクと飲み干した。
「ごめんなさい。これ以上は持っていないの」
「いや、ありがとう」
「痛みや苦しい所は?」
「ない、腹が減った」
バル爺と二人で支え、私の家まで頑張って歩いてもらった。
残り物のスープとパンを出すと、ガツガツ食べ「おかわりあるか?」と聞いてきた。
パンと目玉焼きを作って出した。
人心地ついたのか食事がゆっくりになり、その仕草はとても上品に見えた。
「こんな所にどうしたのですか?」
「いや、ちょっと迷っちゃって。2日前に山菜採りをしていたんだが、下ばかり見て捜していて方角が分からなくなってしまってまぁ、いいかと採取していたんだけど歩けど歩けど人家が無くて・・・」
「えっと・・・もしかして、ラーセスマイト国の方ですか?」
「という事は、もしかしてここはアデレート国?」
「そうです」
「境界線越えちゃったか・・・」
「そうなりますね」
「どこかに話を通さないといけないな。境界線の向こう側に戻っても帰り道が分からない」
「私が父に話を通しますね」
「父君に?」
「あっ、えっと・・・こんな所に住んでますが一応ここの領主の娘なんです」
「それは失礼いたしました」
「馬が一頭しかいなくて、馬車がないんです、なのでこちらでお待ちいただくしかないのですが、よろしいでしょうか?」
「お邪魔になりませんか?」
「困った時はお互い様ですもの。十分なお世話は出来ませんが、連絡がつくまでごゆっくりしてください」
「助かります。よろしくお願いします」
「ここに居るのはヴィーノと言います。食事などの世話をさせていただきます。ここには今居ませんが、サンスと言う住民に細々としたことをお願いするつもりです。ですが平民なので不手際が色々あると思いますが、大目に見てやってください」
「勿論です。迷惑をかけているのはこちらなので」
ヴィーノに湯の用意をしてもらい入浴を勧める。
バル爺にはここの住民の中では一番若いサンスを呼んでもらう。
「ヴィーノ、私がお父様に報告に行くわ。お世話をお願いしてもいいかしら」
「お嬢様が行かずとも・・・」
「でも他に行ける人はいないでしょう。ヴィーノが行くと男性と二人取り残されると私、困っちゃうし」
「そうでございますね」
仕方なさそうにヴィーノは了承した。
「ヴィーノも夜はスミスさんの家に泊まってね。サンスを呼んでもらっているから、身の回りはの世話は彼に任せてね」
「かしこまりました」
後は任せて、私は野営の準備をして馬に跨った。
「あっお名前聞くの忘れていたわ」